#118 雷。
「・・・?」
奏太が目が覚めるとそこは教室。隣にはぐっすり眠っている優弥が居た。
「・・・・何やってんだ、こいつ」
奏太は静かに教室を出て、自動販売機へと向かった。喉が渇いた。
階段を下りて自販機のある一階へ向かい、パックのジュースを買うと、奏太はふと窓の外を見た。
嫌な予感がしたその瞬間、空が急に光って、雷が鳴り出した。
奏太は別に平気なのだが、優弥は昔から雷が大の苦手だった。教室においてきてしまった。
奏太は優弥のいる教室へと足を急がせる。
そっと、教室の戸をあけると奏太が優弥を確認する暇もなく、すぐに優弥が抱きついてきた。
「優弥・・・?」
優弥の肩が小刻みに揺れている。泣いているのだろう。
奏太は優弥の背中にそっと、手をまわした。
『うぅっ・・・』
しかし、優弥はなかなか泣き止まない。
「おい、いい加減泣き止めよ。雷くらいでそんな・・・」
『・・・わかんない』
優弥からは意味不明な返事が返ってくる。わかんないはこっちの台詞だ。
「は?」
『私も何でこんなに泣いてるのかわかんない・・・』
「意味わかんねぇよ」
『今までは隣に奏太がいるのが当たり前だったのにっ・・・』
「・・・・」
奏太は優弥を引き離し、飲んでいたジュースを無理矢理優弥に銜えさせた。
『むぐっ・・・』
そして奏太は自分の鞄を手に取り、教室から出て、廊下を歩き出した。
『奏太?帰るの?ちょっと待って、私も・・・』
「・・・ばーか。寂しいのはお前だけじゃねぇよ」
『そうだよ!千秋も静香も竜もカナもみーんな寂しいよ!!きっと、いや絶対!』
「・・・そうじゃねぇよ」
奏太は呆れてため息をつきながら廊下に出て行った。