#140 女のひと。
優弥は一人でお化け屋敷の前できょろきょろしていた。
奏太の姿が何処にも見えない。
手を離したのは一瞬だったのに、何処へ消えたのか。
『奏太ー?!何処ー??』
「・・・先輩?」
突然、うしろから声がした。
思わず振り向くと、そこにはけんけんと小雪が2人仲良く手を繋いで立っていた。
『けんけん!小雪ちゃん!!奏太見なかった?』
優弥がまたきょろきょろと周りを見渡すと、けんけんは優弥たちのクラスを指さした。
「奏太先輩なら誰かとあそこの喫茶店へ入って行きましたよ?」
「一緒にいた女の人、優弥先輩じゃなかったんですね」
小雪もけんけんに続いて呟く。
『誰かと?女の人?何それ。・・・ありがと!』
優弥は早速自分のクラスを覗き込む。
午前中よりは客は少ないが、結構な人数はいた。
教室中を見渡して、奏太の姿を探すと奏太は客席に座っていた。
けんけんと小雪ちゃんの言葉を思い出し、奏太の向かいの席を見てみる。
そこに座っていたのは、私服の綺麗な女の人。
『だ・・・れよ!!あの人!!』
昨年度の冬、悠希の時は逃げてばかりいたので、優弥は思い切って教室に飛び込んだ。
『ちょっと奏太!突然消えたと思ったら何してんの!!』
優弥が叫ぶと、奏太は無言で立ち上がり、優弥の手を引っ張る。
「・・・なんでもない」
『え?!なんでもないことないでしょ?!誰、あれ!!』
「・・・知らない人」
『そんなわけ無いじゃん!誰なの?!』
「・・・あとで話す」
これ以上言い返して奏太との仲が悪くなるのも嫌なので、優弥はそれ以上何も言わなかった。
『・・・わかった。あ、私ね、体育館行きたい!』
「ふーん」