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ベテラン勇者のおつかい  作者: Luoi-z-iouR(涙州 硫黄)
風穴の光
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風穴の光 ㉒当然の反抗期

「じゃあ次、コハクについてだ。あんたこれでも親だろ? 俺は親から勘当された身だが、男だし15歳だったしで生き伸びることはできた。だがコハクはそういう分けにもいかねぇ。俺のパーティにいても危険な目に合うし。どうするんだ? 」

 雷帝丸はコハクの今後についても問い詰める。雷帝丸はコハクの親でも保護者でも先生でもないが、自分の過去の境遇を振り返ると同じような目に合わせたくないという深層心理が働いている。しかしコハクの歳頃で既に勇者のパーティに加入して依頼を受けて生活している者もいることを雷帝丸は知っている。だが雷帝丸にとってコハクが自分の娘のように思えてしまう節もあってどうにか平和に暮らしてほしいという思いが無意識的に働いているのだ。

「とりあえず大学の寮にでも入ればいいじゃない。三食付きだし入寮した後でもコハクが豪遊して暮らしても余るほどお金も潤沢にある。それに私の娘よ? 最終的に私の右腕になるのだから問題ないわ」

「他人事みたいに言いやがってそれでも親か!? 最低だよあんた! 」

「あなたがそんなこと言う筋合いはないわ」

「確かに俺にはそんな筋合いはねぇ。だがそういうヤツがどんな風に生きていくのか俺は嫌というほど知ってるから言ってんだ! 当たり前だが子どもにとって親は選べないからこそ親は子どもの道しるべになるんだ。その役割を放棄して右腕にするとかほざくな! 」

フマルの楽観的な回答に雷帝丸は自分の親を思い浮かべる。雷帝丸の親もよい親ではなかった。

「子どももいないのにほざいているのはあなたでしょう」

「俺は生まれてそれほどしないうちに花農家の仕事をしていた。それが普通だと思っていたんだがそれは都合のいい労働力として使っていただけだった。兄弟含めて孤児の子どもたちを集めたと思ったら過酷な労働をさせ、ろくに食事を与えず勉強をさせず、挙句の果てには自身のプライドの問題で俺は家を追い出されたんだからな。子どもがいなくても親がクソだってことはわかるし、少なくともお前が良い親だとは見えねぇ」


 そんな雷帝丸の思いとは全く逆のことを考えていたのはコハク自身だった。コハクはついに口を開く。

「ママ、おじちゃん、コハクはしばらくおじちゃんのパーティでお世話になるよ」

「何を言っているのコハク! 早くママを助けて!! 」

「コハクは魔女を助けるほど落ちぶれた魔術師はやってないよ。この一年で旅をしてきてたくさんの人に助けてもらったの。コハクはまだ何もできない。自立は出来ないけれどコハクはママにはもう頼れない。大学にも休学届を出して魔王討伐に行ってきて、大学の卒業課程をこなして、風の国を出ていく」

「そんなことをして何になるの」

「少なくともママからは離れられる。ママとはもう関わりたくない」

「コハク! いうことを聞きなさい!! 」

「ママは…いや、あなたは“魔女”だ」

 コハクは母を冷たい声で突き放す。母への信頼は完全に地に落ちてしまった。フマルは自分の娘が自分の言うことを聞かないせいでイラつきが加速する。

「コハク、せめて大学で世話になる方がいいんじゃねぇのか? 」

「いや、これまで襲ってきた魔術師たちはほとんどコハクの知り合いだったよ。友達や先生、先輩後輩関係なくいたの」

「はぁ!? あいつらみんな!? 」

「うん。研究所にいた魔術師たちも研究員のクローン? だったし。多分魔女が築き上げた技術をいくつか使ってあの研究所から大学内、街の地下街までこのオキシ全体に魔女の手が伸びてる。だからこの街にいたくないの」

「早めの反抗期かしら…ホントに世俗的ね」

 フマルは呆れて言葉が出ないがフマルの狙いは自分の駒として欲しいだけである。それを見越しているのかコハクは母を拒絶している。一方雷帝丸は完全に呆れてしまって頭を抱えている。


「娘を何だと思ってんだこの女。……って、え? は? コハク? 」

「コハクも勝手なことしてると思うけれど、コハクはおじちゃんのパーティにお世話になりたい。おじちゃんのパーティに魔術師がいないからコハクが助けたい。でもコハクじゃかえって迷惑かな…」

「うっ…」

 コハクは雷帝丸に正式にパーティメンバーにしてほしいとお願いをしてきた。まだ9歳の少女が信頼していた母に裏切られたせいもあるのか、少し涙が浮かぶ目をしている。

「俺からしたらありがたい限りなんだが、いろいろ問題があるなぁ。生活費もそうだし、俺が世話できるとも思えねぇし、今後の俺のパーティの目標も魔王討伐だから危険すぎてコハクにその手伝いなんてさせられないし、何より勇者稼業はあぶねぇし」

「それならあたしが引き受けるわ」

 これまでずっと黙っていたシクロがようやく口を開く。今までに見たことが無いような決意がある目をしていた。

「シクロ? 」

「あたしがコハクちゃんの生活のサポートをするわ。女の子同士の方が何かとできるしお風呂一緒に入れるし添い寝できるしぺろぺろできるしぐへへへへへへへへへへ」

「コイツに任せたらやべぇ!!! 」

「おねぇちゃんいるならもっと安心だね! 」

「安心できねぇ!! 」


 雷帝丸は悩みの種が増えてさらに頭を抱える。シクロが物理的な攻撃力が高くてシクロは魔術的な攻撃力が高いため、加われば雷帝丸自身が防御力を底上げできれば魔王討伐に関して攻防のバランスがかなり良くなる。しかし、幼い女の子を抱えた状態では安全確認は今まで以上に慎重に重点的にしなければならないため、雷帝丸にとってはコハクがパーティに正式に加わることは手放しには喜べない。

「コハクもこう言ってることだし、ね? お願いよ。子どもの言うことでしょう? 」

「都合よく母親ズラして俺に自分の娘を押し付けようとすんな。ホントに母親かあんた。大学生なら寮に住めればいいだろう。コハクなら優等生だから優遇してくれるだろ? 」

「おじちゃん、コハクはおじちゃんのところにいちゃダメ……? 」

「うっ……」

「そうよ、コハクちゃんのことはあたしだっているんだし女の子同士だから何したって合法、何一つ問題ないっ! 」

「シクロも問題抱えてるだろうが。はぁ……わかったわかった、だが俺たちの目標は魔王討伐だ。かなり危険だからな? 」

「やったー! おじちゃんともおねぇちゃんとも、これからも一緒だね! 」

 半目でシクロに指摘してため息をつく雷帝丸だが、仕方ないと割り切ったのか大人しく折れてコハクを受け入れることにした。元々雷帝丸にとってはコハクをこの風の国にいる母親の元まで送り届けることが目的だったのだが、母親もこうなってしまった以上仕方ない。だがただでは起き上がるまいと雷帝丸は頭を捻る。

「はぁ……。だが俺らだけじゃいろいろ限界がある。コハクを入れても俺のパーティは3人しかいない。そこでだ、いくつかお前と取引をしたい」

「おじちゃん!? それじゃコハクがおじちゃんのパーティに入る意味がないじゃん!? 」

「コハクは納得いかないだろうが、花の国には資金も戦力も無いんだ。他国に頼るってのも花の国から直接の依頼だから変に他の国に頼るわけにもいかないからな」

 コハクは嫌がっているが、魔王討伐のためとはいえ他国に直接頼ることはその時の現場の人間は良くても各国の役人が良しとしない。現場の人間はちゃんと理解させてもらえないのが世の常であるため、雷帝丸も当然なぜ協力してはならないのかあまりちゃんと理解できていない。

「あら、ちゃんとわかってるじゃない。牢屋から出してくれるの? 」

「それはしねーよ反省しろよ。だが……」

 その後、日が沈んだ後も話は続いた。話だけで数時間が経過し、ようやく話しが終わるところだった。すっかり3人は座り込み、コハクはうつらうつらと船を漕ぐ。

「はぁ…もう疲れた。最後になったが、なんでお前がこの世界のためにヒソヒソとしてまで守ろうと思ったんだ?さんざん痛い目に合ってきたはずだろう」

「私の生まれたこの世界を愛さないなんてことは、私にはできなかった。ただそれだけよ」

「そうか……あ、そうだ、明日になるんだが、もう一度ここに来るからよろしく」

「え、えぇ。また明日」

 雷帝丸は意味深にまた来ることを伝え、コハクを起こして二人を連れて病院へ帰って行った。



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