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ベテラン勇者のおつかい  作者: Luoi-z-iouR(涙州 硫黄)
水の国
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水の国 ④再会と交流

 雷帝丸は少しだけ意識を取り戻す。声だけ聞こえているが唇と胸に何か感触がある。雷帝丸は何が起こっているのか全く理解できていない。ただ、自分の周りに誰かいることはなんとなくわかった。

「うぼっ! ごはっ! げほっ! げほっげほっ!! 」

「あ…」

 雷帝丸は心臓マッサージの衝撃で完全に起きる。目が覚めると子どもが雷帝丸の胸に手を当てている。子どもはコハクよりも少しばかり年上に見えるが衣服のあちこちが土で汚れていて土の香りがする。少女のような見た目だがコハクのような活発さは見るからに感じられない。どちらかと言えば日陰で日向ぼっこをして平和に暮らしていそうな雰囲気が滲み出ている。

「げっほ、う“お”え“え”え“!! はぁ、はぁ、はぁ……あ、ありがとうよ」

「だ、大丈夫ですか? 」

「あ、あぁ。ちょっと川に流されただけだ。肺に水が入って痛ぇが口から出てきたから問題ねぇ。溺れたからか頭が痛ぇが……いや、川底にぶつけたか。コブが出来てる」

「あ、あはは……とにかく無事で何よりです」

 子どもは蚊の鳴くような小さな声で返して雷帝丸に愛想笑いを浮かべる。空を仰ぐと日がまだ出ていることから流されてからそれほど時間が経過していないことを感じ取りながら子どもに質問を投げかける。

「なぁ、嬢ちゃんが助けてくれたのか? 」

「は、はい」

「嬢ちゃんは命の恩人だ。本当にありがとうよ」

「あ、あの一つ」

 子どもが何か言いかけたその時、雷帝丸が背にしている川の方向から誰かが近づいて子どもに声をかけてきた。

「ケラちゃん、連れてきたわよ」

「あ、ありがとうございます。フロウムさん、この方です。川に流されていたところを救助しました」

「ん? フロウム……? 」

 雷帝丸はその名前に聞き覚えがあった。だが目覚めたばかりということもあって明確には思い出せない。


「二人ともよくやったっス。まさかこんなことになるとは思わなかったっスけどね……お久しぶりっス雷帝丸先輩」

「俺は勇者サンダーボルト! さっちゃんだ! って、あれ? やっぱおまえってどっかで……? 」

「俺の見習い時代に一緒に仕事したフロウムっス! 三年前に勇者リシンの元で一年間修行していた見習いだった勇者っス! 」

 雷帝丸は三年前を思い出す。少し時間をかけて自分の受けた依頼を振り返るとあるパーティに雇われていたことを思い出したのだった。

「あぁ!! あのマッチョのとこにいた焼き(ごて)の! ドチビだったのにずいぶん見違えるくらいに成長したな。というか語尾どうした? 」

「焼き鏝というかグローブっスね。独立しなきゃいけなくなったのでその時にイメチェンしました」

「そうかぁ、お前も独立したのかぁ。時間の流れってのは残酷だ。俺もすっかり歳を取ったもんだ。あっはっは。ところでおまえがなんでこんなところにいるんだ? 」

「実は水の国から先輩を連れてくることを依頼されたんですよ」

「あ……俺ら今水の国から逃亡してるんだよ…俺の連れがそこで修行してたツリーハウスを跡形もなくぶっ飛ばしたからな」

「その件は解決済みっス。花の国の執事長ベンゼンさんが事情説明して補修したので軽く話を聞くくらいなのと、それとは別件で呼び出してほしいとのことっス。俺にも関係あるようなんスよ」

「ベンゼンの爺さんと会ったのか!? 俺はその爺さんに依頼されて魔王討伐の準備をしているところだったんだ。ところで、俺とお前の二人に関係があるって? 共通点なんて勇者だってくらいじゃないのか? 」

「直接は会ってないっスけど、役所の人がちょっとした騒ぎになってたっス」

「ホントあの爺さん何者なんだ…っと、俺のパーティメンバーが川上にいるはずだ。そこまで行こう」

 雷帝丸は後輩と久しぶりに再会し、談笑に花を咲かせていると少し日が傾く。日没が心配になった雷帝丸は3人を連れて流されてきた川の上流へと歩みを進め始めた。



「そろそろ日が傾いてきたっスね。結構歩きましたけど、どっから流されてきたんスか」

「もうちょい先だろう。ほら、焚き木と魚を焼いてる匂いだするだろ? この先だ」

「野生的な勘……そういやパーティメンバーって言ってましたけど、雷帝丸さんもついに自分のパーティを組めるようになったんスか? 確か昔パーティを組むのが夢だって言ってたっスよね? 」

「あぁ、ベンゼンの爺さんが俺一人に魔王討伐を依頼してきてな。何気に花の国が滅びかけてるから報酬目当てで頑張ってんだよ。まだ途中の段階だが夢も叶いつつあるからな。俺はその日暮らしが始まってからかれこれ10年が経っちまった。勇者としての寿命はそんなに長くない。だからそろそろ腰を下ろすためにも、でっかい報酬にかけがえのない仲間が得られるんだ。仲間は必ず守るって前提だが相手はバケモンだが立ち向かう価値はあるぜ」

「なんかそういう現金なところ変わんないっスね」

「まぁ人間そう簡単には変われねぇよ……と、いたいた。ウチのじゃじゃ馬共だ」

 雷帝丸は自分が流された川岸で大きな魚の切り身を強火の遠火でゆっくりと焼いていた。どうやら雷帝丸がいなくなった後も川遊びと食料確保を続けていたようで大小さまざまな魚が切られたり冷凍されたりして辺りに魚の血が付いている。

「……勇者がいなくなってんのに呑気にバーベキューしてるんすけど」

「まぁそういうヤツらだ。だが二人ともあり得ないくらい強いぜ。おーい、お前ら、メシ出来てるか? 」

「あ、おじちゃんおかえりー! 」

「あんたどこ行ってたのよ。まぁ途中から注意するおっさんがいなくなってせいせいしてたけど。……その野郎と女の子は誰よ? 」

「野郎とか言うなよ。コイツは俺の後輩のフロウムだ」

 雷帝丸がフロウムに目を配るとフロウムは笑顔で頷いて挨拶とパーティを紹介する。


「ちっス、勇者のフロウムっス。後ろの二人はレンジャーのケラと僧侶のコレシスっス」

「……ふぅん」

 シクロはこの3人が只者ではないことを既に感じ取っていた。3人を舐めまわすように見ると雷帝丸とは別の方向で過酷であろう人生を歩んだ形跡が肉体のあちこちから見て取れたフロウム。コハクよりもわずかに背が大きいながらもフロウムに隠れてフードで顔が見えないように深く被るケラ。この森の中を歩いてきたことは他の二人からわかるのにやたらと着衣が小綺麗なコレシス。お互い初対面だがシクロの脳内では珍しく真剣な話し合いが行われていたため反応が適当になる。

「あれ、なんか反応おかしくない? まぁいいや、コイツはシクロ。格闘家だ。で、こっちの……」

「コハクだよ! おじちゃんの後輩ってことはお友達だよね? フロちゃんでいい? 」

「ちょ、だ、ダメです! 年下なのに師匠をそんな呼び方……」

「ケラちゃんかわいいね! ちゃん付けじゃフロちゃんと被るから“ケラちん”でいい? 」

「い、いや、です…」

 コハクがケラに早速ちょっかいを仕掛けるとケラは当然のように嫌がる。コハクにとっては同年代の友達が出来てうれしいのだろうが、消極的なケラにとってはコハクの積極的な性格と相性が悪い。尊敬する自分のパーティリーダーに気軽にあだ名を付けられたことに腹が立つが、ミイラ取りがミイラになってしまった。一方大きな魚に目を付けたコレシスはシクロに夕食を遠慮なく所望する。

「ねぇ。こんなに大きな魚がこの川にいるの? 食べたい」

「コレシスさんだっけ? もちろんいいわよ、女の子だから。今日のごはんは巨大川魚の直火焼きに川魚の激辛香味のスモーク、川魚のあら汁よ。炭水化物は無いけど魚ならたくさんあるわ」

「おいしそう。ごはんを分けてくれる人はいい人。私が女で良かった、ごちそうになる」

 シクロとコレシスは魚を介して物の数秒で意気投合していた。本来混ざることのないお互いの好きな物が奇跡的に噛み合って二人は満面の笑みである。

「……ごめんな。あとでコイツらには言っとくから許してやってくれ」

「俺も二人には話を付けとくっス」

 雷帝丸とフロウムは既にいつパーティ対抗で何かやらかすのかと肝を冷やすこととなった。



やっと彼らを引き合わせることが出来ました。作者としては後輩パーティの構想からめちゃくちゃ時間が経過しているのでここまで長かった気がします。

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