#122 変なこと。
『そ・・・奏太~?次、どうぞ・・・』
お風呂に入った後、優弥はベッドの上にいる奏太に恐る恐る話しかけた。
約17年間一緒にいるので2人きりになったことは数え切れないほどある。
だがこれまでとは話が違う。同じ部屋ならそうと最初から言っておいてほしい。
(竜のばかぁ・・・)
心の中でそう呟く。奏太は立ち上がって浴室へと入っていった。
『別に変なことはないだろうし!大丈夫だよ!うん!』
一人でそう呟きながら優弥はドライヤーを手に取った。
奏太がお風呂から上がると優弥はベッドの隅で小さくなって眠っていた。
「・・・」
それはそうと、優弥はさっきから緊張しまくっているのがバレバレだ。
だが奏太には竜が言う"変なこと"をするつもりは全くない。
奏太は優弥の髪をそっと、撫でた。
刹那、部屋をノックする音が聞こえた。
奏太がドアへ向かおうとすると何度も何度も、ノックする音が聞こえてくる。
これはおそらく扉の向こうにいるのは一人ではない音。
誰がいるかはだいたいの見当がつく。
呆れながら奏太がドアを開けるとそこにいたのは案の定、千秋と竜と叶と静香。
「うるせぇよお前等」
奏太が呆れてそう言うと千秋が元気そうに手を挙げた。
「よーっす!おじゃましまーす!!」
「だからうるせぇって言ってんだろ。優弥が寝て・・・・」
『ん・・・?ちあき・・・?』
優弥の声が聞こえる。やっぱり起きてしまった。
「おう!優弥!夏だしちょっとホラー映画をと思ってな!」
そういうと千秋はどこからかポータブルDVDプレイヤーを取り出してセットし始めた。
『何処で拾ってきたの、それ』
優弥は起き上がりながら楽しそうに準備する千秋を見つめた。
「竜が持ってきたんだよ♪」
竜を見ると笑顔でブイサインをしていた。