#148 別れ?
「・・・ということなんだけどね」
説明を終えた静香は恐る恐る千秋を見上げる。
「・・・あのバカ・・・」
怒ったような、呆れたような表情だ。
そしてまた、優弥の大声と、奏太の相変わらずの冷静な声が聞こえる。
『キスされたんだよ?!ちょっとくらい抵抗しなよ!』
「抵抗したって「ごめん」で済まされるだけだろ。意味ねぇよ」
『というか華蓮ちゃんは奏太のことまだ好きなの?!』
「そうなんじゃない?」
『何かあったの?華蓮ちゃんと』
「・・・勘違いしてた」
奏太は面倒そうな表情になり、昨夜の出来事を話し始めた。
それは、昨夜のこと。
「ねぇ、奏太君・・・」
夕食を終えてリビングから出て行こうとした奏太に、華蓮は不意に話しかけた。
「優弥ちゃん、彼女なんて冗談だよね?」
「・・・は?」
「私という彼女がいながら・・・ただの冗談で言ったんだよね?」
「・・・お前何言って」
「私達ただ連絡しなかっただけじゃん!私奏太君と別れたなんて思ったことないから!」
「二股男、だってさ。めんどくせ」
そして現在。奏太はため息をついた。
『何その言い方。私と別れたいっていうの?』
「それはお前の勝手な想像だろ。想像力豊かだこと」
体育大会以来、指にしていた指輪を優弥は無理矢理外し、奏太の机に叩き付けた。
『もういい。別れればいいんでしょ?!』
優弥はそのまま教室を出て行った。
「2人共この季節にはよく喧嘩するね」
静香が心配そうに奏太に近寄る。
その後ろから呆れた様子の千秋もやってきた。
「お前等何回喧嘩すれば気済むんだよ」
「・・・」
奏太は、無言だ。
静香は心配そうに奏太をじっと見つめた。
「いいの?このままで」
「・・・」
奏太は無言のまま、指輪を握り締めた。




