#141 後夜祭。
空はすでに少し薄暗い。文化祭も終わりを告げる。
すっかりと片付けられた教室にはもう誰もいなかった。
外で後夜祭の真っ最中なのだ。
後夜祭はキャンプファイヤーをやるらしいのだが大して楽しくない。
『・・・』
つまらなさそうに火を眺めていた優弥は、周りを見渡し、奏太を探す。
『ねえ、奏太は?』
優弥は隣でものすごく楽しそうにしている竜をチラリをみた。
「え?奏ちゃんなら楽しくないとか言ってどっか行っちゃったけど?」
優弥は再び周りを見渡してみる。
奏太は、遠くの木に寄りかかってコップを手に、ぼーっとしていた。
『奏太っ!こんなとこにいた!』
優弥は笑顔で、奏太の元へ駆け寄った。
奏太は、無言で一瞬優弥を見ただけだった。
「・・・」
『・・・』
何も話題が無い。優弥はじっと、奏太を見つめた。
「・・・何」
奏太は不思議そうに呟く。
しばらくそのまま奏太を見続ける。
『えいっ!!』
そして、いきなり奏太に抱きついた。
「・・・何、いきなり」
『だって話題がないんだもん』
奏太がコップの中のジュースを飲み、しばらく黙ったあと、優弥を引き離した。
「・・・さっきの女、優弥覚えてないの?」
『え?』
「芹沢華蓮」
『かれん・・・?』
聞き覚えのある、名前だった。
中学1年生の夏から中学2年生の春頃まで、奏太と付き合っていた女の子だった―・・・