#133 キス?
騎馬戦が行われているグラウンドの隅の木陰に、優弥は座り込んでいた。
この場所は少しだけ涼しいのだ。
『リレーってこれの次だっけ・・・』
因みに格好は体操着に戻っている。
あんな服を着ていたら午後の競技に出られない。
騎馬戦が終わったようだ。男子達が戻ってくる。
「せんぱいっ!」
ふと、けんけんの声がきこえた。
『・・・?』
案の定、けんけんが走りながら優弥の元へ向かって来ている。
けんけんは笑顔で手を振ってきた。
『けんけん?!次リレーだよ?!こんなとこにいていいの?!』
優弥は、選抜リレーに出る人たちが並んでいる行列を見るが、けんけんは寂しそうに優弥を見つめた。
「せんぱい・・・」
『何・・・?』
「今まで、ご迷惑おかけしました」
けんけんは、ぺこりと頭を下げる。
意味がわからなかった。
『はい?・・・あの・・・』
優弥がおどおどしていると、けんけんは急に笑った。
「先輩っ♪」
突然、けんけんは優弥にキスをしてきた。
優弥はぼーっとけんけんを見つめる。
何が起こったのか状況が整理出来ていない。
「それじゃっ、リレー頑張ってきますねっ!」
そう言い残してけんけんはそのまま走り去って行った。
『・・・・・・・・・・・・え?』
ようやく我に返った優弥は、楽しそうに去っていくけんけんと、だんだんと天気があやしくなっていく空を交互に見つめた。
リレーが始まった頃に暗い顔で団席に戻った優弥は、自分の椅子にそのまま座り込んだ。
「どしたー?優弥。暗い顔して」
千秋が隣の椅子に座って優弥の顔を覗き込む。
『思い出したくもない・・・』
一方その頃。
奏太とけんけんはスタート位置に立って自分達の走る出番を待っていた。
もうすぐで、バトンが来る。
「奏太先輩、俺優弥先輩の事諦めます」
けんけんは、急に呟いた。
「・・・知ってる」
「よくわかりましたね」
「あいつと・・・小雪と喋ってただろうが」
「盗み聞きですか」
「聞こえたんだよ」
奏太は、相変わらずの無表情。
そんな奏太に、けんけんはにやりと笑った。
「さっき、優弥先輩にキスしちゃいました♪」
刹那、バトンを貰ったけんけんは、走り出す。
「・・・」
数秒後、奏太も走り出した。




