#167 大事なモノ。
「「ピアス・・・?」」
1年生の教室。
こんな場所に3年生である優弥達が大勢で来ると目立ってしょうがない。
だが、ピアスの為だから仕方が無い。
小雪の友人2人を呼び出し、ピアスの事を尋ねると、友人2人はかなり困った様子だった。
『うん。竜の落としたピアス拾ったでしょ?返してくれない?』
優弥が手を出すと、友人2人は小雪を睨みつけた。
「ちょっと!小雪が言ったの?!」
「秘密って言ったじゃん!!」
「ごっ・・・ごめん」
友人2人に攻められた小雪はけんけんの後ろに隠れてしまった。
けんけんは小雪のあたまをそっと撫でている。
『・・・小雪ちゃんは何も悪くないよ。いいから、ピアス返して欲しいの』
優弥が再び手を出しても、返してくれる様子は無かった。
「そ、そんなの知らないもん!!」
「小雪が嘘ついてるんでしょ!」
小雪が嘘なんてつくわけがない。
絶対、この2人がピアスを持っているはずだ。
「・・・そのピアス、奏太の大事な物だから。・・・返してくれない?」
めずらしく竜が真面目そうな表情で、手を出した。
「・・・」
その表情に、友人2人もさすがに諦めたのか「ごめんなさい」と言ってピアスを渡してくれた。
「・・・ありがと」
指輪を受け取った竜は、指輪を握り締め、寂しそうな顔で笑った。