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ベテラン勇者のおつかい  作者: Luoi-z-iouR(涙州 硫黄)
風穴の光
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風穴の光 ⑳再会

 崩落した天井が瓦礫となり父親と娘に襲い掛かった。雷帝丸もコハクも瓦礫の崩落に反応することが出来なかった。誰も助けることが出来ず、最悪の結果を招くことになった。

「やっと見てくれたな…アミー……」

 瓦礫の下にはラクトがいた。不幸にもラクトの身体は瓦礫に下半身を押し潰されて上半身しか残っていない。無事だった上半身もアミーの魔術で腹や胸に風穴を開けられて血を吐き出し、目を串刺しにされたことで視力も失っている。

「おとうさん…」

 ラクトの命がけの体当たりの甲斐あってかアミーは無事だった。アミーの赤黒く潤んだ目は涙が零れてすぅっと元の色に戻ってゆく。赤黒い涙がぽたぽたと落ち、ラクトは命を振り絞って掠れた声で語り掛ける。


「はは…やっと見られた娘の顔が泣き顔なんて、まるで赤ん坊のままじゃないか…」

「おとうさ…ごめ…ごめんなさい……!! 」

「泣くな泣くな…ぐほっ……まったく、早い反抗期だったこと。……長年待ち焦がれた娘の顔を見るのに…命なんて惜しくない…そのために10年生きてきたからさ、笑ってくれよ、アミー……」

「おとうさん…おとうさん……! 」

「やっぱり娘には笑っていてもらいたいものだな…」

 ラクトは視力を失おうとも死が近づこうとも恐れずに、やっとの思いで出会うことができた自分の娘の笑顔を求めた。そして涙でする娘の笑顔を最後に、ラクトはかつての相棒の元へと旅立ったのだった。

(やっぱり口よりも身体が動く辺り、俺は“魔術師”じゃなくて“勇者”なんだなぁ。まぁ、最後に娘の笑顔が見れたんだ。悔いはないさ……)








「……ここは? 」

「あ……! 」

 雲海が広がるこの場所には二人の男がいる。この二人は10年前に生き別れてしまった相棒である。片方の男は長いことこの場所にいたようだが、もう片方の男は今来たところだった。


「お前がいるってことは、俺はもう……」

「えへへ、最期までよくがんばったね。おつかれさま、ラクト」

「頭撫でんなよアスコル! 子どもじゃあるまいし……でも、10年ぶりだな、相棒」

「もう。すんごい待ったけど、もっと遅くてもよかったんだよ? 」

「地面にお絵描きしてるくらいにはヒマそうじゃねぇか」

「こ、これは、あー…あれだよ? 新種の魔術の研究だよ? 」

「うそつけ! 娘に影響されて『ちゃおっす! くまじろう』のキャラクターが落書きされてるじゃねぇか! しかもお子さまクオリティ! お前もっと絵描くの上手かっただろ!? 」

「だって! せっかく娘のことが見れるんだから、こっちに来た後でも向こうのことが気になっちゃうじゃん! 」

「え? 見られるのか? 向こうの世界が? 」

「そうだよ~。最初はびっくりしちゃった。でもここから空は見えにくくてね。というかここ空だし。まぁそのせいで俺の研究してた星と魔術の関係性の研究はなぁんにもできなかったの! 」

「その話だが、どうやら魔術は星じゃなくて悪魔が関係するらしいぞ」

「知ってるよ! ねぇねぇねぇねぇ聞いてよ聞いてよ! うちの子が魔術の革命を起こしたんだよ! すごいことじゃんか! ぎゅーッて抱きしめて褒めてあげたいよぉぉぉ! 」

「意外と親バカなんだなお前」

「親が親バカなのは当たり前だよ! 」

「そ、そういうもんなのか? いや、俺は多分違うけど」

「娘をちゃんと見てから来たし看取られたんだからいいじゃないか! 羨ましいもぉん! 」

「娘に殺されたんですけど? 」

「会えないよりはいいじゃんか。俺なんて生前に会えなかったんだから! 娘を作る材料にされるために殺されたんだから童貞のままだし!! 永遠に魔術師だよ!! ……あれ? 永遠に『流星(ミーティア)()魔術師(ソーサラー)』ってことになるの? 」

「はぁ…お互い様ってことにしておくよ」

「そういうことにしておこう」


 ラクトとアスコルは10年の月日が経過しても関係は変わらなかった。不変の絆はここに確かに健在している。それをかつてと変わらない会話で二人はそれぞれ噛みしめる。すると翼が生えた馬が引く馬車が少し遠くからやってくる。

「さて、お迎えが来たよ。ここもいい場所だけど、この馬車に乗ってごはん食べに行こう! いいお店知ってるからおいしいごはんでも食べながら、この後の世界をじっくり見てようよ! 旧世界の料理でハンバーグって言う肉料理がおいしくておいしくて!! 今日は俺の奢りにしとくからさ! いろいろ手続きしないといけないけどそんなもの後回しだよ! 」

「なんか10年も娘に付きっきりだったせいか精神年齢が更に子どもになってない? すんごい満面の笑みなんだけど」

「うーん、そうかも。元々子どもっぽいって言われてたのに、これじゃ9歳の女の子の保護者とは思えないよ……って話は置いといて、こっちに来ちゃったパパとしての使命を果たすよ。二人の自慢の娘がどんな活躍をして、どんな一生を過ごして、どんな顔してこっちに来るのか見届けてあげなきゃ。それがこっちに来ちゃったパパの使命だよ」

 フンスっと鼻息を立てながら相棒に今後の生活について話す。ラクトはそんなアスコルを見て自分がこれまでにやってきたこととやり残してしまったことを振り返るが、今の二人にはどうにもならないと前を向く。

「……もっといっぱい教えてあげたいこと…やってあげたいこと…いろいろあったけど、それはこっちに来てからでも悪くないか。いや、やっぱできるだけ遅く来てほしいな」

「そうだねぇ。俺たち二人ともお嫁さんも一人娘も残してきちゃったけど、ゆっくりしてからこっちに来るのがいいよ。あ、でも俺のお嫁さんは魔女だから近いうちにこっちにくるかな? 」

「その時はモーニングスターで一発ぶん殴ってやる! 」

「確かに魔女だけどやめたげてよぉ!? 」

「こいつがいろいろやらかしたからいろんな問題が出てきたんだろうが! 最終的に俺たち討伐も失敗したし! 」

「一応彼女なりに世の中を何とかしようとしていたらしいんだ。俺も殺された時はわからなかったけど、死んだ後でその謎が解けたよ。俺もまだ納得してないけどね」

「そういうものなのか……そこは相棒の言うことを信じよう」

「さっすが相棒! 大好き! ちゅー! 」

「ガキか!! それに俺はホモじゃねぇ!! 」


 二人は馬車に乗り込み街へ向かう。彼らの旅はこうしてようやく終わったのだった。残された人たちをゆっくりと待ち続けることが先に亡くなった者の役目なんだと二人は意気込んでいて、二人の魂は生き続けるのだった。



10年越しの相棒との再会を果たしたラクトさんでした。きっと相棒と共に娘たちを見守っていてくれるでしょう。ラクトさん、お疲れ様でした。

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