#111 知ってしまった。
「そんなっ・・・」
優弥たちが帰った後、小雪は廊下で一人、指輪を握り締めながら震えていた。
「如月先輩の彼氏って・・・藤波先輩だったの?!」
指輪を返そうと優弥のクラスの近くまで来てみると、優弥と奏太がいたので思わず話を全部聞いてしまったのだ。
思わず目からは涙がこぼれ落ちた。小雪の好きな人、それが奏太で優弥の言っていた彼氏も奏太。
小雪は指輪を更に強く握り締める。
「・・・こんな指輪っ・・・・・」
ゴミ箱に捨ててやろうと思った。窓から投げ捨ててやろうとも思った。
だが、そんなことは出来なかった。
今まで優弥は、あんなにも優しくしてくれたのだから。
「・・・どうすればいいのっ?」
「如月先輩・・・」
朝、優弥は久しぶりに奏太と一緒に学校へ行くと玄関で寂しそうな表情の小雪に話かけられた。
『あれ?小雪ちゃん。どうしたの?』
小雪から差し出されたのは、無くした指輪だった。
『うそー?!小雪ちゃんが拾ってくれたの?!ありがとう!!!』
「・・・はい」
小雪が寂しそうにして、ずっと俯いていた。
『・・・どうしたの?』
優弥がそう聞くと、靴を履き替えた奏太がやってきた。
「あれ・・・あんた」
奏太がそう言うと、小雪はビクッと体を震わせて顔を上げた。
少し寂しそうな、おびえているような目をしている。
「あ・・・そ、それ渡したかっただけです!!」
そう言い残して小雪は走り去った。
『何?奏太小雪ちゃんのこと知ってたの?』
「1週間前くらいにアイツが転んだから保健室連れてった」
『・・・・もしかして小雪ちゃんって、奏太のこと好きなの?』
奏太は教室へと歩き始めた。
「知らねぇよ。そんな事」
『そうだよ!!だからあんなに落ち込んでるんじゃん!!昨日の放課後にでも知ったんじゃないの?』
「へーぇ。そうなの」
『何他人事のように言ってんの!』
「放っとけよ。そんなこと」
『放っとけないでしょ?!』