顔パンツ
もしかしたら、ちょっと未来のお話。
放課後、俺達はいつもの場所にたむろっていた。
「なあなあ聞いてよ。昨日、風呂上がりにマスク外してたら姉ちゃんに怒られたんだ。ひどくない?」
普段温厚な友達が憤っていた。
「何て怒られたの?」
「『マスクしないでブラブラすんなっ、汚い物見せんなっ!』って。もう喧嘩だよ。」
「家の中なら良いだろうに。」
「そしたら母さんが、『鏡見なさい。あんたら同じ顔よ。』って言ったんだ。」
俺達は笑った。
「そうそう。俺、このマスク四日間同じ。」
「まじで?」
「表裏、上下を入れ替えて四回。」
「きったねえ。」
少し距離を取られた。
「汚くないよ。くしゃみとか咳とか出てないし。」
「それはそうかもしれないけどさ。なんか嫌じゃん。」
「毎日替えるの面倒くさいし、汚れた時はちゃんと替えてる。」
「でもさ、臭くならない?」
「ハミガキもしてるし、顔洗ってるし。臭くないって。」
俺は力説する。
そこへ、もう一人の友達がやってきた。
「よお、変態紳士。」
「呼び方酷いな。」
「だって、落ちてたマスク持って帰ったじゃん。」
「まじで?」
「あれ、口紅付いてたんだぜ。」
「ババアのだったらどうすんだよ。」
「俺は年上はどこまでもオッケーだから。年上を嫌がるお前らはロリコンか?キャラクター柄のマスクに萌えるのか?」
「いやいや。違うし、萌えないけどさ。でも普通、落ちてるマスク拾うか?犯罪じゃね?」
「同じマスクを四日も使い回してる君が『普通』を語るなよ…。」
友達はため息をつく。
「それはそうと、良いもの手に入れたぜ!親父が持ってた昔の雑誌。」
彼は鞄からファッション誌を出してきた。
「さすが変態紳士。血は争えないな。」
「うっさい。」
「この写真見てよ。ほっぺた丸見えだ。」
「うわぁ、くちびるエっロ!」
「こっちは鼻の穴までがっつりだぜ。」
三人はカットモデルの写真に夢中だ。
「昔はさ、皆こんなに顔出して外歩いてたのか。」
「もう痴女だらけじゃん。夢のような世界だな。俺も昔に生まれたかった。」
「ただ、男も鼻とかヒゲとかモロダシだけどな。」
「「それは嫌だな。」」
思わずハモる。
「チラリズムも捨てがたい。ストロー咥える時にずらしたマスクから一瞬見える鼻筋とか。」
「さすが変態紳士。」
「その呼び方、いい加減に…」
強い風が吹いて、突然彼が止まった。
「どうした?」
「今、あっちの子のパンツ見えた。」
「なんだ、そんな事か。」
「ふーん。」
「もしかして、そんなもんで興奮したのか?」
「そんな子供じゃねぇよ。」
皆で笑った。