#115 進路。
結局あれから小雪ちゃんに奏太を奪われることは無かった。
勇気がないだけか、小雪ちゃんなりの優しさなのか、よくわからないがいつの間にか時は過ぎていった。
気付けば7月―・・・。
『暑い!!』
お昼休み。優弥、千秋、静香の3人はご飯も食べ終えて教室に戻ってきたところだった。
「もーすぐ夏休みだなー」
千秋自分の席に座りながら急に呟いた。
「今年も皆で海行こうねっ!」
静香が可愛らしく笑顔で言った。
優弥はふと、教室で女子たちがきゃあきゃあ言いながら集まっている方に目をやった。
あの女子達の中にいるのは顔は全く見えないが奏太たち3人だ。
さっきから3人で机をあわせてババヌキをしていたのでそこに女子が集まったのだろう。
『なんでババヌキなんか。小学校の頃よくやったよー。』
優弥は少し呆れながら女子達の大群に向かう。優弥たち3人が来ると女子達は道をあけてくれた。
叶が奏太の手にある二枚のトランプをどちらを取るかで悩んでいるところだった。
竜はすでに勝ったらしく、のん気にお菓子を広げて耳にイヤホンを差込みながらどちらが勝つかを見守っている。
呆れながら優弥が見ていると、奏太の机の上にあった資料が目に入った。
大学の資料。因みに優弥は短大へ行く予定だ。勉強は面倒なので現在の実力で十分入れる所を選んだ。
『奏太、大学行くの?』
「別に。先生に進められただけ」
奏太が答えた瞬間、叶が奏太の手にあったトランプを1枚引いた。
「やったぁー!あがりぃー♪」
どうやら勝ったのは叶らしい。両手を挙げて喜びだした。
竜がイヤホンを耳から外して奏太を指で指す。
「奏ちゃんの負けー!奏太のおごりで飲み物買って来てー♪俺コーヒー♪カナは?」
「えっと、お茶!」
カナがそう言うと奏太は面倒くさそうに立ち上がった。
『私オレンジがいいー!』
優弥が咄嗟に手を挙げた。
「お前は自分で買え」
奏太が教室から出ようとすると先生に呼ばれていたとやらで千秋もその後ろに付いていった。
優弥は再び大学の資料を見つめた。
『ふぅーん・・・大学行っちゃうんだ』