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Love Addiction  作者:
126/171

#126 忘れられない夏

まだ少し明るい空の下、奏太に連れられてやって来たのは昨日来た海だった。

人々は祭りへ行っていて、しかもやってきたのは隅の方だったのでそこには誰一人いない。

波の音が静かに響く中、奏太は何も言わずにその場に座り込んでしまった。

『・・・?奏太?』

奏太が何をしたいのか、優弥にはあまり理解が出来なかったがそっと奏太の隣に座り込んだ。

それからの数分間、奏太との会話はなかったが優弥には妙に心地良く感じられた。

黙っている奏太は別に怒っているわけではないとなんとなく感じることが出来たからだ。

『これは優しさだ』

「?」

思わず呟いた優弥を奏太は不思議そうに見た。

『いや、何でもな・・・あっ!!』

優弥がそう呟くのと同時に、西の空にあった太陽は水平線へと沈もうとしていた。

いつの間にか海は、オレンジ色に染まっている。

『ねぇ、奏太。もしかしてこれのため?』

「・・・別に」

優弥は立ち上がり、服に付いた砂を掃った。

『まぁ、"忘れられない夏"にはほど遠いかもしれないけど』

優弥はにやりと笑いながら、同じく立ち上がった奏太を見ると、奏太の頬が少し赤く染まった。

『あはは。照れてるー!』

散々笑ってやった優弥は、静かに微笑んだ。

何か言いた気な表情で、じっと奏太を見つめている。

「・・・」

奏太は少しためらいながら、優弥の頬に手をそえ、2人の唇をそっと重ねる。

静かに絡まった舌から熱が伝わる度に、優弥の鼓動はだんだん速くなっていく。

優弥が奏太の背中に手を回すと、奏太の腕が優弥を優しく包み込んだ。

ゆっくりと唇を離した奏太は、優弥の顔を見るなり、いきなり頬をつねった。

「・・・顔赤いよ?」

優弥の表情はさっきとは一変し、真っ赤になっていた。

『こ、これは夕日のせい!!』

優弥がそう叫ぶと、奏太は来た道を戻るように歩き始めていた。

『ちょっと待ってよ!!』

優弥はその背中を小走りで追いかけた。


祭りで盛り上がっている一方、優弥達の学校のグラウンドでは静かに走る足音だけが響いていた。

「っ・・・はぁ、はぁ」

走り終えて座りこんだ少年の下へ、一人の少女が近寄る。

「あの・・・無理はしないでくださいね?」

「わかってる。心配してくれてありがと」

少女はその少年の隣にしゃがんだ。

「最近頑張ってますよね、先輩」

「・・・今年は負けるわけにはいかないからね」

そう言って少年は微笑んだ。

「・・・?」

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