#152 期待。
『・・・』
一生懸命に教科書を読む先生の声など一つも頭に入っていない。
優弥はちらりと斜め前に座る悠希を見た。
(品浜さんが、私を―・・・?)
どうすればいいのかわからない。
優弥は頭を抱えて、髪の毛をくしゃくしゃと乱し始めた。
『・・・・・・』
その手を、突然ピタリと止める。
(でも、いっその事品浜さんと付き合っちゃったほうが・・・)
「ゆーうや!!」
突然耳元で千秋の声が聞こえた。
いつの間にか、授業は終わっていたようだ。
「次、体育だよ?行こう?」
千秋の隣で、静香も笑顔で立っている。
『体育・・・。私保健室でサボる。』
そう言って、優弥は教室を出て行った。
「・・・」
「・・・」
憂鬱そうな顔で教室から出て行く優弥を見ながら、千秋と静香は目を合わせた。
「静香、ほんとに上手くいくのか?」
千秋は急に小声になり、眉間にしわを寄せる。
「上手くいく・・・予定なんだけど」
放課後の教室で、優弥はボーっと窓の外を眺めていた。
隣では千秋と静香が楽しそうに喋っている。
"奏太は忘れて、品浜さんと付き合う"
もしかしたら、それもいいのかもしれない。でも。
心のどこかでは、信じていた。いつか奏太が「ごめん」とでも言って戻ってきてくれる、と。
(・・・あー、もう!!こんなんだから駄目なんんじゃん!!)
期待するのはもうやめよう。
もしかしたら奏太も優弥と別れてしまった方が楽なのかもしれない。
『迷惑ばかり・・・かけてたしね』
優弥が小さく呟いた直後、突然女子達の叫び声が教室に響いた。
「ちょっと!何あれ!!」
「嘘でしょー?!」
女子達が揃って窓の外を見る。
『・・・』
窓の外から見える校門には、奏太と華蓮の姿があった。