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ベテラン勇者のおつかい  作者: Luoi-z-iouR(涙州 硫黄)
水の国
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クリスマス編 ベリークルシミマス!(2020年投稿版)

突然ですが本日はクリスマスです。本編の補足にもならないかもしれませんが、少しだけ過去編っぽくなっています。要はキャラの深堀みたいな立ち位置です。去年もそうでしたがクリスマスもといクルシミマスの話は普段よりも妄想が激しい部分があって書くのがきついですが楽しんで頂けると幸いです。本編の続きは来週までお待ちください。

 クリスマス。旧世界においては12月25日にイエス・キリストの生誕を記念して『家族』でそれを祝う行事として世界に浸透していた。前日の12月24日もクリスマス・イブとして特別な時間を過ごす者も多い。また、サンタクロースという人物が夜中に世界中の子どもがいる家庭に周ってプレゼントを配るという伝説じみた風習も同時にあることから子どもたちをはじめ、世界中で絶大な人気を誇るビッグイベントである。だが日本では『家族』の範囲が『恋人』にも適応されるため『リア充』と『ぼっち』と『リア獣』による熾烈な戦いが起きている等、独自に発展した部分が含まれており少々事情が異なる。


 だが第三次世界大戦が勃発し、人類が滅びかけてしまった。クリスマスの文化が形だけ残った数十万年後、現代のクルシミマスという文化が世界各地でそれぞれ生き残っていた。



「『あたまがさーらさらー。かみのけぬけるー。『さたんさま』きーらきら。きんばくーぷーれーいー』」

 雷帝丸5歳。ブルーミアの城から見て北西部に位置する花農家の子どもとして生まれた。この地域もついこの間まで魔王によって支配されていたが、魔王が討伐されて解放された。それから10年が過ぎていた。どう見ても特定の誰かを侮辱しているような歌を歌っているが、これはこの地域に残るクルシミマスのテーマソングである。文明が衰退し、長い年月の中で旧世界のものとは違う形で継承されてしまっているのだ。

 それはさておき雷帝丸の実家の事情である。雷帝丸の父は高齢でありながら複数の嫁を抱え込んで働き手としてはもちろん、自身の子どもを産ませる為に多くの女性との間に子どもを作っていた。そのうち生きているのは子どもは乳幼児を含めてこの時点で5人。例外なく無理をさせて働かせているため亡くなっている兄弟が殆どで、雷帝丸も知らない兄弟がいる。

「雷帝丸、なにしてるの? 」

「にーちゃん! さたんのおじさんにおねがいごとしてるの! ほら、『ユーカリバンブー』にたんざくつるしたからおねがいしますっていのって、もやしてひりょうにするの」

「えー! 雷帝丸ってもう字がかけるの? 」

「さっすかおれたちのりーだー! たよりになるぜ」

 雷帝丸の兄が尋ねると雷帝丸は希望を持った声で答えた。すると話を聞きつけた同年代の子どもたちが雷帝丸の元へ駆け寄り、物珍しい雷帝丸が書いた短冊をじっくりと見る。この子どもたちは奴隷として父親が買ってきた身寄りのない子どもたちである。雷帝丸たち実子の部下に相当する。だが雷帝丸はそういった認識は無い。それ故に子どもたちの願いも込めて短冊を作ったのだ。読めそうもない文字で『さたんのおじさんえ、みんながぶじにいちねんすごせますように』と書かれた短冊を『ユーカリバンブー』という燃えやすい植物の枝に吊るしている。

 雷帝丸は実子であるため教育されて最低限の字の読み書きが出来る。このことから雷帝丸を含めた実子は同世代の子どもたちからはリーダーの1人として認められている。だが実子であっても雷帝丸の父は他の子どもたちと悪い意味で分け隔てなく接してきていたため、雷帝丸の内心では既に大きな恐怖に対してほんの少しの勇気で奴隷の子どもたちを守ろうとしていた。


「雷帝丸らしいな。こういう優しさはいつまでも忘れるんじゃないぞ」

「えへへ、みんないきてればいつかいいことある。でもことしもしんじゃった。だかららいねんはしんじゃったみんなのぶんも、いまいきてるみんなでげんきにクルシミマスしたい! 」

「お前はきっといいリーダーになる。リーダーとしてどう頑張ったらいいかは俺が教えてやる。だからお前もがんばれよ」

「うん! にーちゃんもがんばって! 」

 雷帝丸は当時から奴隷である子どもたちから頼られ、兄にも期待されていた。故に25歳になってもリーダーである勇者であり続けたいとどこかで思い続けているのかもしれない。だが10年程の年月を経て多くの命が失われていくのを見てきた。当人でさえも守れなかった命の数はもうわからない。兄も亡くなってしまった。花をいくら育てても満足に食事を摂れないことは分かりきっていた。餓死した者もいた。雷帝丸自身も少ない食料を皆に分け与えたが故に死にかけることも多々あった。だからこそちゃんとした食料になる野菜や果物を育てようとした。

 だがこれが父のプライドを傷つけた。奴隷たちが食料をきっかけに反乱を企てる可能性があったことから、父は実子の雷帝丸を勘当してしまった。雷帝丸15歳のことである。




「えいっ! えいっ! 」


 寒さで体温が奪われるクリスマスもといクルシミマスの夜。花の国では家族や恋人がいない独身男性が時間を決めて上裸でひたすら真正面の虚空に向かって正拳突きを繰り返す。花の国のこの行事は子ども達が寝る夜9時から深夜3時までとされ、日付が変わるまで拳突きに費やすことが一般的である。そして、後半は眠っている子どもたちがいる家に大の大人がお菓子を貰いに行くことがメジャーであるが、どうみてもお菓子を集りに来ている情けない大人達である。当然大人がお菓子を渡してクルシミマスの参加者を退散させるまでが一連の流れである。また、地域にもよるが一部装飾品を付けることが義務付けられている場合がある。


「えい……えい……」

 大勢の男たちの中にはもちろん雷帝丸もこの場所にいる。現在は日付が変わる少し前。雪が降り積もる。雷帝丸は装飾品として頭にオレンジ色の野菜で作られた悪霊の被り物を装着し、上裸で正拳突きをしている。雷帝丸はたまたま仕事で花の国の東側に来ていたのだが独り身の男ということで役所にいた男衆に強制的に参加させられてしまった。

(何がクルシミマスだ。なんでこんなことやらされてるんだ俺は。というか寒いしこの被り物臭いし最悪すぎる。みんな、大丈夫かな……)

 雷帝丸、この時16歳。実家を追い出されてから半年が過ぎていた頃の話である。この出来事がきっかけで寒さに多少強くなったと本人は後に語る。



水の国東の都市リュウスイ


「おばあちゃん、お母さんとお父さんは? 」

「もう少ししたら帰ってくるよ。あたしゃ2人が帰ってきたら飯でも作ろうかのぉ」

「クルシミマスだから少し凝ったものがいいよね。何がいいかなぁ。あ、玄関に『ドラゴカープ』の飾りを付けてお餅も用意しなきゃ」

「これこれシクロ、料理下手が手間暇かけて作るもんじゃない。いつも出来上がるのは毒物か炭、それから無のどれかじゃろがい。人並みに料理が出来なきゃ嫁の貰い手が見つからんぞ」

「いいもん、あたしがお嫁さん連れてくる」

「そういうことじゃねーよ」

 ここは水の国東の都市リュウスイの一般家庭。港町であるため漁師である住民が多い。シクロの家庭もそうだった。そんなリュウスイの一般家庭ではクルシミマスを迎えると家族でいつもよりも贅沢な食事をすることと、『ドラゴカープ』という架空の魚の飾りを付け、餅を食べて子どもの成長を願うことが慣わしである。

「あ、おばあちゃん。あたしもうすぐ10歳の誕生日なんだけど誕生日くらいはお母さんたち帰ってくるよね? 」

「そうじゃのぅ。あたしゃが聞いた話はもうすぐ帰ってきて、来月の誕生日までは陸で仕事をすると言っとったがのぉ」

 それを聞くとクルシミマスと誕生日を待ちきれなくなるシクロ。当時10歳。両親が不在のことが多いため祖母と暮らすが、祖母も仕事でいないことがあり、寂しさも相まって躾が上手くいかなかった。水の国では小学校までは義務教育であるため学校に通っていたが、誰もが手を焼く問題児であるシクロはどこでもやりたい放題だった。そして数時間後には悲劇が起こる。



「ただいまー。……何これ? 」

「シクロ、母ちゃん……」

「お父さん、お母さん、おかえりなさい。おばあちゃんは注文が入ったからさっき出かけちゃったから火の番だけしてたよ。それよりも今回の漁はなかなかだったって聞いたよ」

 シクロの両親が帰ってきた。だが家の中は真っ黒に汚れていて日差しが入ってこない。シクロはただ火を見つめていただけで家が煤だらけになってしまい、さらにはスープはたっぷりと入っていた水と具材が全て灰に変わっていた。

「シクロ。今の家の真っ黒さを見てお父さんの稼ぎの大半が我が家のお掃除で無くなりそうだなって思ったよ? 」

「お母さんも同じこと思った。コレ業者呼ばないとダメじゃない? というかどうやったらこんなことになるのよ。そしてシクロはなんで煤を1ミリも被ってないのよ」

「才能? 」

「だとしたら掃除屋になった方がいい気がす……いや、人様の大切な物を破壊しかねないな。とりあえず掃除するぞ掃除。これじゃあ生活できない」

 結局シクロの家のクルシミマスは煤の掃除だけで日が沈み、翌朝までかかった。もちろんクルシミマスのプレゼントなど無い。



リュウスイのある一室


「ベリークルシミマス! 」

「……元気ね」

「クルシミマスだからテンション高い。ほらほら上がってよ」

「掃除しなよ。近所迷惑マン」

 ある女性がアパートの一室を訪れる。女性はベルを鳴らすと中にいた男性からいきなりお祝い用クラッカー砲を撃ち込まれる。紙テープだらけの女性は冷めた声で返し、身体にまとわりつく紙テープを集める。男性は玄関にあった箒とちりとりで手早く片付けると改めて女性を家に迎え入れる。室内は無駄に凝ったドラゴカープの飾りや紙テープ、メッセージバルーンで壁一面に張り巡らされている。

「どんだけ楽しみだったの」

「3ヶ月かけて作りました」

「バカだろ」

「ちょっとくらい褒めてよ」

「はいはいすごいでちゅねー」

 男性は年甲斐もなく膨れっ面になるが、女性が頭を撫でると表情が雪のように溶けてゆく。

「えへへー」

「ちょろくない? 」

「ちょろくない」

 女性は半ば呆れながら男性の頭を叩いてこの日の為に用意したご馳走が並ぶテーブルへ向かう。ご馳走だけでなく少し高めの酒も置いてあり女性も機嫌がいい。


「さ、食べよ」

「俺も食べる。その後は……」

 男性がニヤつきながら女性に視線を配ると女性の視線をベッドへと誘導させたがる。ベッドには『YES』と書かれた枕に如何わしい女性下着とサタンのお姉さんの衣装(R18仕様)が置いてある。要はご馳走を食べ終わった後のことを女性に答えさせたいのだ。だが女性もそれは分かっていてわざと答えをはぐらかす。

「ね、寝る」

「クルシミマスのケーキ食べないの? 」

「うぐっ!? 」

 男性の予想外の反応に女性の顔が少し赤くなる。メイクで赤い頬が恥ずかしさでみるみる紅く変わる。

「あっれー? どうしたのかなー? もしかして、俺とナニかすること考えてた〜? ベッドに面白いものがあって、それを着てみたいのかnいだだだだだだだだ! ギブ! ギブ! 右手で顔面を鷲掴みしないで! 左手でお腹に連続ジャブを入れないで! 握力おかしいって!? 頭骨砕ける! 前頭葉潰れるぅ! 」

「うるせぇばーか! ガムテープでケツ毛引き千切るぞ」

「ケツ毛以外も逝くんですけど!? 」

 女性が半ば突き飛ばすように拘束を解くと何事もなかったかのようにそっぽを向いてテーブルに着く。

「ぁぁぁぁぁいたいぃぃぃぃぃ……」

「ほら早く席に着け。さっさとこの塊肉を切り分けろ。2人で食べるにしても大きすぎるし」

「は、はい……」

 男性は頭やこめかみを抑えて蹲るが、女性に呼ばれて女性の後ろに回る。予め用意しておいたナイフとフォークで塊肉を食べやすい薄切りにしていく。女性は男性の何気ない立ち振る舞いに少しだけ興奮しながらご馳走について聞いてみる。

「この肉にお酒って随分奮発したんじゃない? 」

「いや、商人から貰ったんだ。魔術式船舶が不調だったから俺が直したらお礼にって」

「いいことするじゃん」

「俺が? 」

「商人が」

「マジかよ……はい、切り終わった」

「ん、食べよ」

「食べさせ合いっこしようぜ」

「断る」

「断らぬ? 」

「……まぁ今日くらいはいいか」


 男性は改めて席に着くとニコニコと笑いながら酒の栓を開けて2つのグラスに注ぐ。赤い色合いと独特の香りをそれぞれ堪能して静かに乾杯する。

「ん……すっごい美味しい」

「な。香りも口当たりも味もいい。こんなにいい酒、滅多に手に入らないぜ。肉と合うって言ってたし。ほら、あーん」

「早いって。あーーー」

 男性はいつの間にかフォークを手に取り、肉を掬っていて準備万端。女性はグラスを置き、身体を前に出して肉を口に入れる。

「ん、んん!? 」

「どう? 」

 感想を求める声を他所にゆっくり味わうと笑顔が零れ、落ちそうになる頬を抑える。言うまでもなく美味い。

「よかったよ。あ、そうそう」

「ん? 」

「はい、プレゼント」

 男性が何気無く取り出したのは手のひらサイズの小さな箱だった。間髪入れずに男性が箱を開けると指輪が入っていた。

「んん!? ま、マジ? 」

「受け取ってくれる? 」

「……タイミングもっと後だろ。2点」

「ええっ!? 」


 女性は席を立つ。男性は完全に失敗したと焦るが杞憂に終わる。女性が男性に近付き、指輪の入った箱を受け取りながら男性の額にキスをする。キスを受け入れた男性は女性にしがみつく。

「なんで泣きそうなのよ」

「ダメだと思ったぁぁぁぁぁ……」

「はいはい」

「……今夜はいい夜にするから」

「お腹に顔を埋めながら言うと説得力無い……おい、さりげなく顔を胸にスライドさせんな」

「いだだだだだだ! こめかみグリグリやめっ! あああああああああああああ!! 」


 本来の意味とはかけ離れた伝統行事。形さえも変わってしまったが、大切な人を思う心はいつの時代でも純粋な気持ちで……



リア充は爆発しろ。作者は昨日に引き続きありったけのC4(粘着爆弾)をかき集めてリア充を探しにいってきます。

今年もクルシミマスは作者の恒例行事である”某モンスターをハントするゲームにてソロで空の王者をタル爆弾で爆殺し、陸の女王をシビレ罠と麻酔玉でお持ち帰りする大会”が行われていません。形骸化しつつありますがルールは簡単。空を爆殺、陸を捕獲すること以外は何でもOKなので誰か代わりに開催していただけると幸いです。やっぱりやらなくていいです。

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