完全催眠耐性持ちの俺はただの兵士Bです
適当に書きなぐっただけの短編です
「良くぞ参られた!異世界の勇者殿!魔王討伐に向け旅をしているのにわざわざ我が国に訪れてくれた事を大変嬉しく思う」
俺が住んでる国、[バレンクス王国]の王宮、その謁見室に、王様の声が響いているのを、昨日飲み過ぎて二日酔いな俺が、兜で顔が隠れているのを良いことに顔をしかめて聞いている現在。
何故俺が勇者を迎え入れている謁見室にいるかというと、この王国の兵士をしているからである。
これといって取り柄のない俺だが、子供の時から騎士に憧れた俺は、誰に教わる事もなく自分で作った木剣を手にひたすら訓練をしていた。
まぁ、才能があまりなかったから、結局は騎士の学校に行く試験に落ちて、兵士になるための訓練校にしか行けなく、そのままずるずると兵士になりましたって話。
んで、今、この謁見室に居る勇者ってのが、どっかの遠い国が、魔王に対抗すべく異世界から召還した人らしい。
俺も詳しい事は判らんけども、まぁ大層なスキルを貰ったとかで、魔王討伐の旅をしながら色々な国で人助けをしてるらしい。
人伝に聞いた事があるけども勇者が立ち寄った国では大層人気があるそうな。
俺から見たらそんな強そうには見えないし、顔も少し残念な感じ。
強者ならなんかしらのオーラ?みたいなのが身体から出てるのに、全く出てない。
もしかしたら、本当の強者でオーラ?みたいなのを隠す事出来てるのかもしれないが、俺が知ってる王国最強の騎士団長やSランクの冒険者ですらオーラ?みたいなのを垂れ流しにしてるから、本当は強くないんだろうな。
「では、勇者殿に我が国の宝、娘のリーシャを紹介しようではないか」
俺が物思いにふけっている間に会話が色々進んでたみたいだな。
奥から姫様が現れると、勇者の少し残念な顔が醜く歪んだのが見えた。
「はじめまして勇者様。私、リシャエルと申します。こうして勇者様にお会い出来るのを心待ちにしておりましたわ」
鈴がなるような静かな美しい声を持つ我が王国の宝、リシャエル姫である。天に愛されたかの様に美しい容姿、天に愛されたかの様に頭脳明晰、天に愛されたかの様にスタイル抜群。正に天に愛されたリシャエル姫様。
リシャエル姫様に合法的に会うため、壮絶なる戦いの末に謁見室の警護担当になったのは記憶に新しい。
姫様は基本的に自室から出ず、女騎士に囲まれて過ごして居るために、なかなか御目にかかれないのだ。
「はじめまして。お姫さん。それでこれから色々と宜しくね」
先ほどとは打って変わって、傲慢な口調で勇者が話したと思ったら、勇者の目が怪しく光った。そのままぐるりと周囲を見渡す勇者。
「よし!これでオッケーかな?もしもーし!姫様聞こえるー?聞こえてたら返事して」
え?めっちゃ口調砕けてない?初対面でその口調ヤバくない?
「はい」
姫様返事しちゃうんだ。って様子が変じゃね?なんか目が虚ろだし。姫様以外の皆もなんかぼへーってしてるし。
「よしよーし。ちゃんとかかってるな。女神様最高なスキルくれたからめちゃ異世界満喫出来てるわぁ。女神様々だなぁ。」
もしかしてこの勇者催眠スキル持ち?旅しながら片っ端から催眠かけてる?それで評価高い?え?待って。ヤバくない?
って事は完全催眠耐性スキル持ちな俺だけこの場で無事って事?
「じゃあ、姫さんはこれから俺の肉便器ね。それ以外の人は俺が何をしても良い事したって事にしてね。
あ、後は、美人な女の子いたら全員俺の所に連れてきてね」
うわー。めっちゃゲスじゃんよー。この王国乗っ取られる現場に遭遇しちゃってるし。
絶対にこいつ魔王討伐とかする気無いでしょ。
姫様に憧れてる俺にしてみれば、憧れの姫様に不埒な事をしようとするこいつは許せんな。国に属してる身としてはこのまま捨て置けん
って事で俺のスキル完全催眠耐性をフル稼働させる。フル稼働させると疲れるけど、効果範囲を広げる事が出来るのだ。今まで使う機会がなかったけど、この無駄なスキルで国を助けれるなら、このスキルでよかったよ
「じゃあ、姫さんは一回全裸になってみようか、皆に見られながら初体験とか嬉しいでしょ?」
自分のスキルを信じきっている勇者が馬鹿みたいな事言ってるけど、もう皆正気に戻ってるんだよなぁ。
「誰か!この狼藉者を捕らえよ!」
当たり前だよね。王様怒っちゃってるよ。勇者はポカンとしたまま王国最強の騎士団長に捕らえられてるし、皆めっちゃ怒ってるし。もしかして催眠の時って記憶あったりするのかもね。
姫様は意味ありげにこっち見てるし、俺はなんもしてませんよーって感じにすましておいたからバレてないと思いたい。
結局、何で催眠解けたのかは誰にも知られないまま?異世界勇者騒動は終了しましたとさ。
後日、姫様が実は鑑定のスキル持ってたとか、勇者の被害にあった国に派遣されたり、俺のスキルが進化してなんか偉い事になったりしたのは割愛します。
おしまい
ありがとうございました