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ようじょ街に着く

こちらも再開です

 門が分厚かった。

 いや、町に着いて「門でけぇなぁ」って見上げてたんだが、ゴンゾたちにくっ付いて門から町に入ると門の入り口から出口まで、ちょっとしたトンネルくらいあった。


 門扉は両開きの物が二枚(ごっつい閂付き)と落し戸((鉄製の格子戸だそうだ)の三枚扉で、大型モンスターの脅威が街のすぐ傍まで来ているってのが良く分かる作り。

 脇に普通の家のドア程度の大きさの扉もあるが、そっちも鉄で補強されたゴツイ木製で、おそらくはさらに魔法とかで強化されてるっぽい。


 元々が森から溢れるモンスター対応のための砦に素材を求める商人や職人が集まり、それに食料を供給するための農家が、といった形で出来た街なため、城壁内に農地がある。


 城壁外に農地なんか作ろうものなら、あっという間に人ごとモンスターに食われ尽くす。


 この街に限らず、モンスターの勢力圏が広いこの世界では、農地と言えば城壁の中にあるもの。

 いくつかの街でモンスターに対する防衛圏を作った上で、その街々を繋いだ防衛ラインの内側ならなんとか城壁無しの農村というものも可能だが、地形に恵まれるか、かなり大きな国家でないと防衛ラインの構築そのものが不可能。ラインは繋がってて初めて意味あるんで、どっかで途切れてればそこからモンスターは入り込むし、防衛ラインが出来ても空を飛ぶモンスターが居るし、地中から唐突に出て来る連中も居る。

 

 この世界、幼女が生きてくには厳し過ぎね?

 野宿≒死亡だろ?

 非武装の旅というか移動も不可能。

 最低でも殺されない程度の武力は必須。

 一緒にこの世界に転生させられた連中の半分は、もう死んでるんじゃね?



 さて、この到着した街だが、辺境の街に関わらず城壁が三重構造で、一番外が農地、次いで市街地&職人街、一番内側が元・砦を改築した領主の館&商会という三層構造が大ざっぱな区分、一番外側の農地エリアに街の兵士の宿舎や演習場はあるし、市街地にも店はあったりと例外は色々あるんだそうだ。ぼくの手を引きながらミリアさんが楽しそうにそうした話を色々としてくれた。

 でもって土地柄、子供の存在自体が少ないこともあって、街の人からジロジロ見られた。


 そうして歩くことしばし、やって来た冒険者ギルド。

 異世界もの定番施設だな。

 入り口は西部劇とかにあるタイプの扉だが、ぼくの場合、普通に頭上を扉が通過する。

 かすりすらしない、この低身長。

 泣けてくるな。


 ゴンゾはここではかなり顔が売れているのだろう、数人と目礼(と、おそらく無言の飲みへの誘い)を交わして、カウンターに向かう。

 定番の新人への絡みの方だが、見た目幼女に絡むほどのバカはそうそういないし、そもそもが今のぼくはミリアさんにだっこされた状態だ。見かけによらず子供好きなオッサン冒険者が、ぼくの頭をなでようとしてゴンゾに撃退されている程度。

 ミリアはまだブレストプレート装備ではあるのが残念だが眼下に巨大なおっぱい、眼福である。



 あの森からこの町までの道中だが、髭のダークがカレーライスにハマって三食それを要求してくる様になったのと、エルフのリシティアさんが全種制覇に燃えて、街までの到着から逆算して一食につき複数のものを食べたがった(結局、ミリアや他のメンツと少しずつ交換して制覇した)こと以外はさほど問題は無かった。

 ゴンゾたちはモンスター相手でも危なげなかったし、ぼくのミサイルも炸裂しまくったからな。

 ぼくがミサイルで始末してしまうと、素材的にもったいないことのなるため「なるべく控えてね?」と言われてしまったが……。

 爆発させないと、モンスターの生命力が良く分かってないので仕留め切れない恐怖心からオーバーキル気味にならざるを得ないんだよね。実際、首が飛んでも動くし走る……まあ、もとの世界のニワトリだって、首無しでも走れたりしたしね。ゲーム的な数値とかでないリアルの経験値が足りない、今のぼくには。


 ゴンゾとリシティアが奥の方の部屋に案内され、ぼくを含む残りのメンツはギルド裏手の素材買取、解体現場へ。

 そこかしこに散らばる細かい肉片や、雑に積まれた未処理の皮のせいもあるんだろうが、臭い。

 

 森の様々な素材を小出しにしつつ、ダークがもったいぶって出したドラゴン(森の主)素材に、素材担当のギルド職員がひっくり返って驚いた。

 その叫び声に他のギルド職員どころか調子のいい冒険者まで顔を覗かせて、力づくで追い返されていた。

 いや、あんたギルド職員なのに普通に冒険者より強ぇんじゃね?


「ウチで買い取れるのは多くて3分の1、それも持ってきてくれた他の物一切買い取らないでの話だな。実際には4分の1か5分の1、半分はオークションで残りは領主や国に献上ってことになるだろ?」

 国や領主が持ってき過ぎじゃね?

 とか思ってたら、こういう見返りの代わりに、色々とギルドや冒険者が支援を受けているんだってさ。

 滅多にあるもんじゃないのにきっちりと支援して貰っちゃってるから、見返り出せる際は出さないと色々問題になるんだそうだ。特に今回は百年に一回でも出るか分からない代物だし……。

 適切な売る相手さえ確保できれば、今回回収したウロコだけで、この街の中心部に館を買って、一生遊んで暮らせる計算だが爪は最低でも2本は王都行き確定。このシビアな世界じゃ、素材はすべて実用へ。

 金持ち貴族がトロフィとして館になんてのはまず無い。

 王都に送られる爪も剣か槍の穂先になる。


 オークションは王都で開かれるものと領都で開かれるものがあるそうな。

 冒険者ギルドと商業ギルドによる共同開催。

 出品者は冒険者ギルド、または商業ギルドへの登録者に限られる。

 なもんだから盗品なんかは出品されないし、万が一、出品したものが盗品の場合、その出所について例え善意の第三者であろうと厳しく取り調べられることになる。

「良くわかんないや」って顔してたら、ミリアさんが説明してくれた。

 まあ、たぶん、そこまで厳しいと需要と供給の関係で「裏オークション」とかあるね、絶対。


 ダークは引き取って貰える分の価格交渉。

 ミリアさんは、ぼくにギルドのランクや、登録について説明してくれてる。

 うん、困ったことが分かった。

 冒険者ギルドの登録最低年齢12歳。

 どんだけ声高に主張しようが、ぼくがその年齢を超えているとは認めて貰えない。

 つまり、ぼくが冒険者ギルドに登録し、依頼をこなしてお金を稼ぎ、自立することは不可能。


 ミリアさんたちが善人であることは、ここまでの旅でも分かっているが、彼らにぼくが大きくなるまで面倒を見て貰うことは、例え彼らが善良であっても、その職業ゆえに不可能だ。

 ここまで連れて来てくれて、いまだに気をかけてくれるだけでも上等過ぎる。

 

 ぼくの未来候補としては①孤児院に入る②町に住む誰かの養子になる③社会の枠組みから外れて暮らす……どれも問題だらけだ。

 

 ①はある意味定番ではあるものの、この世界の場合、孤児院は神殿、つまり宗教勢力の縄張りであり、異世界転生者であり、規格外の存在であるぼくの場合、やらかして(馴染んだら絶対やらかす)祭り上げられたり、いい様に利用されたりする危険性がある。権威を持った集団という、個人単位での対抗が難しい相手というのもネック。神官の中にはステータスとか見れる人も居るそうだ、ますますヤバい。

 敬虔な神の使徒もいるが、同数かそれより多いくらい俗物も居るんだそうだ。

 まあ、組織が大きくなり、発生から時間が経過すれば腐敗は必然だからね、仕方ない。

 ミリアさんが多少はコネを持ってるそうだけど、彼女の出身はこことはかなり離れた場所なので、そこまで行かないと信頼出来る宗教関係者が居ない。


 ②は、ぼくの容姿からして引く手あまたになるだろうって話だけど、貰われた時点で将来がほぼ確定し、自由な人生は無くなる。例え愛情を持って育ててくれるところに貰われたとしても、貰われた家の仕事、立場でぼくに求めらる役割が決まり、それを果たすことが当然と見做される。

 最初から貴族とかに生まれたなら諦めもつくが、そうでないのにそうした世界に入るのはためらわれるし、商人や魔術師とかにしたって、生産チートだの魔法チート持ちじゃなきゃ夢も見られない。

 ぼくのミサイルも魔法もなんか変だし、この世界の魔法とかとは全然違うと思う。

 いい家に貰われたとしても、そこが属する社会内には色々な人間が居るだろうし、力関係で守って貰えない場合も考えられる。


 ③は①や②からの逃げ込み先でもあるが、冒険者登録出来る外見になるまで、一般的な社会から離れ(森の中とか山奥とか)、この持った力とアイテムボックス内の食糧で生き延びるというもの。

 頑張っても文明圏への到達の道筋が見えなかった転生当初ならともかく、こうして町に辿り着いた現在としては積極的に選ぶ気にはなれない。

 食はなんとかなっても、衣と住がねぇ……。

 隠遁するほど、この世界に飽きるほど接してないし、アウトドア志向を元々持っていた訳でも無い。

 それでも、都市や街の中で社会の枠組みから外れて生きるよりはマシだけどね。

 スラムとか、そこで生まれた訳でもなきゃねぇ……。

 そもそも、この街じゃ辺境、対モンスター最前線過ぎてスラムとか無さそうだし。


 若返りじゃなく、年齢可変なら楽だったのになぁ。

 せめて少女と呼べる外見であれば!

 とかく幼女は生き辛い。

 なまじ戦闘力と食料(多数)持ってるから、割り切りにくいってのもある。

 これが、心底無力な幼女であれば、誰かの情けにすがるしかない。

 酷い目に遭わずに生きていけるなら養子でも孤児院でも大ラッキーだったろう。

 戦える、食える、ちょっとした身の回りのことが出来る魔法もある。

 森の中で途方に暮れてた時に比べれば、現時点でも望外の状況なんだけど……。


 ぼくが黙り込んでしまったのを疲れて眠いのだと思ったのだろう、ミリアさんが抱き寄せて、背中を軽くポンポンと叩いてくれる。

 

 ホント、どうしよう……。


 ぼくがそのまま眠りに落ちるまで30秒もかからなかった。



ミサイルをデストロイドファランクス並みにブッパして無双する幼女の話のつもりで書き始めたのですが、なんか世知辛い

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― 新着の感想 ―
[一言] おっ、春猫さんの新作キター! と思ったら更新でしたね。 でも嬉しい事に代わりなし!
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