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テーマなし詩集

ざんねんだけど ておくれだ

作者: 歌川 詩季

 ておくれです。

 ざんねんだけど ておくれだ

 型にはめてなおるなら そうしたいけど

 ざんねんだけど ておくれだ

 でっぱりは でっぱりすぎてるし

 ひっこみも ひっこみすぎてる


 ざんねんだけど ておくれだ

 連休ちゅうに ひたしておいて

 明けたら とりだしたいけど

 うまくぬけてくれないまま どうせ

 水切りして タオルのうえで乾かすはめになる


 ざんねんだけど ておくれなんだよ

 こんなあたしになる もっとまえだったなら

 きっと てのほどこしようが あったのだろうけど

 やさしいひとたちが

 つめたい めと ことばして

 ちがうよ そうじゃない

 なんで わかんないの

 声をかけてくれていたころに

 あれを ちゃんと やさしさだとおもえていたら

 こんな ざんねんなことには

 もしかしたら ならなかったのかもしれない

 ありがとうって おれいまで言えてたら

 かわいそうなものを みるような顔をするか

 気分を害して ひっぱたくか してくれたはず



 それでも まだ なんにんかのひとたちが

 あたしのなかの わるいものを

 きりとってもらってくるように

 やさしく たぶん ほんとうに やさしく なのだろう

 うきうきした週末を だいなしにするタイミングで

 声をかけてくれることがある


 ちゃんと おれいは言えないけれど

 ひょっとすると ありがとう

 だけど ざんねんだけど ておくれなんだってば

 あなたたちが きりとってもらってくるように

 やさしく すすめてくれる あのできものが

 あたしの一部か もしくは 大部分

 あっちを きりとってしまえば

 こっちに なにがのこるのかなんて

 紙のまんなかに 縦線をいっぽんひいて

 みぎと ひだりに 書きだしてみたけど

 ごめんなさい

 もう あたしにやさしく しないでください

 そんな 結論しか だせなかった



 とっとと きりとってしまって

 あたしが あたしじゃなくなれば

 ほんとは ておくれですらないのかもしれない


 あたしじゃない あたしに あとはまかせて

 あたしである あたしは きりとられて

 シロップのかわりに ホルマリンで()けられる

 組織サンプルとかで うすくスライスされたっけ

 プレパラートってのが

 はさんでるどっちがわのことだか

 あたしにはわかんないけど

 こんな うすぎりじゃなくて

 とっと ぶつぎりにして

 いらないぶんは なにかのえさにするか

 ビニール袋をしばって 火曜日にだしちゃってほしい



 あたしじゃない あたし

 あとはよろしく

 あたしじゃない あたし

 あとはまかせた

 これが ておくれじゃなかったのか

 ざんねんだけど やっぱりておくれだったのか

 そのこたえを あなたにまかせてしまうのは

 すっごく ずるくて ひきょうな

 やりかただって 気がした


 きりとられちゃったら らくになるのにな

 やさしいひとたちも よろこんでくれるのにな

 ざんねんだけど ておくれだ

 きりとってくださいって 予約をいれるのをやめて

 ピザを3枚 炭酸をひとケースと注文した

 食べきれないぶんは 冷凍しとけばいいや

 解凍して チーズがちょっとぐらい くさくなっても

 あたしとちがって

 ておくれじゃなかった 2日目のピザをかじって

 冷やしわすれてたぬるい炭酸を 何本かあけよう

 何回見ても 泣きたくなる あの映画をみよう



 あたしは こんな週末が好きだ

 これをつづけていたら やさしいひとたちも

 いつか わかってくれるのかもしれない

 ざんねんだけど ておくれなんだって

 もう てのほどこしようなんか ないんだって

 きれいさっぱり みすててくれるのかもしれない

 それがさいごで いちばんのやさしさだったから

 こんどこそ

 あたしは こころから ありがとうって言おう

 手の施しようがありません。

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― 新着の感想 ―
[良い点] この詩と「30秒後のあたしと 半日後のあたし」、「ひも感情論」、私は大好きです。 詩の主人公に、作者である先生を重ねるとどーかしちゃったかと心配になります (そういう訳ではないようなので、…
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