#165 そして事件は起こった。
そして事件は起こった。
昼休みのこと。お弁当を片付けた竜に奏太が近づいてきた。
「・・・竜、ピアス知らね?」
「ぴあす?あぁ!それならさっき奏ちゃん落としてたから渡そうと思って拾っ・・・」
ごそごそとポケットを探り始めた竜の動きは、急に止まった。
近くにいた優弥が「どうしたの?」と聞くと竜はゆっくりと優弥の方を向いた。
「ぽけっと・・・穴あいてた」
「・・・は?」
『・・・ピアス、落としたってこと?』
優弥がおそるおそる聞くと、竜はこくりと頷いた。
一気にその場が静まり返る。
「・・・意味わかんねぇし」
沈黙を破ったのは奏太だった。
奏太は鞄を持って教室を出て行こうとしていた。
「いっ・・・意味わかんねぇしって・・・落とした方が悪いんじゃん!!」
「落としたのはお前も一緒だろ」
奏太は教室を出て行き、スタスタと廊下を歩いていく。
「・・・っ!!奏ちゃんなんかもう知らないもんねぇーっ!!」
教室から顔を出して竜が叫んだ。
「・・・ガキかお前等は」
千秋が呆れながら言うと、竜は青ざめた顔で振り返った。
「・・・どうしよう?!もう知らないなんて言っちゃったよ!」
「後先考えねぇ奴だな」
『とりあえずピアス探そ。もう誰かが拾ってるかもしれないけど』
優弥はため息をついて呟いた。
『ん~・・・やっぱりないか』
竜がピアスを拾ったという場所に来てみたが、ピアスは無かった。
誰かが拾ってしまったのだろう。
「あーもう、どうすんだよ」
千秋はため息をついた。
静香と叶はまだ必死にきょろきょろとピアスを探している。
「あれ・・・?先輩?」
突然の声に優弥が振り向くと、けんけんと小雪ちゃんが立っていた。