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ベテラン勇者のおつかい  作者: Luoi-z-iouR(涙州 硫黄)
風穴の光
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魔王城③ 魔王の気まぐれ

「配下を持つというのも存外には悪くない。対策されなければ確実に死に至る防衛設備ができたのだから悪くはない。だが……」

 ここは花の国の北部。初夏にも関わらず雪や氷に覆われている。外部には少し前に魔王の能力で生やした木々が不自然にある。魔王の間は相変わらず椅子と机だけの殺風景な部屋である。変わったことと言えば暇つぶしに作っていた家具が全て焼き尽くされていた代わりに意識を失った女性の姿をした人形らしき何かがいくつか置いてある。だが四肢は無く、内臓があるべき箇所が刳り抜かれて頭が無い。その中で一体だけ意識がある人形がいる。その人形らしき何かは四肢が無いのにも関わらず首輪を繋がれ、魔王に頭を踏まれている。

「ストレスが溜まると我の力でいとも簡単にこのゴミどころか神建築の城までも破壊しかねないということだ。そこでだ、I。貴様の働きぶりは実に立派であった。貴様の作った防衛装置は我の無から作り出したテスト用の生命体を見事に殺した。我の能力では同等かそれ以上のものが出来るが、そもそも発想力が無いのでな。対策していてもアレを突破することは難しいだろう。だが我はストレスが溜まっている。なぜだ? 一度だけ発言権を与える」

「魔王様、ありがたき幸せでありm」


 その瞬間だった。魔王は踏んでいた足でIを蹴り飛ばす。首が千切れて頭が蹴鞠のように飛んで行く。

「口答えをするな!! この程度では腹の虫が収まらん!! 」

 魔王は理不尽にIの命を奪った。その直後にIを能力で蘇生させ、全く同じ四肢の無い人形が無から生成される。このように人形が増えていくのだった。

「てめぇのせいで魔王城が汚れるんだよ! 死ね! 死ね! 死ねええええええええええええええええ!!! 」

 魔王はIの殺害と蘇生を繰り返す。Iは口を開く隙すら与えてもらえずに新たな肉体を得て何度も何度も死ぬ。頭を蹴り飛ばされ、首を折られ、頭蓋骨ごと脳髄を踏み潰され、乳房を食い千切って干し肉のようにくちゃくちゃと噛み潰しては吐き捨てて踏み潰す。魔王は口周りが鮮血だらけになろうとお構いなしにむき出しになった胸骨と肋骨を砕きながら心臓を鷲掴みにして引き裂き、背骨を嘲笑いながら丁寧に一つ一つ手のひらで骨髄ごと粉々にする。その後に蘇生すると魔王は蘇生されたIに語り掛ける。

「貴様の体液で我の手が穢れた。貴様のようなゴミが我を生きていること自体が気色悪い。死ね」

 何度も何度もIを殺した魔王はIを何度も何度も殺す。魔王が飽きるまで何度も何度も殺す。Iは死と蘇生の度に苦痛が繰り返される。涙も悲鳴も出す暇すら与えない。

「……飽きた。我の力が強すぎて拷問には向いていないな。殺す度に蘇生させるのがめんどくさい。このゴミには城内の防衛をさせるには適しているが、外部には心許ない。そこでだ」


 魔王は新たに僕を作り出そうと考えた。Iは無傷のまま魔王の足元に放置されている。これほど酷い仕打ちを受けたのにも関わらずIの目には悪意や殺意は全く芽生えていない。自分を何度も殺してもらったことに感謝している。無視されるよりも道具として利用されたことをありがたく思う程度には洗脳されて作られているようだった。飽きるまで殺されたことの愉悦に浸っていると新たな魂入りの人形を作っている。

「魔王様、私めを創造して下さりありがとうございます。慈悲深き魔王様の僕として生を受けたことを誇りに思います」

 新たに作られた人形はIとは少しだけ顔の見た目が違う。だが魔王としては区別が付かなかったようで無言で何度か顔を蹴り飛ばしながら殺して作り直す。

「んー…こんなものか。さて、貴様も開口一番に忠誠の言葉を述べたわけだが、この程度では我の信用は獲得できない。その証拠に貴様の四肢は作り出していないし魔力を生み出すこともできない。貴様が我に反逆するだろうと見込んでいるからだ。そこでだ。貴様には我の信頼を獲得させるチャンスをやろう。この魔王城は防御能力が高い。だがそれは外部への情報が少なかったことが原因だ。そこでだ、貴様には外部の情報を収集する任務を与えよう。なお、我の名を広めるような行為、自分の存在の証拠を残すような行為は禁ずる」

「ありがたき幸せでございます。私めの力が魔王様のお役に立てるよう尽力致します」

「……? 我の作る僕はテンプレしか話せないのか? まぁいい……そうだな、外部での任務のため目立たないようにしなければならないな……いくつかの能力を与えるか」

「そ、そのようなことが許されるのですか!? 」

「今回は致し方ない。手足を与えなければ外部では異端と見られてしまうため調査に支障をきたすからな。貴様はそういう仕様に作るしかない」

「ありがたき幸せでございます。いくつもの力を頂いた御礼、必ず我が魔王様へお渡しいたします」

「そうだ、貴様にも名が必要だろう。そうだな…“外部調査仕様試作型1号”、やはり長いな…動くことも考えてP(リン)と名乗るがよい。なお貴様の得た情報は常時我に転送される。あとは…まぁいい。貴様は我の手足として活動するといい。そうだ、この機会にI、貴様にも手足を与えよう。城の周りの防御性能もさらに高めなければならないからな。貴様には引き続き城の防衛設備関連に関する任務を任せよう。貴様の肉体もアップグレードが必要だろう」

「ありがたき幸せでございます、魔王様」

 先ほどまで殺され続けたIとたった今作られたPの身体に手足が生えてくる。新たに作られた手足のつなぎ目はなく、最初から五体満足だったかのような全裸の美女になった。

「そうだ、服を着なければ外部では異端とされるからな。多少の準備が必要か。貴様らにはそれなりの服を用意しよう。それができ次第、Pは外部調査に行くがよい」

「ありがとうございます。我々は魔王様の手足となるべく生まれた存在。尽力させていただきます」


 魔王は二人に合った服を作り、Pをどこかへ転送した。Iは今までなかった手足を不思議に思っているのかまじまじと自分の手足を見ている。魔王はその様子を見て、仕事をしろと言わんばかりに自分の能力で生やした城外部の木々を消滅させた。それを見てIはロボットのように定型文を述べて外へ防御設備の設計と建築をしに行った。魔王の間に一人になった魔王はぼそりと呟く。

「それにしても何故あのような存在が生まれたのだ。勇者雷帝丸」

 魔王は玉座に腰を掛けて右手で額を当てて少し休んだ。



既になんとなくお分かりだと思いますが、この魔王はクソ野郎です。IやPたちが不憫でなりません。

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