#147 喧嘩?
恋人達のクリスマスまで、あと1ヶ月となった11月下旬。
寒い廊下を歩き、千秋はようやく教室にたどりつく。
おはよう、そう呟きながら教室に入るはずだった。
「おは・・・」
『意味わかんないっ!!!』
戸を開いた途端に急に聞こえた大声に、千秋の声は呆気なくかき消された。
大声の主は、優弥だった。
叫んでいる優弥の前にいるのは、奏太。
「・・・何があったんだ?」
千秋はオロオロしながら優弥と奏太を見ている静香の肩を叩いた。
静香は「おはよう」と呟いた後、困った顔で話始めた。
「えっとね・・・今朝・・・」
今朝。優弥は家を出て、すぐに奏太の家に向かった。
『奏太ー!早く行くよ!!電車行っちゃうよ!!』
戸をドンドンと叩くと、面倒そうな顔で出てきたのは奏太。それと、華蓮。
『あ、華蓮ちゃん!おはよう』
「おはよう」
優弥の挨拶に、華蓮も笑顔で返事をした。
『ほら、奏太!早く行くよ!』
優弥が奏太の手を引こうとした、その時だった。
「待って!!」
華蓮がそう叫んで、奏太を引き止めたのだ。
華蓮は一度、ちらりと優弥を見る。
『・・・?』
優弥は首を傾げるが、華蓮はすぐに奏太の方を向き、背伸びをした。
その光景に、優弥は目を疑った。
華蓮は、奏太にキスをしたのだ。
「行ってらっしゃい」
華蓮は笑顔で奏太の背中を押した。
「・・・」
奏太は、何の抵抗も無く、歩き出す。
優弥は急いでその背中を追いかけた。
『ちょ、ちょっと!奏太!!』