花の国 番外編 執事長ベンゼン
ベンゼンは若き頃…と言っても40代の頃。今は行方不明の国王と女王のパーティに参加していて、魔王討伐を経験したこともある。その魔王は現在のブルーミアの城を築き上げてアジトにしていたのだが、当時のパーティで出来ることを精一杯やり遂げて花の国が焼け野原になるのを止めた後に城を改築して30年の時が経過した。国土の多くが焼け野原となってしまったが、当時の国民は魔王が討伐されて平和が戻って来たことに歓喜していた。現在は70を超えるため魔王討伐に行っても足手まといになってしまうという姫や国王の考えや城での仕事などのために城で待機することになった。やり手の魔術師兼錬金術師ではあるが、さすがに老いには勝てなかったのだろう。現にベンゼンは若いころよりも体調が優れない。ここで話すことでもないが、魔術師と錬金術師は力の根源は同じ“魔力”だがやっていることは違う。かなり後になってから詳しく登場するが、魔術師は超常現象を起こすことができる“魔術”を、錬金術師は材料や道具をかき集めて物質を変化させて道具を作ったり改造したりする“錬金術”を使う。魔術は人体や生物にも影響を及ぼすが、錬金術は人体や生物には影響を及ぼさない。ただし、魔術も直接影響を及ぼす洗脳などはそうそうできるものではない。それはかなり後になってから詳しく出てくるので忘れてしまっても構わない。
さて、そんな魔術も錬金術も使用できるベンゼンは、雷帝丸の装備の錬金術の際に違和感を覚えていた。素材は倉庫の中にあった余り物、要はガラクタを使って装備を補修、強化していたのだが違和感があった。しかし失敗したというわけではない。錬金術は使用する地面に円形に書く術式と素材によって新たなものを生成したり、強化や修理をしたりすることが主な使い道である。今回使用した術式の内容は装備の修理と強化を混ぜたオリジナルの術式。これは現役時代に何度も使用した術式のため間違いはない。となると素材に原因があるのだが、素材として使用した倉庫の余り物は大したものではない。それでも装備の修復と強化に見合う術式を書いたはずである。そういうことになると最後に残された違和感の可能性は雷帝丸の装備のどれかが異質なものであることになる。装備の強化や修復に失敗したわけではない。何か違和感があった。そんな疑問を残しながら勇者を見送ったベンゼンであった。
雷帝丸が旅立ち、姿が見えなくなる頃、ベンゼンは肝心なことを思い出す。
「そういえば、ワシの能力は姫様が知る通り『錬金術ができる』能力じゃ。だから魔術師でありながらも錬金術ができたのじゃ。しかし雷帝丸殿の『能力』を聞き忘れてしまったのじゃ。姫様は知っておられるか? 」
「……『道端でコインをたまに拾える』能力」
「……期待外れじゃったかもしれん」
執事長として、人選を誤ったかもしれない。そう思ったベンゼンだった。
……期待外れじゃったかもしれん。




