#144 2人きり?
華蓮が奏太の家にやって来てから数週間。
一緒に住んでいる、というのは気に入らない。
だが、奏太の家はすぐ隣。いつでも行けばいいわけだ。
なによりも、奏太を信じる。そう決めたのだ。
『そーうたっ♪学校行こうー!!』
風が少し冷たいが、空は真っ青で快晴だった。
優弥はベランダに出て、隣の家の窓をドンドン叩いた。
カーテンが開き、出てきたのは奏太。
「うるさい。今行く」
それだけ言ってすぐに窓を閉めてしまった。
数週間経っても別に奏太と華蓮は何もない。
優弥はすっかり安心しきって、家を出る。
『ほんじゃ、行ってきまーす♪奏太ー!早く!!』
奏太も家から出てきて、2人で歩き出す。
――華蓮が寂しそうな表情で見送っているとも知らずに。
昼休み。
相変わらず快晴の空の下、優弥と千秋と静香の3人は屋上でランチタイム中だった。
「ほいで、大丈夫なんか?華蓮と奏太は」
千秋がパンをかじりながらチラリと優弥をみる。
その隣で静香も心配そうに卵焼きを食べていた。
『うん!なんともないよ』
優弥は笑顔で答える。
その言葉を聞くと、静香は安心したように一気に笑顔になった。
千秋もにやりと笑った。
「へーぇ。じゃああんたらは相変わらずなラブラブなわけね」
優弥はにこにことしながら頷く。
静香も楽しそうに箸をくわえて、千秋の話に乗っかった。
「じゃあじゃあ、前にゆーちゃんが「体育大会以来奏太が冷たいー」みたいなこと言ってたけど、それも解決?」
優弥は、笑顔のままぴたりとかたまる。
その様子を見た千秋と静香の動きもぴたりと止まった。
『いや、前よりは元気を取り戻したんだけど・・・なかなか2人になれなくて、体育大会以来、結局キスもしてなくて・・・』
優弥のまわりに急に黒い空気が漂いだした(幻覚)
優弥は床にへばりついていじいじとしている。
『どぉーせラブラブとは程遠いですよぉーだ・・・』
「・・・2人になればいいんだな?」
千秋が急に難しい顔で呟いた。
『・・・え?』