水の国 ①お粗末な扱い
約一週間前、男性一人、女性一人、子ども一人で構成された勇者のパーティが風の国の首都オキシに到着し、実は国を揺るがす大事件に足を踏みいれてしまった。その問題は魔女の討伐、投獄ということでひとまず落ち着いたのだ。その渦中にいたのがこの3人、装備の大半と股間の息子を失った勇者雷帝丸、魔女に体内に魔本を注入されて仲間の股間を粉砕した格闘家シクロ、作られた天才であることが発覚した天才魔術師コハク・ウィザーグリフ。この3人は一度魔王討伐を依頼してきた花の国の執事長ベンゼンに会うためこの日オキシを旅立った。
「そろそろメシの準備しないとな。日が落ちてきた」
「一晩を明かせそうな場所を探さないといけないわね」
「コハクもうおなかペコペコだよ。おじちゃん、なんか簡単に食べられるものない? 」
「さっきシクロが拾ってた木の実くらいだな。イモ類を揚げたような味と食感がするナッツだ」
「小さい木の実じゃおなかにたまらないよ」
「コハクちゃん、少し時間かかるけど親子丼なら作れるわよ」
「親子丼!? 作れるの!? 」
「うん。オキシを発つ前に少し食料を買ってきたんだけど、晩ご飯用にたまごと鶏肉、お米があるからおいしく出来るわよ」
シクロは風呂敷のような袋から鶏肉を覗かせ、コハクはそれを見て目をキラキラと輝かせて親子丼を楽しみにしている。
「よくそんなもん持ってきたな」
「あ、二人分しかないからあんたはテキトーに虫でも食ってろよ」
「ほんっとひでぇなおい。まぁ何かしらあるだろうしそれだけじゃ足りないだろうから探してくる」
「コハクもそうだけどみんな意外とごはん食べるからね」
3人は親子丼を食べることに賛成して一晩を明かせそうな場所を探しつつ調理に使えそうな石や薪を確保した。その後雷帝丸は追加の食料を探しに、シクロとコハクは調理の準備を始めた。数十分後、雷帝丸が帰ってきた。
「遅くなった。調子はどうだ? 」
「ばっちりだよ! 丁度いい器が無かったから魔力で空気と水を器の形に固定してるからちょっと疲れるけどこれは絶対おいしいはず」
「もういい匂いがしてくるから腹が減ってくるな。そういやシクロ、お前料理できたっけ? 」
「あたしだって料理くらい出来るわよ。女の子においしいごはんを食べさせるのもあたしの役目よ」
「あ、そういうことね」
(本当は魔本の中に料理系の技があったからそれをむりやり使ってるだけなんだけどね…でもコハクちゃんが喜ぶなら使わない手は無いわ)
シクロは本来あまり料理が得意ではない。だが魔本の力で料理ができるようになったため絶品の料理を作り出すようになった。ただ、シクロのプライドの問題でそれを口外することはなかった。
「そろそろ頃合いかしら? 」
「もう食べれる!? 」
「えぇ。ごはんがそろそろ炊けてるはずだから石で作った丼持ってきて」
「わーい! 親子丼! 親子丼! 」
「一応その丼俺が加工できそうな石を選んだんだからね? シクロさん器関係で何かしました? 窯も俺が無理矢理即席の窯を作っただけだからね? 」
「うっさいわねぇ。あたしとコハクちゃんが親子丼を食べれればいいのよ」
「今日も理不尽がひでぇ。あ、コハク、俺の分はいらないからたくさん食べろよ」
「はーい! 」
雷帝丸が相変わらずの理不尽を受けている。それをよそにコハクは鼻歌を歌いながら丼に炊き立ての米を即席のしゃもじで大盛にしてよそう。雷帝丸はやれやれと呆れながら拾ってきた果物を一齧りする。
「あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“辛いいいいいいいいいいい!!! 」
「それジョロキアップルじゃない。軽いヤツ取ってきたでしょ? 」
「ぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああ…軽いのしかなかったぁぁぁぁぁぁ……あと2つもあるぅぅぅぅぅぅ」
「なんで持ってきたのよ……あ、そうだ。少しそれ貰うわよ」
「え? まぁいいけど……なんだそれ? 」
シクロが雷帝丸から激辛のジョロキアップルを受け取り雑に切ると袋から何かを取り出す。それは赤い腕の形をした調理器具だった。それを取り出して雷帝丸に見せつけると濁声で商品名を紹介する。
「グルメスッパイザー」
「今すぐ返してこい」
「調味料生成器なんだけどなんか魔本がこれに反応したから買ってみたのよ」
「う、うーん。魔本に反応してるってことは一応戦力になるのか? いや、絶対ない。万が一も無い」
「今では簡単に買えるけど旧世界では国家予算でも買うことが出来なかった代物らしいわ。これは旧世界のオリジナルの資料を元に作り直した物よ」
解説を挟みながら一度グルメスッパイザーを二つに分解して自分で集めた木の実とジョロキアップルを拳のカップに投入する。
「ポンッ! と食材を入れて本体を閉め直して、肘(?)に付いてるレバーを押し込んでクラッシュ! クラッシュ! 」
「中でふりかけが出来るって寸法か」
スパイスを作っているとコハクが丼を持ってきながら魔法陣の内部から箸を取り出す。もう待ちきれないようでコハクのおなかが微かに鳴っている。
「おねぇちゃーん。親子のっけてー」
「おっけー! 大盛過ぎてこぼれそうだけどいいっか。スパイスいる? 」
「おねぇちゃんがかけておいしかったらかけるー」
シクロはコハクの持ってきた大盛ごはんの入った丼に親子煮を乗せて親子丼を完成させる。それをコハクは凝視して目を輝かせながらよだれを垂らす。
「ふわああああ! 卵ふわふわでおいしそう!」
「出汁とかはインスタントだけどね」
「おいしいものならいいの! いっただっきまーす! …んふーっ! おいしいいいいいいい♡」
「あたしも食べよ。…うん!? 思ってたよりおいしい!? ここにさっきのグルメスッパイザーで作った辛くてクセになるであろうスパイスをパッパッパ! うまそぉおお! 」
シクロは自分の丼に乗せた親子丼にグルメスッパイザーの拳側の蓋を開けてスパイスをかける。それを箸でふわふわに仕上がったそれを口に運ぶ。
「うん…ちょっと辛い。でも美味い。あたしってこんなに料理上手かったかってくらい美味い」
「なんでコイツ天罰下んないんだろう。ここは絶対に俺を同じ末路を辿るべきだろ」
雷帝丸は不貞腐れて頬杖を突きながら寝そべっている。雷帝丸が不服な目でシクロを見ているとシクロがグルメスッパイザーを持って雷帝丸の元へ歩いてきた。
「ん? もしかして味見くらいはさせてくれるのか? せっかくだからあーんとかさs」
シクロは雷帝丸を黙らせるために無言でグルメスッパイザーの蓋を開けて雷帝丸の口にねじ込んだ。
「ばあ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“あ”あ“!!!!! 」
「お粗末様っ! 」
こうして夜は更けていくのだった。
菓子粉砕機の話を書きたいがために書き溜めから急遽書き換えました。時事ネタぶち込むのって改めてすごく難しいですね。すんごい急にジャンプに関連するネタが流行るとは考えておらず、作者の頭がポン! クラッシュ! クラッシュ! パッパッパ! しました。




