23:僕のことを忘れて、ほしい
僕は、リエのことが、好きではなくなっていたのだ。
確かに好きだった。
でも、好きじゃなくなったきっかけは、あのメールじゃない。
それよりも前から、薄々と感じていた。
そうだ、僕は確かにうんざりしていた。
リエのことが好きじゃなくなっていったのを、僕はちゃんとわかっていたじゃないか。
だけど『僕はリエのことが好きなんだ』って自分に言い聞かせて、その事実から、逃げて、いたんだ。
僕は正直に話そうと思って、でも、やっぱり正直に話せなかったんだ。
許してくれとは言えないけれど、『君の幸せを願っているよ』と言う僕を偽善者と罵っても構わない。
君の気が済むのなら、僕はいくらでも悪人になろう。
そんなことを、考えていた。
帰りの東名高速道路で、ずっと思っていた。
でも、それは、違かったんだ。
僕は、ナルシストだった。
ロマンチストとも違う、逆境に置かれた自分というものに酔いしれようとした、大馬鹿者。
やっぱり、僕は最低だ。
携帯電話のバイブが鳴る。
リエから、返信がきた。
「ワッカ、お前さっきなんて返したんだよ?」
「………」
僕は何も言えなかった。
送った文章は、次のとおり。
『ごめん、僕が悪いんだ。リエは何も悪くない。本当にごめん。ありがとう、さようなら、愛しい人』
今思うと本当に、偽善な言葉だと、思う。
『やめて! 愛しい人なんて言わないで。私のことを好きだって言ったくせに、他の人の元に行こうとするなんて。自分だけ幸せになるなんてずるいよ……。私、本当に好きだったのに!!』
僕は死にたくなった。
生きてる価値なんか、ないと思った。
本当に、願えるのなら、僕のことを許さないでほしい。
ずっと恨んでほしい。
そして、僕のことを忘れて、ほしい。
『ごめんね。ただ、今の気持ちのままで付き合い続けると、もっとリエのことを傷つけてしまうと思うから、離れることにしたんだ。その人と付き合える可能性は、あまりないかもしれないけれど、あやふやな気持ちのままでリエといれないんだ』
僕は、リエに返信した。
僕はホタルの話を聞いても、頭で理解していても、それをそのまま直接、リエに言えなかった。
変なプライドもあった。
一回決めたことは、そのまま進もうと。
自分で選んだ道だから。
「なんてメールきたんだ?」
「ん……皮肉っぽいことをちょっと言われたくらいだよ」
「そっか」
ワッカは最後の一本を取り出して、空になった袋をぐしゃっと握りつぶした。
「明日、吹奏楽の練習なんだって? それなのに眠らないで……いや、眠れないのか、そうとうショックだったんだろうな」
「――発表会の前だから、きっと練習も仕上げってことで大変なんだろうな」
「ま、終わったらすぐ誕生日だったんだろ? それなら早い方がよかったかもな」
「そう思うことにするよ」
僕は携帯をズボンのポケットにしまった。




