#153 涙。
奏太が校門まで歩くと、そこには笑顔で待っている華蓮。
華蓮が奏太の姿を見つけると、すぐに抱きついてきた。
「来ちゃった♪おかえり!」
優弥はくだらないことで怒るし、華蓮は自分が彼女だと勘違いしたまま。
きっと、言葉一つで簡単に解決すること。
でも正直、めんどくさい。
なんであんな、くだらないことで怒る?
別に他の奴とキスしようがしまいが、結局好きなのは―・・・
「あ・・・ごめんなさい。彼女でもないのに抱きついちゃって・・・」
華蓮は、以前の奏太の言葉を思い出したかのように奏太から離れた。
「めんどくさ。・・・・・・いいよ、どうでも」
奏太はため息をついて、華蓮の頭をそっと撫でる。
「帰ろ?」
そう呟いた華蓮が奏太の手を握る。
その手を、握り返した。
もしかしたらこのまま優弥と別れた方が、優弥も楽になるのかもしれない。
『・・・』
教室で女子達が騒ぐ中、優弥は相変わらずぼーっと校門を眺める。
2人が抱き合い、そして手を繋いだ。
あの2人は、また付き合い始めたのかもしれない。
教室にいた女子達は、みんな揃って走って校門へと向かっていく。
「・・・優弥、大丈夫か」
「そろそろ帰ろう?」
気が付けば、千秋と静香が心配そうに優弥の顔を覗き込んでいた。
『あ、うん。大丈夫!あ、私用事あるから先帰ってて!』
本当は、用事なんてない。なんとなく、帰る気がしなかった。
千秋と静香は不思議そうにしながらも、教室から出て行った。
誰も居なくなった教室。
優弥は奏太の机の所まで歩いた。
そして、そっと机を撫でる。
「・・・何してんの?」
誰もいなかったはずの教室には、いつの間にか悠希がいた。
不思議そうに優弥の元へ向かってきた。
『べ、別に!そろそろ帰ろうかなって!!』
「・・・さっきの校門。あんたも見たんでしょ?」
優弥は、何も答えなかった。
悠希はそっと優弥の頭を撫でる。
気が付くと、優弥の頬には涙が伝っていた。
「っ・・・」
悠希は、優弥を思い切り抱きしめる。
何も言わずに、頭を撫で続けてくれた。
『・・・っ・・・うっ・・・』
優弥は、子供の様に泣きじゃくった。