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拝啓、許婚様。私は貴方のことが大嫌いでした  作者: 結城芙由奈@コミカライズ連載中


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第20話 愛しいシェリル <完>

「まぁ、お父様とお母様が戻られたのね?」


シェリルが嬉しそうに笑みを浮かべた。


「ええ。旦那さまと奥様はリビングルームにいらっしゃいます。シェリル様に大切なお話があるそうですから、ローレンス様はこれでお引取りを……」


「いや、僕も会わせて貰うよ。シェリルのことで大事な話があるからね」


どうしても僕を帰そうとするメイド長の言葉を遮った。


「え?」


露骨に嫌そうなメイド長を無視し、シェリルに声を掛ける。


「シェリル、僕も中に入れてくれるよね?御両親に大切なお話があるからさ」


「ええ、勿論です。一緒に参りましょう」


そして、僕とシェリルは屋敷の中に入っていった。

すれ違う時、メイド長が僕を恨めしそうな目で見ていることに気づかないふりをしながら……。





**



 リビングルームに僕とシェリルが一緒に現れると、伯爵と夫人が驚いた様子で椅子から立ち上がった。


「き、君は……ローレンス君じゃないかっ?!」


伯爵は余程驚いたのか、目を見開いてこちらを見ている。


「一体どうなさったの?今迄決められた日程でしか娘と会ったことが無かったではありませんか?」


夫人は何だか不機嫌そうだ。

う〜ん……僕はかなり2人からよく思われていないようだ。


「はい、確かに今迄の僕は確かにあまり良くな許婚だったかもしれません。ですがもう心を入れ替えました。僕はシェリルの事を大切にします。彼女の命が尽きる最期の時まで側にいると誓います」


誠心誠意を込めて2人に自分の気持ちを訴えた。


「ローレンス様……」


シェリルは涙目で僕を見つめる。


大丈夫だよ、シェリル。


心の中でシェリルに語りかけた。


しかし……。


「はぁ?一体君は何を言っているんだね?あれ程娘から逃げ腰だったのに?」


「ええ、まるでその台詞はプロポーズのように聞こえるわ」


伯爵と夫人は増々僕を怪しげな目で見る。


「ええ、そう取っていただいても構いません。何ならすぐにでも結婚したって構いません」


シェリルの命は残り僅かなんだ。それなら正式に結婚して彼女の最期を看取って上げるのも悪くはないだろう。


「何だってっ?!」

「本気で言ってるのっ?!」


伯爵と夫人は相当驚いている。夫人なんかは今にも卒倒しそうだ。


「ローレンス様……」


シェリルは真っ赤な顔で僕を見つめている。

よし、プロポーズするなら今だ!


「シェリル……僕と結婚して貰えるかな?一生(残り僅かだけど)大切にすると誓うよ」


「あ、ありがとう……ございます……。勿論お受けします」


恥ずかしそうに返事をするシェリル。


「一体これはどういうことなのだ……?」

「夢じゃないかしら?」


夫人と伯爵はすっかり呆けた顔で僕達を見ている。

すると、シェリルが2人に向き直った。


「ところでお父様、お母様。お医者様はどちらにいらっしゃるのですか?」


「ああ、医者なら今診察中だぞ?」

「本当に名医が見つかって良かったわ」


え?診察中?

シェリルはここにいるのに?


見ると、シェリルもポカンとした顔をしている。

2人の話に違和感を感じ僕は質問した。


「あ、あの……その医者は一体誰を診察しているのですか?」


「誰というのは少し間違えているな。何しろ今診察を受けているのはサファイアなのだから」


伯爵が答える。


え……?

サファイア……サファイア……?


「ええっ?!サファイアですかっ?!」


驚きの声を上げたのはシェリルだった。

そうだ!サファイアは……彼女の愛犬じゃないかっ!!


「ええ、そうよ。あまり長くは生きられないと他の獣医さんからサジを投げられていたけれども、もう少し寿命が伸びそうよ。大分元気になったから。ね?あなた」


夫人が嬉しそうに伯爵を見る。


「ああ、そうだ。サファイアはシェリルがまだ小さな子供の頃からずっと一緒だったからな……何とか少しでも延命させてやりたかったから必死で医者を探していたんだよ」


伯爵が説明する。


「そ、それでは……病気だと言うのは、私ではなく……サファイアだったのですか……?」


シェリルの声が震えていた。


「ああ、そうだ」

「勿論よ」


「そ、そんな……」


シェリルは震えながら僕を見た。

その姿を見た時、僕は気付いてしまった。


あぁ……きっとシェリルは僕が同情してプロポーズしたと思っているんだ。

確かに初めは同情の方が勝っていたけれども、今は違う。

シェリルとデートして彼女の色々な表情を見ることが出来たし、一緒にいて楽しかった。

それに何より、シェリルは冷たい許婚だった僕を一途に思っていてくれていた。

もう僕の気持ちは固まっているのだから。


だから、僕はシェリルに告げた。


「良かった……それなら末永く僕達は一緒にいられるね?」


「ローレンス様……」


そして僕はシェリルの手を取った……。




****


 その後、物凄い騒ぎになったのは言うまでもなかった。


両親はすぐに呼ばれて駆けつけてきた。

そして正式に僕とシェリルは結婚することが決定し……両家で様々な話し合いが行われた――。





 22時――



 「きれいな夜空だね」


僕とシェリルは庭のベンチに座り、星空を眺めていた。


「はい、素敵な夜空ですね……」


彼女の隣には愛犬のサファイアが座っている。

名医のおかげですっかり元気になれたようだ。


「……あの、本当に……宜しかったのですか?」


シェリルがためらいがちに声を掛けてきた。


「え?何が?」


「私との結婚です……本当は私に同情……んっ」


僕は彼女の唇にキスをし、唇を塞いだ。

すると、シェリルは真っ赤になりながらも僕の首に腕を回してくる。


キスをしながら僕は思った。

確かに今回の件は何処か腑に落ちない。ひょっとするとこれは僕やシェリルの知らない水面下で仕組まれた結果だったのかもしれない。


だけど、それでも構うものか。


何故なら僕は今、シェリルが愛しくてたまらないのだから。


愛してるよシェリル。


末永く一緒にいようね――。



<完>

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