#149 ばか。
「奏太君っ!」
奏太が家に帰り、玄関に入ると突然華蓮が抱きついてきた。
「おかえり♪」
「・・・別にさ」
奏太が呟くと、華蓮は奏太から少し離れ、首を傾げる。
「・・・ん?何?」
「別にあんたがどう思おうが勝手だけど、俺はあんたが彼女だなんて思ってないから」
「・・・え?」
「早くこの家から出て行ってくれない?」
「あっ・・・ごめんなさい」
華蓮は目に涙を浮かべてリビングへ入って行った。
一人になった奏太は、ため息をついた。
「・・・めんどくせ」
『だから!もう知らないってば!』
優弥の部屋で、優弥は携帯に向かって叫んでいた。
千秋から電話が来たのだ。
電話の向こうの千秋は呆れた様子だった。
「奏太も悪気は無かったんだって!」
『もういいの!・・・放っといてよ』
優弥はベッドにダイブして、ため息をついた。
『・・・何してんだろ、私』
そう呟くが、すぐに頭を振った。
『ううん!悪いのは奏太だもん!!』
「・・・だから、奏太に悪気は・・・」
千秋の言葉を遮って、再びため息をついて呟く。
『私がけんけんとキスした時、奏太はすぐに許してくれたのに。・・・ばかだな、私って』
「そう思うなら、早く仲直りしろ」
『でも奏太がっ・・・』
優弥が叫ぶが、電話はいつの間にか切られていた。
『・・・』
すでに千秋の声が聞こえなくなった携帯を、優弥は握り締めた。
『・・・奏太のばか』




