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ベテラン勇者のおつかい  作者: Luoi-z-iouR(涙州 硫黄)
風穴の光
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風穴の光 番外編 ラクトとコハクの出会い

コハクちゃんとラクトが出会ってから雷帝丸に加勢するまでの話を簡単に書きました。番外編というか補完みたいなものだと思って読んでください。

「もしもし? 」

「君はコハク・ウィザーグリフだな? 」

「うん、そうだよ」

「連絡が取れてよかった! 俺はラクト・ヤタノコマイヌという者だ」

「……え…? え? だってあなたは……!! 本当にラクト・ヤタノコマイヌさんならアミーのパパじゃん!! 行方不明になってる『武具(アタック)()勇者(メイル)』で、アミーのパパじゃん!!? 」

 そう、アミーの父親であるラクトはアミーやコハクが生まれる前から行方不明である。アミーからラクトが行方不明になっていることは知っていたが、幼女二人にとっては本当に父親がいるのであれば衝撃の事実となる。


「アミー!? アミーの、俺の娘の友達なのか!!? 」

「うん! コハクのパパはお星さまになって見守ってくれてるけど、アミーのパパはきっと生きてるって! 」

「アスコル…やっぱりそうか。君がアスコルから作られたホムンクルス……! 」

「ほむん…?」

「とにかく、今いる場所から動けないんだ。君にはこちらに来てほしい。場所はここだから、入り口に来たらもう一度俺に連絡をくれ。頼んだよ」

 アスコルはわずかな希望を少女に託す。魔法陣に地下街への地図を転送し、その入り口へ誘導する。


 数十分後


「来たよ~…ってあれ? 」

「おまたせ、君がコハクちゃんだね……」

「うん。まさかアミーのパパがこんなところにいるとは思わなかったよ。」

「やっぱり…その顔、目付き、話し方、雰囲気…どことなくアスコルと似ている。そして何より、わずかに漏れ出る魔力の波長がアスコルの物だ。本当にアスコルへのエマージェンシーで通じるとは思わなかったけど本当に良かった……ん? 記憶操作された痕跡がある…? 」

「どうしたの? おじちゃんがアミーのパパ、ラクトさんでいいんだよね? 出かけたらなんか大学がボロボロになってたのはびっくりしたけど何かあったの? 」

「あ、あぁ。俺が連絡したラクト・ヤタノコマイヌだ。あれだけ大きな爆発があったのに知らないのか? 」

「え? そんなことあったの? …アミーのパパ、その剣見たことある。アミーのパパの物? 」

「この剣? これはある勇者がさっきまで持っていたであろう剣なんだ。昨夜の爆発でここまで飛んできたから、その勇者に危険が生じたんだろうと思って持っていたんだ。見覚えがあるのか? 」

「うーん…見たことあるようなないような…? 」

「……やっぱり何かおかしい、一度君にかかっている魔術を見せてくれ…『コール…』」



「……じ、時間かかった…。」

 コハクの記憶が書き換えられていることを見抜いたラクトは元勇者のいる部屋に連れ込み、急遽記憶の書き換えを元に戻したのだった。

「記憶操作の魔術なんて難しすぎる。でも記憶消去の魔術じゃなくてよかった。完全に消したらかえって不自然な記憶になるから都合のいい記憶にすれば怪しまれない。元の記憶を完全に消されてたら俺たちじゃどうすることもできなかった。この地下で元勇者総動員で本気で魔術を使うなんて久しぶりすぎて大変だったよ…あぁ、アスコルなら一瞬で終わったんだろうなぁ…」

「おじちゃん…この剣はおじちゃんの剣…でもなんでだろ?おじちゃん…おねぇちゃん…なんで忘れてたんだろ…。しかもコハクはアミーに負けた。おじちゃんも多分負けた。おねぇちゃんも操られていたかもしれない。なんでわからなかったの…」

「それは記憶を書き換えられていたからだ。今回は封印されていたって言った方が正しいかな?まぁそれは置いといて、ホムンクルスとやらの性質は生まれ方以外は割と普通の人間っぽいな…。しかもこの子がアスコルを生贄にして作られた子…というかあの爆発は君がやったのかよ」

「ねぇ、さっきから言ってるアスコルってコハクのパパのことなの? 」

「あぁ。君のお父さん、でいいのかな? 厳密には違うとは思うけどこの際いいや。俺のたった一人の親友で相棒だった大切な人だったんだ」

 アスコルの面影をコハクに重ねるラクト。相棒ではないが相棒が隣にいる気がして、二人とも変わり果てた姿になってしまったなと今と昔を見つめていた。



「作戦を立てるのはアスコルがいつもやってたから難しいけど、アスコルならやりそうな作戦を立てたからその通りに動いてほしい」

 ラクトはアスコルと共に受けていた依頼を10年越しに達成するため、確実に危険に晒されているであろう後輩勇者を救うため、雷帝丸に加勢する作戦を立てる。

「うん。パパってどんな作戦立ててたの? 」

「きっとアスコルならみんなが無事に帰ってこられるような作戦を考えると思うんだ。そのためにはより成功率と生存率の高いやり方をするけどやることは簡単だよ。コハクちゃんはあの魔女…って言うのは良くないな。お母さんの動きを止めてほしいんだ。きっと勇者サンダーボルトがボロボロになりながら、装備を失っても戦っている。勇者サンダーボルトを守りつつお母さんを止めてくれ」

「サンダーボルト? おじちゃんじゃん! おじちゃんがママと戦ってるの!? 」

「おじちゃん? 知り合いかい? 」

「うん。記憶が戻ったから思い出したけどおじちゃんはコハクとちょっとだけ旅をした人なんだ」

「……今さらだけど大人として子どもを巻き込むのは良くないんだけどこの際こんなこと言っていられない。情けない大人で申し訳ない! 恥を忍んで君にお願いしたい! アミーを、勇者雷帝丸を、俺たち元勇者を救ってほしい! 君のお母さんを止めてほしい!! 」


 ラクトは半泣きになりながら土下座をする。ヤタノコマイヌ家などの一部の名家に伝わっていた命をかけた謝罪、及びお願いの動作である。コハクはそんなことは全く知らないのだが、両腕を大きく広げて快く受け入れた。

「うん! いいよ! ママが魔女なんて信じられないけどそれを確かめたいし、アミーもおじちゃんたちも、みんなみーーーんな助けたい! 」

 コハクは子どもらしく願いを叶えたいと心から願う。コハクはまだ本格的に挫けたことはない。故に大きな願いが簡単に口から出てくるのかもしれない。だがその子どもらしい姿がラクトにとっては救いであり、やはりアスコルの生まれ変わりなんだと感じざるを得なかった。



 元勇者たちはコハクとラクトを含めて総勢13名。10年前と比べて半分以下の人数になってしまったが今こそが反逆の時だと立ち上がる。ラクトは右手にメイス型のモーニングスター、左手には錬金術が瞬時にできるように仕込んだ手袋を付けていて、その左手には雷帝丸の剣が握られている。

「ラクトのボウズ、俺たちじゃぁ魔術師の足止めが限界だろう。一番強い元勇者は確実にボウズだ。道は開けてやるから頼んだぜ」

「ボウズ。俺たちのこと助けてくれてありがとな。みんな絶対に生きて帰るからよ」

「そうだ! 俺たちが生きて帰って来たら豪勢なメシを食おうぜ! 」

「それいいな! 長年禁酒したんだから一生分の酒を身体にぶち込んでやるぜ! ガハハハハ!! 」

「葉巻も頼むぜボウズ! 世界中の葉巻が吸いてぇが、バニラフレーバーのヤツは絶対な! 」

「おいおい、そこはやべぇハーブだろうが! 」

「お前まだヤクのこと諦めてなかったのかよ!? 」

副リーダー的役割を果たす髭を蓄えた中年男性のプロピレンがラクトに話をする。続けて他の元勇者たちがラクトに脱出した後の宴会に必要な物をワイワイと勝手に注文してゆく。緊張感の無さにラクトは少し頭を抱えつつも少しだけ懐かしさに浸ってにやけていた。

「おう! 可能な限り用意してやるから帰ってからな! 行くぞおらああああああああああ!!!!! 」

「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!! 」」」」」

 一番前にいるラクトが研究所の扉をモーニングスターで破壊し、それを皮切りに総勢13名が派手に侵入する。

「わぁああああああ!!? 」

「ただですら忙しいのに…ぐはっ! 」

 魔術師は戦闘方法の都合上急襲や不意打ちに弱い。それに加えて近距離での攻撃に対応しきれない場合も多い。さらにラクトはこの場にいる魔術師は研究員も多いことがわかっているため、予めどのように行動を封じられるのかを全員に教えられるだけ教えていた。

「行け野郎共! ボウズに嬢ちゃん! サンダーボルトを救うんだ!! 」

「ありがとうプロピレン! コハクちゃん、行こう! 」

「うん! ……サンダーボルト?」

「え? 違うのか? 」

「他の人は雷帝丸って言ってたよ」

「偽名だったか…そっちは忌み名かもしれないな」


 プロピレンたちの援護の甲斐あってラクトとコハクは雷帝丸たちが戦っているすぐ上の部屋に来ていた。ここまでの魔術師たちを多く行動不能にできた。プロピレンたちは無事だと信じて二人は雷帝丸に加勢するために床の破壊をするために回りを見渡す。

「この下だよ! 」

「コハクちゃんは探知能力まで高くてすげぇ…前来たときは魔術が使えなかったはずなんだけど、誰かがこんなにあちこちぶっ壊してたおかげなのか普通に魔術が使える…まぁいい。魔術が使えるのならコハクちゃんにとっては追い風だ……ここは実験室なのか?何かの機械があ」

###

***

「るな…!? あの感覚!? 」

「あ! おじちゃんが危ない! 凍ってる!! 」

「まずい! コハクちゃん! 雷帝丸はどのあたりだ!? 」

「ここ! 」

 コハクはラクトの後ろから魔術でサッと雷帝丸のいる頭上に相当する床にマークを付ける。そのマークはかつて何度も見てきた5つの角がある黄色いマークだった。偶然なのか必然なのか、そのマークはアスコルがよく使っていた、あの時も使っていたマークだった。

「お、おう! うおおおおおおおおおおおお!! 」

 右手のメイス型のモーニングスターをそのマークの手前に叩きつける。さらに錬金術で威力を増幅させるために左手で床の素材を脆く分解、同時に鉄球をフレイル状に変形、同時に無詠唱で鉄球を加速させたことで床を簡単に破壊した。

「!!? 」

「きゃっ!? 」

「おわぁ!!? 」

(距離が開いた!? というか何かデカい塊が目の前に落ちてきた? これは…めちゃくちゃ長い鎖に繋がれた棘付き鉄球…モーニングスター? )

雷帝丸からは天井にできた大穴から二人の影が見えた。一人はとんがり帽子を被った2本の大きな杖を両手に持つ幼女、もう一人は成人男性ではあるが、やせ細っていて武器を過剰に持ち合わせているせいか防具を身につけていない。この男がモーニングスターを放ったのだ。

「ま、まさか…!? お前は!!? 」

「……あなたと会うのは10年ぶりね。『武具(アタック)()勇者(メイル)』」

「相棒の敵討ちしに相棒を連れてきたぜ、魔女さん。それと……遅くなったな、後輩」

「ら、ら……ラクトぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!! 」




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