#127 もうすぐ・・・?
まだ暑さの残る9月。
未だに夏休み気分の生徒もいる教室。
『あーもう!あつい!!』
始業式を終えた優弥はいきなりそう叫んだ。
「よし、じゃあ誰かアイス買ってこい!」
千秋がいきなり提案してじゃんけんしようとでも言うように手を出してきた。
周りにいた静香、竜、叶、奏太もそれに賛成した。
「さんせーい!はい、じゃーんけぇーん・・・」
竜の声でじゃんけんが始まろうとした瞬間、教室のドアが思いきり開く。
「せんぱい!!!!!!!!」
そこにいたのはけんけんだった。
けんけんは戸をあけたまま、奏太の元へ近寄ってきて人差し指を立てながらその手を奏太に向けた。
「今年こそは負けませんからね!!」
「・・・何が」
興味なさそうに奏太が呟いた。
「リレーです!!もうすぐ体育大会なんですよ!!」
「・・・そうだっけ」
「そうなんです!今年もリレーに出て、アンカーやってくださいね!!」
そう叫んだけんけんは奏太の返事も聞かずに教室を飛び出した。
「あ、そういえば誰かから聞いたけどさ」
けんけんが去った後、アイスのことはすっかり忘れた様子の千秋は話を始めた。
「けんけん陸上部入ったんだっけ?あの祭りの日にさ、学校でけんけんとマネージャーで走ってたらしいけど」
『マネージャーって、もしかして小雪ちゃん?』
優弥がちらりと千秋に目をやると千秋は頷いていた。
「へぇ、結構仲良くやってるんだね」
叶は嬉しそうだった。
けんけんと小雪がらぶらぶになってしまえば失恋した2人も幸せになれる。
そう考えると嬉しかったのだろう。
隣にいる静香も幸せそうだった。
「だから奏ちゃんはリレー頑張って「ゆーやは俺んだ!」っていってけんけんに諦めてもらわなきゃねー?」
竜が奏太の頬をつんつんとつついた。
「何でそうなるんだよ」
竜の手を払いながらも、奏太は少し考え込んでいる様子だった。