#168 仲なおり。
奏太のピアスを取り返した翌日。
4限目の授業が終了したが、奏太はまだ学校には来ていない。
「優弥、朝迎えに行かなかったのかー?」
お弁当を持った千秋が優弥の前の席に座った。
静香もお弁当を持ってその辺の机をくっつけて席に座り込む。
『行ったんだけど・・・。眠いから先に行けって』
今朝、一応奏太を迎えにいったが電話で「眠いから先に行け」と言われてしまった。
優弥はそのことを千秋と静香に話すが、突然千秋の頭に竜があごを乗せてきた。
「ねぇー、そーちゃんまだぁー?」
「・・・重い」
千秋がうんざりした顔で言い放つと、叶もケータイ片手にやってくる。
「もうすぐ行くってメールは来たんだけど・・・」
「・・・あれ?奏太君?」
突然、静香が廊下を指さした。
そこをみると、廊下を歩く奏太の姿が見えた。
ようやくやって来たようだ。
と、優弥達が言う暇もなく、竜は廊下側の窓を勢い良く開けて、そのまま廊下へ飛び出した。
『・・・わお』
「窓から出てった・・・」
「ドアから出てけよ・・・」
優弥達が唖然としている一方。
窓から飛び出した竜はちょうどその先に居た奏太にぶつかり、廊下に2人でそのまま倒れこんでいた。
「・・・竜、重い」
奏太が竜の頭を軽く叩くと、竜はきちんと正座をして、口を開く。
「・・・奏太、これ」
取り返したピアスを渡すと、奏太は少しの間受け取ったそれを見つめて、少し照れた様子でポケットにしまった。
「・・・別に、よかったのに」
「奏ちゃんなんか知らない、とか言ったけど、あんなの嘘だからね!!」
「・・・もともと、あんなの本気にしてねぇし」
「そっ・・・」
竜が嬉しそうな顔をした瞬間、奏太は嫌な予感がした。
それは、見事に的中。
「・・・奏ちゃん!!!!」
勢い良く、竜は奏太に抱きついた。
当然、周りからは冷たい目で見られている。
「・・・きもい」
奏太が言うと竜はしぶしぶと奏太から離れた。