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ようじょ飯を食う

冒険者遭遇


 なんか隣室の住人が真夜中に付けてるテレビの音ぐらいな感じで聞こえる叫び声で目が覚めた。

 ピッチャーと空の丼を出し、水を注いで口をゆすぐ。


 歯ブラシほしいなぁ……。

 ゆすいだ水を吐き出した後、残りの水を少し飲む。


 もう一回水を注ぎ、今度は顔を洗う。

 拭くものないんで服の裾で顔を拭う。


 幻聴じゃないね、しっかりと目を覚ました今の状態でも声は聞こえる。

 少なくとも外にはなんか生き物がいるっぽい。

 人と断定しないのはこの世界で人以外に喋れる生き物が居ないかなんて知らないからだ。

 もしかするとア◯ルーが居るかもしれない。


 わんわんはモン◯ンに出るには小さ過ぎたが、それ以外はデカい生き物しか見てない。

 デカい危険な生き物が居るってだけの世界より、癒しがある方がいいだろ?

 わんわんは敵性生物だったしな。

 モフモフが欲しい。


 ウロコを防御用に2枚出して浮かせ、入り口のドラゴンを回収する。


「ドラゴンだよ、ドラゴン! ……あれ? 消えちゃった」

 喧しい男性のアホ声が聞こえる。

 ずっと暗いトコ居たから外が眩しくて良く見えない。

 相手が視認出来る様になるまで外には出られない。

 人が近付いてくる!


 入り口塞ぐようにウロコを飛ばし、座り込んで胡坐の内側、服の上に石を出す。

 人間にとって最大の敵は人間だ。

 細菌を除けば最も多くの人間を殺してきた生き物だからな。

 ここは安全な日本じゃない。

 

「え、えっ? なにこれ、魔法?」

「こんな魔法聞いたことない」

「誰か居るんですかぁ~?」

「怪しいもんじゃない、俺たちは調査依頼を受けたB級の冒険者だ」

 全員が声を発してるとしたら男2女2の4名。

 8個石を浮かべた状態でさらに2枚ウロコを追加。

 残りの石をアイテムボックスに入れ、丼も回収して外に出る。


「女の子?」

 ハゲ、ヒゲ、貧乳、おっぱい。

 こんなトコでもそれなりに身綺麗さを保ってるし、割とまともそう。


「かわいー!」

 いや、おっぱいさん、あなた冒険者でしょ?

 警戒心無さ過ぎ。

 こんな森の中に幼女1人だよ?

 後ろの人たちみたいに準臨戦態勢取る方が正しいでしょ?


「1人なのか?」

「親とか、一緒の大人の人は?」

 警戒はあるものの、むしろ気遣いや労わりが表情に出てる。

 内心ちょっとほっとした、善人かは分からないけど悪人では無さそう。


「いない、ぼくひとり」

「そ、そう言えばドラゴンは?」

「ぼくがたおした、いまはアイテムボックス」

「森の主を倒しただけでなく、それを収納できるアイテムボックス? 規格外過ぎる」

 あれ? なんかあっさり信じてもらえたぞ?

「何言ってんだ、このガキ」とか言われると思った。

「あんな大きなドラゴンが頭以外無傷で死んでて、それが目の前で一瞬で消えたらなぁ。信じ難いが、嬢ちゃんの言ったこと以外説明が付かないだろ?」

 脳筋っぽい外見だけど、このハゲのおっさん、思ってた以上に賢いぞ?


「なに、そんな驚いた顔してんだよ? 頭ごなしに否定されるとでも思ったか?」

 うんうん。

「この業界、見た目詐欺には事欠かないからな。ま、こういうこともあるだろ」

「くぅ~!」

 このタイミングで鳴るか、腹の虫!


「お腹空いてるんだ、ごめんね、保存食しか持ってないの」

「流石にあれを幼児に食べさせるのは虐待……」

 おっぱいさんと貧乳さんが申し訳なさそうに言うけど、ええんやで、食い物には不自由しとらんさかい。


「だいじょぶ、たべものいっぱいもってる」

 にっこり笑うのと同時にウロコと石を回収。

「さっきのドラゴン食べる気か?」

「凄く薄く切って焼くか、煮込むかしないと子供のアゴじゃ厳しいぞ?」

 なるほど、ドラゴン肉は手ごわい肉なのか。


 大きなドラゴンのウロコを座布団がわりに地べたに座る。

 同じサイズのウロコを4枚彼らに手渡す。


「すわって」

「この大きさ……金貨10枚相当の座布団……」

「これだけで今回の依頼料上回ってるんだけど……」

「お、ありがとな」

「欠けも罅も無い……」

 出来たら彼らには町まで連れてって欲しい。

 運良くまともそうな冒険者と遭遇したんだ、このチャンスを逃すと次はハズレを引きそうだ。


 という訳で懐柔策。

「てんどん、かつどん、おやこどん、かいせんどん、てんしんどん……すきなのえらんで?」

 地べたに並べ、好きなものを選ばせる。

 さっきの保存食の話の時の顔の顰め方からして、賄賂というか友好の贈り物として十分効果を発揮するだろう……てか、僕も早く食べたい。


「出来立ての見たこともない料理だと、これも魔法か?」

「あ、俺これもらうね、うまそー!」

「すごく、おいしそうだけど、いいの?」

「ありがとう、いただきます!」

 一番控えめでクール系に見えた貧乳さんが真っ先に天丼を食べ始めた。

 次いで手に取ったのは最初だったけど、他のメンツの様子を見ていたヒゲが海鮮丼を口に入れ、おっぱいさんが天津丼を、ハゲがカツ丼を手に取った。

 僕は親子丼という訳だな。

 朝食としてはお腹に優しいだろう。


 フォークの様なもので彼らは食べてたが、僕はウロコスプーン。

「ドラゴンのウロコのスプーン……ハハ」とハゲがなんか煤けてた。

 最初の一口を口にするや否や、彼らは凄い勢いでかきこんでいる。

 気に入って貰えたようでなによりだ。

 僕は彼らほど早くは食べられない。

 丼を抱えられないこの手じゃ、テーブルとか食卓無いと厳しいなぁ。


 彼らの視線を感じつつ、自分なりのペースで完食。

 僕が食べ終わるのを彼らは律儀に質問もせずに待っていてくれた。

 その気遣いに感謝して「ぴっちゃー!」と米の一粒まで食いつくされた丼に水を注ぐ。

 もちろん、自分の分もだ。


 さて、質問タイムかな?

 こんな不審な幼女相手にきっちりとした気遣い。

 やっぱ一定以上のクラスの冒険者にはそういうのも必要とされるのかもね?


「嬢ちゃんが主を倒したのは分かった。だが、そもそも、なんでこんな場所に居たんだ? 誰かに置き去りにでもされたのか?」

「だいたい、神のせい」

 うん、この世界の神じゃないけどね。嘘は言ってない。


「神だと……」

「ここがどこかもしらない、お金ももってない、食べ物はくれたけど、服もこれしかもってない、みんな神がわるい、あいつがミスしたからぼくはここにいる」

 もし僕の特典が治癒系だの生産系だのだったら、ドラゴンに殺されてた。


「もう大丈夫だからね!」とおっぱいさんにギューッと抱きしめられたが、ブレストプレート無けりゃ天国だったのになあ……窒息の危険はあるけど。

 無茶苦茶硬い。

 おっぱいさん専用っぽいブレストプレートは、その胸の分だけで普通より絶対必要な素材多いよね?


「痛がってる、ミリア、ステイ!」

 貧乳さんがひったくる様におっぱいさんから俺を奪い取った。

 こっちはハードレザー、金属製のブレストプレートよりは痛くない。

 貧乳さん耳尖ってる、もしかしてエルフ?

 最近じゃ爆乳エロフも多いけど、やっぱエルフは貧乳だよね!

 思わずニコっと微笑むと頭をなでられた。


「神がらみだと、下手に正直にギルドに報告上げると不味いな。ここじゃなく、もっと森の入り口に近いトコで見つけて、親に捨てられたらしい、とかにしといた方がいいかな?」

「なんで? なんか分からんスゲエ魔法持ちで、規格外のアイテムボックス持ちとか一生安泰じゃん!」

「国だの神殿だのにガチガチに囲い込まれて、いい様に使い潰されるのがオチだぞ? こんな小さい子をそういう目に遭わせちゃダメだろ! 特に神がらみだと神殿が一番ヤバイ!」

「持ってる力、持ってる物が下手にバレると一生安泰どころか一生逃げ隠れすることになるわよ? そうじゃなくてもこんなに可愛くて、それだけでも危険なのに」


 あー、やっぱりヤバいんだ。

 飛行移動早めに習得しないとなぁ。

 最大のネックは乗ってる物から落ちた時のリカバリーと、速度出した時の風圧なんだよね?

 一定速度以上になるとゴーグル無しじゃ目を開けてられない。

 パラシュートなんか作れないし、おそらく売ってもいないだろう。

 ファンタジー的な風魔法か精霊魔法でも使えりゃね、なんとかなったんだろうけど。


「まあ、それしかないか、ここに置き去りにする訳にもいかないし、ただ、調査の方の報告をどうするかだよな。俺らじゃドラゴン倒すなんて無理だから俺らが倒したって報告する訳にもいかないし、かと言って居なくなったのを報告しないと、主が居なくなった影響が絶対に出るから周辺地域の備えって点で問題になるしなぁ……」


 しゅたっと手を挙げる。

「べつのだれかがたおしたことにすればいい。首だけもってどっかに行った。のこりはいらないって言ったからもらったって」

「それでも丸ごとの死体だとお前さん……そう云や自己紹介がまだだったな、俺はゴンゾ・プレート、B級冒険者トレントの塒のリーダーだ」

 ハゲがゴンゾさん。

「私はリシティアうんちゃらかんちゃら……長すぎて自分のフルネーム忘れた、エルフのフルネーム長過ぎ問題。斥候で弓使い」

 ひんにゅ、もといエルフさんがリシティアさん。

「私は僧侶でミリアリア・アーツ、ミリアでいいよ」

 おっぱいさんがミリアリアさん。

「で、俺がダーク・タークスだ、俺とゴンゾが前衛だな、よろしくな!」

 ヒゲがダークさん。


「ぼくのなまえは、なんぞ・これです。まほうつかい…なのかな?」

「「「「なんぞ・これ?」」」」

「はい!(やっぱ変な名前だよなぁ)」

 

「勇者さまの口癖だよな」

「勇者信仰のある土地の出身?」

「いや、名前だけならともかく苗字もってのはなぁ」

「偽名にしては怪し過ぎるし……」


「いやいや、本名ですし」

 にしても勇者の口癖って、絶対、勇者日本人だよな。

 つまり、今回のやらかしは初犯じゃなく再犯かよ


「ナンゾちゃんじゃ、ゴンゾみたいで可愛くないわね、ナンちゃんでいい?」

 ウッちゃんは?

 

 ともかく自己紹介も済み、大筋は僕のアイデア通りということで、僕のアイテムボックスの異常さを隠すため、ドラゴンの解体をすることになった。


「まだ、肉も傷んでないな、内臓はどうだ?」

「牙が無いのが惜しいよね、魔術師にバカ高く売れるのに」

「革とウロコは全確保よね、ドラゴンの腱って弓に使えるかしら?」

「爪も羽根も全確保、ここまで無傷なのはまず100年単位で出回ってない」

「ま、本来、捨てるトコなんか無いんだけどな」

 流石にB級(上から2番目だって、S級はランクじゃなく称号だってさ)なだけあって、解体用のナイフや道具もいいもので、ドラゴンも綺麗に捌かれていく。


「だいじょぶ、めぼしいトコいがいは、ぜんぶ、ぼくのアイテムボックスに!」

「そっか、ギルドに出さなきゃいいだけだな、そうと決まれば肉も綺麗に切り分けるぞ!」

「骨もなぁ、需要はあるけどこのサイズだからなぁ」

「りゅうこつすーぷ、じゅるり……」

「この子ドラゴンの骨を料理に使う気?」

「職人や錬金術師に殺されるぞ?」

 そんなぁ……がっくり。


 竜骨スープ飲んでみたかった……。

 出来ればラーメンで……。

 アイテムボックスの料理、丼もライスもいいけど麺類も欲しいトコだった。

 お菓子も、ジャンクフードも……。


 物品召喚か生産チートの転生者探すしか無いか?

 この世界においしい食べ物が多いといいなぁ……。



 

次はこの世界の町初訪問

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― 新着の感想 ―
[一言] ……ふむ、僧侶がおっぱいマウンテン。エルフが貧乳プレーン72。タンクか髭もじゃアマゾン。リーダーが激しく同意、略して禿同で、トレントの塒というチームですね ……トレントの塒ってどんなネーミ…
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