#142 元カノ?
優弥は、中学の頃を思い返してみた。
芹沢華蓮。中学の頃に、奏太と付き合っていた同級生の女の子。
中1の夏頃から付き合い始めていたのだが、中2の春には両親の都合で、突然の転校。
それ以来、奏太とも全く連絡を取ることは無く、自然消滅で終わった。
『じゃあ、奏太と一緒にいたあの子・・・華蓮ちゃん?』
優弥は奏太を見上げる。
奏太は小さく頷き、話を始めた。
「あいつ、体育大会の日も来てた」
『そうなの?!』
「近々戻ってくるかもしれない。それだけ言っていなくなったけど」
奏太はじっとキャンプファイヤーを見つめ、話を続ける。
「そしたら今日、またいきなり現れて・・・」
『現れて?』
優弥は奏太を急かすようにそう言った。
奏太はキャンプファイヤーから目を逸らし、優弥の方を向く。
「高校は違うけど、戻ってこれることになったから、住む家が決まるまで泊めてって言われた」
『・・・え?奏太の家に?』
「一人暮らし始めたいんだとさ。断ろうと思えば断れるけど」
優弥は俯き、しばらく考え込む。
そして、勢い良く上を向き奏太を見つめた。
『別にいい!奏太を信じるもん!』
「・・・わかった」
『ほら、行こ?』
優弥はキャンプファイヤーの方を指さしながら、微笑んだ。
2人は無言で、どちらから、というわけでもなく自然と手を繋ぐ。
互いの指が、そっと絡み合った。
『でも、よかった。けんけんとのキスで元気なかったわけじゃなかったんだね』
「なんだそれ」
少し元気を取り戻した奏太が、呆れながら呟いた。