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卑怯な温もり  作者: 久遠寺蒼
リエ
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24/25

23:僕のことを忘れて、ほしい

 僕は、リエのことが、好きではなくなっていたのだ。


 確かに好きだった。


 でも、好きじゃなくなったきっかけは、あのメールじゃない。


 それよりも前から、薄々と感じていた。


 そうだ、僕は確かにうんざりしていた。


 リエのことが好きじゃなくなっていったのを、僕はちゃんとわかっていたじゃないか。


 だけど『僕はリエのことが好きなんだ』って自分に言い聞かせて、その事実から、逃げて、いたんだ。




 僕は正直に話そうと思って、でも、やっぱり正直に話せなかったんだ。




 許してくれとは言えないけれど、『君の幸せを願っているよ』と言う僕を偽善者と罵っても構わない。


 君の気が済むのなら、僕はいくらでも悪人になろう。


 そんなことを、考えていた。


 帰りの東名高速道路で、ずっと思っていた。


 でも、それは、違かったんだ。


 僕は、ナルシストだった。


 ロマンチストとも違う、逆境に置かれた自分というものに酔いしれようとした、大馬鹿者。


 やっぱり、僕は最低だ。





 携帯電話のバイブが鳴る。


 リエから、返信がきた。


「ワッカ、お前さっきなんて返したんだよ?」


「………」


 僕は何も言えなかった。


 送った文章は、次のとおり。


 『ごめん、僕が悪いんだ。リエは何も悪くない。本当にごめん。ありがとう、さようなら、愛しい人』

 今思うと本当に、偽善な言葉だと、思う。


 『やめて! 愛しい人なんて言わないで。私のことを好きだって言ったくせに、他の人の元に行こうとするなんて。自分だけ幸せになるなんてずるいよ……。私、本当に好きだったのに!!』


 僕は死にたくなった。


 生きてる価値なんか、ないと思った。




 本当に、願えるのなら、僕のことを許さないでほしい。


 ずっと恨んでほしい。


 そして、僕のことを忘れて、ほしい。





『ごめんね。ただ、今の気持ちのままで付き合い続けると、もっとリエのことを傷つけてしまうと思うから、離れることにしたんだ。その人と付き合える可能性は、あまりないかもしれないけれど、あやふやな気持ちのままでリエといれないんだ』




 僕は、リエに返信した。


 僕はホタルの話を聞いても、頭で理解していても、それをそのまま直接、リエに言えなかった。


 変なプライドもあった。


 一回決めたことは、そのまま進もうと。


 自分で選んだ道だから。





「なんてメールきたんだ?」


「ん……皮肉っぽいことをちょっと言われたくらいだよ」


「そっか」


 ワッカは最後の一本を取り出して、空になった袋をぐしゃっと握りつぶした。


「明日、吹奏楽の練習なんだって? それなのに眠らないで……いや、眠れないのか、そうとうショックだったんだろうな」


「――発表会の前だから、きっと練習も仕上げってことで大変なんだろうな」


「ま、終わったらすぐ誕生日だったんだろ? それなら早い方がよかったかもな」


「そう思うことにするよ」


 僕は携帯をズボンのポケットにしまった。

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