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ベテラン勇者のおつかい  作者: Luoi-z-iouR(涙州 硫黄)
風穴の光
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風穴の光 ⑲時を破る勇者

 フマルは時間停止の魔術と祈りと魔力を基に超常現象を起こす祈祷術で300年を生き抜いた。100年でようやく時間停止の魔術で得た未来の景色を見た。200年でこの研究室を現在の状態まで拡張し、研究も最終段階一歩手前まで来ていた。だが優秀な勇者は現れなかった。ホムンクルスは材料となる人間の才能によって強さが変わる。フマルは未来を変える、あるいは立ち向かうつもりだった。優秀な才能を持った勇者を基にさらに優秀なホムンクルスを作りたかったのだ。時間停止には魔力にも時間にも限界がある。たった一人では限界がある。それでも賛同する者は少なく、いてもその未来が来る前に死ぬ。だから自分が生きられる間に対策をするしかなかった。

(時間が止まってほしいと本気で思ったのは300年振りね…)


 一方雷帝丸は未だになぜ自分だけが動けるのか理解は出来ていないが時間停止中でも自分だけが動けることはわかっている。その自分だけ動けるという自覚が雷帝丸の限界を超え……

「うおおおおおおおおおおおおお!!! 」

 ついに止まった時間の中で完全に動けるようになった。回復したとはいえ最低限の治療をしただけの気休め程度。先ほどまで内臓を破壊させられていた雷帝丸はすでに体力も気力も限界。それでもフマルに飛び掛かってくらいつく。

「とりゃあああああああ!!! 」

「ひゃぁあ!? っこの劣悪素材がぁ!! 私に触るなぁ!! 」

 雷帝丸はフマルの頭上をとび越えて前方宙返りひねりでそのまま背後を取り、フマルの両脇に腕を通して羽交い絞めにする。その一連の出来事でフマルが驚き、時間停止を解いてしまう。

***


「コハク! ありったけをかませぇぇぇぇぇぇぇぇ!!! 」

フマルの身長はコハクよりも多少大きい程度で力もないので簡単に拘束できた。

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!! 」

 コハクは本気の一撃を放つ準備をしている。その証拠にこれまでに見たことのないほど魔力を自分の周りに放ち、悪魔を呼び寄せる。これだけでも並の魔術師なら吹き飛ばされるくらいの風が吹き荒れる。コハクは正面に現れた魔法陣には魔術の文字が細かくびっしりと書き込まれ、魔法陣の大きさはコハクの身長以上に大きく、正面からはコハクが隠れるほどだった。今度こそ自分でも防ぎきれない攻撃が来ると察知するフマル。もがきながらも最後の時間停止の魔術を使用し、止まった時間の中で別の魔術を唱え、雷帝丸の羽交い絞めを解こうとする。


###

「離せ!! 『インパ…』」

「ふんっ!! 」

「っ!!? 」

 しかし、時間を止める魔術以外の魔術を無詠唱で使えないフマルは時間を止めようとも魔術を唱えようとも、羽交い絞めする雷帝丸に頭を両方の手のひらでがっちりと掴まれた挙句、後頭部に頭突きをされて魔術の発動を防がれてしまう。

「クソガキが! 離せ!! 踏み潰してやる!!! 」

 もみくちゃになっている間にフマルは雷帝丸の股間目掛けて踵で蹴り、足の裏で踏みつける。だが雷帝丸は痛がる素振りすら見せない。

「くそ! 離せ! なんで無反応なのよ! 」

「ち○この潰された俺にはそんなもん痛くも痒くもねぇ! おらぁ! 」

「うぐっ!? 」

***


 もう一度後頭部を頭突きされて時間停止の魔術が解かれ、魔術を放つ態勢のコハクが動き出す。

「今だ!! 」

「『エクストリームスター』!!! 」

 コハクは流れ星を召喚する魔術を使用した。魔法陣の中心から隕石が流れ星のようにフマルと雷帝丸に向かって一直線に飛んでくる。二人は動き出した流れ星に巻き込まれて壁に叩きつけられて雷帝丸が壁にねじ込まれる。

「自分を囮に自分ごと……」

「俺は仲間の攻撃なら、モロに喰らっても生き残る!……ごふっ…」

 隕石が光となって消え、フマルが雷帝丸の拘束から解放されて膝から崩れ落ちる。


「おじちゃん!ママ!」

 コハクの魔術が雷帝丸とフマルに命中してフマルが倒れ、雷帝丸は壁の中にいるせいで身動きが全く取れない。二人とも死にかけているが、雷帝丸の意識ははっきりしている。フマルはあらかじめ魔術攻撃の耐性を上げる魔術で防御力を底上げしていたのか目立った外傷がない。だが気絶していて戦闘不能である。ぱっと見では雷帝丸の方が重症である。

「いてて……何とかなったか……あ、全身痛い。なんか骨が折れてるっぽい感じする」

「おじちゃん! ママは? 」

「大丈夫だ。身体がデカい俺の方がダメージ大きい気がするけど、気絶させるだけで済んだ…」

 二人に駆け寄るコハクは母の様子を少し確認すると、何事もなかったかのように雷帝丸の治療を開始する。雷帝丸の折れているであろう骨も簡単に治療出来てしまう。コハクは魔術で骨折程度の怪我や外傷なら短時間で治療できるらしく、雷帝丸はみるみるうちに傷が癒えていく。そんなコハクは今の技について軽く解説する。


「でもママはすごいね。コハクの新必殺技パート1は本来広範囲にいっぱい攻撃できる魔術を小さい範囲に絞ることで威力を高めた一撃。簡単には防御できないのに受け止めたんだもん。ママがあらかじめかけてた防御の魔術がなければママもおじちゃんも胴体がちぎれて頭と手足が飛び散るくらいの力で撃ったのに」

「手加減知らなすぎじゃないかなぁ!? 今回は結果オーライだけど!! 」

「ちなみに同じ隕石を使った魔術は別にあるけど、今回のはコハクが今見つけた魔術を使ってみたよ。多分コハクが一人相手に使える最高火力の魔術だったし」

「しれっと天才肌なのホントやべーわこの小学生」

 戦闘がひとまず終わったところで雷帝丸とコハクが勝利を手にした。雷帝丸はその場で倒れ、コハクは母であるフマルの様子を見ながら雷帝丸のことも心配する。一方で、決着が着いていないラクトとアミーはまだ戦い続けていた。雷帝丸はその戦場の天井が崩れかけていることに気が付いた。

「っ!!! 」


  ラクトはアミーに向かって走り出す。それと同時に天井が崩れてしまう。ラクトは天井が崩れて下敷きにならないようにアミーに向かって走り出したが、アミーが自分に攻撃を仕掛けてきたと勘違いし、返り討ちにしようと魔術を自分にかける。

「っ!『ニードル』」

 アミーは天井が崩れたことに気が付かずに防御の魔術を仕掛けるが、崩れてきた天井の瓦礫から守るものではなく突っ込んでくるラクトの攻撃から身を守るものだった。『ニードル』によって自分のマントを毬栗のような棘だらけの鎧にするが、ラクトはそのまま突撃する。自分の娘の命の危機に冷静な判断ができないのかそのまま瓦礫とアミーに突っ込む姿を見た雷帝丸は倒れているため見えていても反応できず、コハクは気が付いていない。

「ラクトぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!! 」

「えっ……アミー? 」

二人の叫びも虚しく、ラクトとアミーは落ちてきた瓦礫に埋もれ、土煙を立てて姿を隠してしまった。



ついに魔女フマルとの闘いが終わりました!しかしラクトとアミーの戦いは終わっていないので風穴の光はまだ少し続きます。次回はちょろっと番外編になるかもしれません。

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