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ようじょ血塗れになる

他の作品の続きを書こうとして、筆が明後日の方向に進んだ結果です。


 口笛を吹きながら歩く。


 上を向いて歩こう。


 一人ぼっちの夜だし、泣きそうな状況だからぴったりだろう。


 踏み出した足で蹴飛ばした石をかがんで拾う。

 小さな手と比較すると大きな石だが、なんせ()()()は小さい。

 一番長い部分で10センチに満たないサイズの石だ、元の体の感覚では対して大きな石では無い。

 ()()()()()()()()()()に放り込む。


 この体は()()()()()と比較しても弱い。

 よわよわのへなちょこである。


 取りあえずは命の心配は無い。

 無限アイテムボックスの中にはカレーライス、ハヤシライス、牛丼、天丼、海鮮丼、かつ丼、親子丼……が各100食入っているしな。

 丼系および◯◯ライス限定ではあるが、()()()()()()()()()恵まれている方だろう……食糧事情に関しては。

 


 ネット創作界隈では良くある異世界転生だが、まさか自分が体験することになろうとは思わなかったし、ましてやTSまでセットになっているとはなぁ……。

 転生とは言っても胎児スタートでは無く、この幼女ボディで両親無しに誕生。

 幼児にしても男児で生まれたかった……。


 転生の理由も神のミスと言うテンプレだが、飛行機の乗員乗客丸ごとという大惨事である。

 今頃は航空会社の重役たちが頭を下げている光景がニュースで流れているだろうが、そもそもの原因は神のミスである。

 ある意味とんだとばっちりだな、彼らは。

 あ、JAL共同運航便とは言え、中国東◯航空だから謝罪なんかしてないかもしれん。


 成田発浦東国際行き。

 単身赴任の父親が「春休みなんでこっちに一度来てみないか?」との誘いに乗ったのが運の尽き。

 初の海外が中国と言うのは「なんだかなぁ」って感じだったけど、海外赴任先として不人気な中国で父親が働いてたお陰で、上の下とは言わないものの中の上くらいの暮らしをしていた身としては文句を言える筋合いも無い。

 

 豫園、外灘、上海ディ◯ニーと連れて行って貰える予定だったしな。

 半額はお土産用だが祖父母からお小遣いまで貰っていたし、急病にでもならない限り多少の時期のズレはあったとしても行くことになっていただろう。 


 まあ、それもこれも、最早、今の僕には全く無縁な話である。

 一気に147名という多数の転生が行われたんで、個々の対応は1対1のテンプレ転生に比べるとおざなりと言うか、事務的と言うか、一方的通告のみ。

 共通しているのは若返り、無限アイテムボックス(容量無限、内部時間停止、30年分相当の料理入り)、転生特典能力(ランダム)、現地言語取得、健康体(10年保証)である。


 赤ん坊状態で放り出されるのに比べればまだマシだが、幼児(保護者、庇護者無し)である。

 特典無しでは処刑に近い。

 

 僕たちの転生先は、1つの世界にまとめてしまうと影響力が強過ぎるため、8つくらいの世界に分散されているので、1つの世界あたりの転生者は10~20人。

 その世界の中でもさらに分散配置されるんで、「一生の内、他の転生者に会う確率はゼロに近いでしょう」とのことだ。


 で、運が悪いと僕みたいに文明の痕跡すら無い、森の奥に配置されるって訳だ。

 

 なら、もっと絶望してへたり込んで動けなくなってもおかしくないだろうって?

 

 へちょい幼女ボディである今の僕だが、幸いにして転生特典は戦闘向けなんだよ。


 能力:ミサイル


 手に触れたモノを誘導ミサイルの様に飛ばし、任意のポイントでそれを爆発させることが出来る能力だ(爆発させないことも出来る)。


 さっきから僕が石を拾ってはアイテムボックスに入れているのはこの能力で使用するためだ。

 なんせMPだの回数制限だの無しなのだ。

 飛ばすモノさえあれば幾らでも飛ばせる。


 手近な物をなんでもミサイルに出来るが、こんなトコに配置されてしまう幸運E⁻の僕だ。

 いざという時に限って、手近にロクな物が無いなんてことはあり得る。

 使えそうなものを拾うのは当然だろ?


 威力は検証済み。小石一つで10メートル以上(たぶん)の高さの木が根こそぎ吹っ飛んだ。

 周囲の被害も甚大で、直径5メートルのクレーターが出来た。


 その時の様子からして、周囲に鳥も動物もモンスターも居ない。

 理由は分からんが決して幸運では無く、むしろ逆の様な気がする。

 モンスターですら避ける場所、僕が居るのはそんな場所なんじゃなかろうか?

 

 まあ、じっとしていても仕方ないので歩いてるわけなんだが。



 ()()()のせいか、歩き続けてもそれほど疲れない。

 筋力や防御力では元の肉体にすら劣っているこの幼女ボディだが、体力では上回っているかもしれん。

 歩いてるだけでなく、時々かがんで石拾ってるしなぁ……。

 地味にこの手の動作は疲れる(学校の校外美化活動で実感した)。


 息切れもしないし足も痛くならない。

 虚弱幼女というのも萌え要素としてはアリだが、自分の身ではノーサンキュー。


 そうして歩き続ける内にお腹が空いてきたんで、牛丼をアイテムボックスから出した。

 丼で出て来た牛丼は出来立てっぽく温かいのは良いが、箸も無けりゃ飲み物も無い。

 サイズからして幼女ボディの手に余る。

「お、重い……」

 手がプルプルなんで、地べたに置く。


 マジで箸どうしよう?

 枝とか使って箸を作るにしてもナイフとか持ってないし、洗う水も無い。

 インド人にならうか?

 でもさんざん石とか拾ってたし、清潔には程遠いしなぁ……。


 ミスであんな大惨事を起こす神だけある。

 痒いトコに手が届いていない。

 特典その他も再度検証が必要だな。

 やることなすこと信用出来ん。


 さて、殲滅力という点では期待出来る僕の能力だが、対人という面ではえらく使い勝手が悪い。

 なんせ、能力は強力だが紙装甲、カス筋力の幼女ボディである。

 理屈で言えば触れた相手すらミサイルにして飛ばすことが出来るだろうが、相手が武器持ちの場合、あるいは魔法かなんか使える場合、相手に触れる事すら出来ない。

 そんなんだから咄嗟に身を守るために使った場合、まず手加減は出来ない。

 良くて致命傷だろう。

 悪ければ対象以外にも甚大な被害を及ぼしかねない。

 リアル「イヤボーン」幼女である。


 そう考えると、今の状況もそれほど悪くないのか?

 少なくともこの能力を相応に使いこなせない内は人の中で暮らすのは危険だろう。

 鏡も水鏡も無いため、今の自分の外見は分からんが、これで美幼女であってみろ、民度によっては人に会うこと自体がアウトになりかねん。


 この世界の知識が無いのがなぁ……。

 魔法があって、モンスターが居るとしか聞いてないぞ?

 国家だの宗教だの差別だの慣習だの、全然分からん。

 数多居る創作の転生者、転移者は良く第一歩が踏み出せたもんだ。

 転生で赤ん坊羞恥プレイとか嫌だと思ってたが、きちんとした親の元に生まれるってのは大きなアドバンテージなんだな。


 さて、牛丼どうしよう?

 蓋があるタイプの丼だったら蓋で掬って食うなんてことも出来たけど……せめて手を綺麗に洗える水があればなぁ……。

 犬食いするしかないか?

 それとも大分冷めて来たから手で掬って、手に接してないトコだけ食うか?


 地べたに置いた牛丼を見つつ、そんなことを考えているとなんか暗くなった。

 森の中ってこともあって、直接は見えてはいないが、おそらく月明かりで真っ暗ではなかったのだ。

 そうじゃなきゃ、流石の僕も歩いてたりしない。

 

 見上げると……でっかく開いた口しか見えない。

 暗くて細部は分からないけど、歯は尖ってて肉食っぽい。

「こ、これでも食らえ!」

 食われてたまるか!

 牛丼を手に取りミサイルにして飛ばす。

 

 ミサイルと化した牛丼が正体不明の大口に突き刺さる。

 そして爆発。

 大口の頭部は汚い花火になった。

 小石より遥かに質量がある牛丼の爆発に僕も吹っ飛ばされた。

 軽体重の幼女ボディだからな。

 踏ん張る力も足りない。

 吹っ飛んだ頭部の血や肉がへばりついて気持ち悪いが、爆散した骨の欠片が直撃しなかったのはラッキーだな。


 もたげていた首が地面に落ちて地響きを立てる。

 爆発に吹っ飛ばされていなかったら、下敷きになってた。

 転生早々ハード過ぎやしないだろうか?


 それにしてもデカい。


 首の断面がこの幼女ボディの身長より大きい。

 長い首の先にはデカいボディ。

 鱗に覆われ、翼があり、手足の爪は鋭く、尻尾は長く太い。


 どう見てもドラゴンです。

 牛丼で殺されたドラゴン……なんかウケるw。


「いたっ!!!」

 pgrしていると急激に全身と頭に痛みがっ……!

 ドラゴンの呪いか?

「いたたたたたたたたたたたたた、いたっ、じぬ゛!」

 痛くて吐きそう。

 汗と涙と鼻水と涎で顔面びちょびちょだ。

 

 地べたを転がり、痙攣し、のたうち回ることしばし。

 なんとか痛みは治まった。


 くっコロさんの気持ちが少し分かる。

 どうしようもないほど酷い時は、せめて一思いにとどめをさして欲しくなるもんなんだな。

 後少し続いてたら発狂してたかもしれん。


「くぅ~」と腹が鳴る。

 食おうとしていた牛丼はミサイルになった。

 ドラゴンの肉には興味があるが調理器具もそれに向いた魔法も持ってない。


 いや、待てよ?

 一番小さなウロコならスプーン代わりにならないか?


 のたのたと歩いてドラゴンの尻尾の先に向かう。

 死んでしまったせいなのか、生え代わりの時期に近かったのか、割と簡単に手ごろなサイズのウロコが取れた。

 口にしゃぶったり舐めたりして口の中の唾を時々吐き出してを繰り返し、ウロコを綺麗にする。


 そして牛丼。

 お、重くない!?

 でも手が小さいんでしっかり持てない。

 地べたに置いてウロコで掬って食べる。


「◯き家の牛丼だ、これ!」

 神は吉◯屋派では無かったようだ。


 ウロコで掬っているとは言え、ほぼ犬食いだ。

 丼にこびりついた米粒までこそいで食べる。

 

 完食……人心地着いた……でもお茶が欲しい。


 そう言えば、先ほどの痛み。

 牛丼が重く感じなかったことからして、これまた異世界ものではありがちなレベルアップとかによる痛みじゃなかろうか?


 あまりの貧弱ボディにチェックして無かったけど「すてーたす! おーぷん!」

 時々、発音が幼女になるなぁ。

 それはともかくとして……バカにしてんのか、おい!

 全部、ひらがな表記ってなんなんだよっ!

 

 なまえ:(ここになまえをかいてね)

 れべる:137

 けいけんち:141421356

 ひっとぽいんと:72/112

 まじっくぽいんと:11893/11893

 わんりょく:12

 たいりょく:76

 まりょく:43882

 ちりょく:9

 こうげきりょく:3

 ぼうぎょりょく:172

 すばやさ:11

 きようさ:6

 しんこうしん:0


 つかえるまほう

 1)ぴっちゃー(みず)4 

 2)らいたー(ひ)5

 3)まぐらいと(ひかり)7

 4)ふぁーすとえいど(ちゆ)2

 5)ばってりー(でんき)3~8


 とくてん

 1)わかがえり すきなときになんどでもわかがえれるよ

 2)むげんあいてむぼっくす どんなにおおきくても、おおくてもはいるよ

 3)みさいる なんでもみさいる ずばばばばーん!

 4)げんちげんごしゅとく みんなとおはなしできるよ

 5)けんこうたい いつもげんき


「……なんぞ、これ?」

『♪名前を「なんぞ これ」で登録しました♪』

「のうっ!」

 おわぁ、名前が「なんぞ これ」になってるよ……。

 変えられねえし……。


 ……まあいい、いまは自分の検証だ。

 ステ値は体力と防御力が高く、魔力がバカ高い以外は分からん。

 高く見える2つのステがようやく人並みレベルで、後が超貧弱かもしれないし、比較基準が無ければわからないな、こりゃ。


 魔法は要検証、後ろの数字は使用MPと思われる。

 特典……無茶苦茶バカにされてる表記だけど、思っていた以上に若返りがヤバイ。

 転生初期状態で元の体より若くなるって意味じゃなかったんだな。

 不老でも不死身でも無いが、不死が可能。


「なんかつかれた…もう寝る」

 このドラゴンのせいで動物もモンスターも居なかったみたいだし、一晩くらい平気だろう。


 じゃ、おやすみ。



最初は主人公転生前オッサンでしたが、一人称「ぼく」が不自然で無い学生に

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