お肉の王子様
N「肉の国の王子が転生したら現代日本でダイエットさせられました。バージョンりどらじ」
N{第一話 お肉の王子様}
N「カズキはミートキングダムの第一王子にして歴代続く王家の中でも特に優秀なメタボリックである。
メタボリックとは体内に保有しているカロリーを魔力に変換して戦う勇者の事で、
カロリー保有量が多ければ多いほど、つまりは体重が多ければ多いほど優秀な勇者なのだ。
平均体重が50キロ前後のこの国において、カズキの体重は現在105キログラム。
驚異の100キロ越えを果たしているのだ。
この数値は歴代の王族の中でも、いや、歴代のミートキングダムのメタボリックの中でも例が無いほど高いのだ。
人呼んで「肉の化身」それがカズキだ。そして、」
女子「きゃ~!カズキ王子よぉ!今日も肥えていらっしゃるわ~!したたる汗が煌めいているわ~素敵ぃ~!!」
N「そして、この国において体重が多いと言う事は、女子に持てるのだ!」
カズキ「やあやあカワイ子ちゃん達!今日もカロリー日和だね♪ナイスカロリー♪」
女子「キャー!しゃべったわー!カロリー消費したわー!顎肉が揺れたわよ!ナイスカロリーだわぁー!!」
N「ご覧のとおりだ。
王子であり豊満な肉体を持つカズキはミートキングダムのメタボリックとして順風満帆なモテライフを満喫していく、、、はずだった。
そう、あの日あの時あの瞬間までは。」
カズキ「いやーモテたモテた。モテまくりで肉汁を啜る暇も有りませんなぁ!はっはっは!さーて今日も三時のオヤツ代わりに豚足でも齧りながら酒でものみますかね~。ん?ん??な、何か身体が、、、胸が苦しい…息がっ!息ができない!!心臓が…うぐっ」
N「こうしてカズキは突然の体調不良で意識を失ったのだった。
目が覚めると、そこには見たこともないような真っ白でただっぴろい空間が広がっていた。
そしてそのただっぴろい空間に一人ポツンと熊耳の女が、、、いや、人型の熊が居た。」
カズキ「なんだこいつ?いや待てこいつよく見ると背中に羽が生えているぞ?そして頭には円形の物体がふわふわ浮いている。まさかこいつ、、、変態か?」
熊神「我は変態では無いわ。失礼な。」
カズキ「うわぁ心の中読まれた!?気持ち悪い!!」
熊神「気持ち悪いのはオヌシの体型じゃ。」
カズキ「は?この豊満な肉体を気持ち悪い?はぁ・・・これだから変態は」
熊神「我は変態では無いと言っているであろう!我の名前はゴッドベアーザオーバーリラックスアンダーハニーイーツ。酒と遊戯と電波の神じゃ。」
カズキ「え?名前何て?ちょっと良く聞き取れなかったんだけど?」
熊神「ゴッドベアーザオーバーリラックスアンダーハニーイーツじゃ。略して熊神じゃ。肉の化身カズキよ、オヌシは死んだのじゃ」
カズキ「は?体に悪いことなんて一つもしてないのに何で?」
熊神「お主の死因は動脈硬化による心筋梗塞、つまりメタボが原因なのじゃ。」
カズキ「何?メタボリックは勇者に与えられし栄光の証だぞ!!」
熊神「それはカロリーを魔力に変えられるオヌシの居た世界でのみの特殊な価値観じゃ。通常の世界ではオヌシのようなメタボはただの健康被害者じゃの。」
カズキ「そんなバカな!?」
熊神「もちろん女にもモテん。」
カズキ「そんなバカな!?」
熊神「あ、一部の特殊な趣味のヤツにはモテるのう。」
カズキ「そんなバカな!?」
熊神「しかし優しい我はオヌシにもう一度チャンスを与えてやろう。異世界地球の日本という国に転生して今度こそメタボリックにならず、平均体重で過ごし、健康について考えを改めるのじゃ。」
カズキ「え?ちょっと何を言ってるの解らないんだが??」
熊神「さあ今こそ転生の時じゃ!オヌシの新たなる人生に野菜の多きことを!!」
N「熊上の両手…もとい両肉球が眩く光り始める。
その光りは有無を言わせずカズキの身体を包み込む。」
カズキ「ちょ!?ま!?さ、最後にもう一度名前教えてくれ!!」
熊神「ゴッドベアーザオーバーリラックスアンダーハニーイーツ、略して熊神じゃ。」
カズキ「いかん、状況も解らないし名前も覚えられない。」
N「光りはカズキの意思とは関係なくカズキの意識を剥ぎ取っていく。
不思議な事に抗うことができない。
いや、抗う意思さえも飲み込まれているのだ」
カズキ「うわぁあああぁあああぁああぁ〜」
N「良く解らないビブラートな悲鳴を響かせながら、カズキの意識は遥か彼方へと収束され、消え失せた。
こうして、肉の化身ことミートキングダム第一王子カズキは、見知らぬ異世界「地球」に強制的に転生させられたのだった。
続く→」