#105 帰りの貸切電車。
修学旅行3日目は体験学習。
大して楽しいこともなく、あっという間に修学旅行の3日間が終わろうとしていた。
帰りの電車は皆疲れて眠っている。
貸切の電車の中、一番後ろに座っている優弥達からは起きている人が確認できないが騒いでいる人は誰一人としていなかった。
『皆寝ちゃったね』
優弥は小声で通路を挟んで左隣にいる千秋に話しかけた。
「・・・・・」
返事がない。千秋は竜と仲良く眠っていた。因みに静香と叶はとっくの昔に眠ってしまっている。
優弥は右隣に座っている奏太をみた。
顔を伏せている。優弥は奏太を揺さぶった。
『ちょっと、どうせ起きてるんでしょ。皆寝ちゃったよ。暇なんだけど』
案の定、おきていた奏太が不機嫌そうに体を起こした。
「は?知るかよ。・・・お前も寝りゃいいじゃん」
『ねぇ、やっぱりしりとりしようよ!』
「嫌」
その言葉に、優弥は頬を膨らませて、小声で奏太に言い放った。
『何よ何よ何よ。結局修学旅行中そんなにラブラブできなかったじゃん!あったとしても手繋いだくらいじゃん!つまんない!』
「あー、はいはい(棒読み)」
その言葉を最後に、優弥は何も言わなくなった。言い争いに飽きてきたのだろう。
沈黙の中、奏太はしばらく窓を見つめ続けた。
『・・・・・・』
ふと、奏太の肩に重みを感じた。
「・・・?」
見てみると、優弥がすやすや眠ってしまっている。ちゃっかり奏太の肩を枕代わりにして。
「・・・結局寝てるじゃん」
『ん・・・そうた・・・』
優弥が起きたのかと思ったが、ただの寝言だった。何の夢を見てるんだ?
「・・・」
奏太は一度、ため息をついて周りを見渡した。皆寝ている。
そして、再び優弥を見つめる。
こんなことしてもいいのか、と思いつつも奏太は優弥に少しずつ顔を近づけた。
「・・・何がラブラブだよ、ばーか」
そっと、唇を重ねた。
その後、『結局ラブラブしてない!』と優弥がしばらく頬を膨らませていた。
本当のことは、奏太にはとてもいえなかった。