風穴の光 ⑬うまくいかない作戦
雷帝丸とラクトは剣と鉄球をフマルに向ける。そのそばにはコハクが二本の杖を構えて準備は出来ている。二人は簡単に作戦を整えて短期決戦に持ち込むつもりである。
「あぁ…そういうことね…」
雷帝丸はラクトから剣を受け取って構え、ラクトは左の手袋に書かれた魔法陣を介してモーニングスターの鉄球を棘付きグローブ状に変形させて左手に装着する。反対側は鎖分銅に変形させてアミーを捕縛するつもりである。雷帝丸の剣を見たフマルは一人で何かに納得したと思ったらアミーを近くに呼び寄せて、耳打ちをするようにアミーに指示を出す。
「この男二人は任せる。私の魔術では勝てない可能性がある」
「そんな!? あの男たちに!? 」
見えない目でアミーに訴えかけるフマル。こんな表情の主任を見たことが無いと怯むが、余程の事態であるのだとアミーなりにすぐに解釈して回答する。
「…かしこまりました」
(あの剣…最悪ね。あの男が動けたのはあの剣の使用者にかかる『呪い』によって抵抗力があるからとみていいでしょう。だからあの男は私の魔術を破ることができた。まさか失われたはずの魔剣を持っていたとは思わなかった…。あの剣を“預かっていた”という武具の勇者も危険。あの魔術の代償で詠唱無しの魔術をほとんど使えない私じゃなおさら勝てない…!! この状況、圧倒的に私が不利!! とにかく私にとっては危険!! )
双方の作戦が決まった。雷帝丸やラクトは短期決戦で、アミーやフマルは立場上勇者たちを生け捕りにする作戦である。コハクはシクロの様子を確認してから自分の母親に向かってほうき星ときらきら星を構えて戦闘準備完了である。コハクは自分の母親に何があったのかはラクトからわかる範囲で聞いているため、余計に母親に対する憎しみが余計に増えている。
「どらぁ! 」
最初に動いたのはラクトだった。右手にある鎖分銅を軽く振り回してアミーに突進する。
「『ブリザード』…!? 」
「この程度か! 」
氷の礫が混ざった風で迎え撃つアミーだが、ラクトの実力は只者ではなかった。振り回した鎖分銅を盾にそれを打ち払う。
「『フレイム』」
アミーは次の手段として両手でやっと投げられる程度の大きさの火球を放つ。だが今度は左手のグローブで火球を殴りつけてアミーに返却する。アミーは予想外の反撃にも関わらず間一髪のところで右半身を捻って躱す。
「ッ!!! 」
「効かないな! 俺の娘ならもっとパワフルでもおかしくないんだぜ! 」
「アミーのパパすごい! アミーのいつもの魔術よりも強力なのに簡単に弾いてる! 」
「弱っていてもあの動きと力か。魔術を知りつくした勇者だったから出来る芸当かもしれねぇな…って関心してる場合じゃねぇ。ラクトがアミーを抑えてる間に俺たちはこっちに集中だ! 」
「うん! おじちゃん、ママの暴走を止めるの手伝って! 」
雷帝丸はコハクと共にフマルに挑む。だが、雷帝丸が力の差を思い知らされるのはこの後すぐのことだった。
「おらああああ!! 」
雷帝丸はラクトと同様に突撃する。だがラクトと違う点は、雷帝丸はこれと言った魔術への対抗策もないまま走り出した。つまり、何も考えていない証拠である。
「『トルネード』」
「うおぁっ! 」
案の定雷帝丸の脚は止まるがコハクはすかさずフォローに入る。強風への抵抗力を高める魔術を即座に唱えてひとまずの体勢を整えさせる。
「『ウインドブレイク』! 」
「おぉ! 少し楽に…」
「『コール! バリア! リフレクション! ブレイズ! アース! サーマル! リジェネレイト! ブースト…ブラスター』! 」
コハクは続けて魔術に抵抗できない雷帝丸を考慮して魔術の抵抗力を増幅させる。生身で魔術を受けてもある程度はダメージを軽減できる。さらに“リジェネレイト”の効果で少しずつながら体力の回復もできる。だが相手は強力な力を持った魔女。油断はできない。
「おじちゃん、コハクの射線に入るとおじちゃんに当たっちゃう! おじちゃんのサポートは頑張るからなるべく横から攻めて! 」
「マジ? ちょっと厳しいな…」
雷帝丸は難色を示すがそんなことを言っている場合ではない。フマルから新たに攻撃が仕掛けられる。
「『スパーク』」
「『スパーク』!! 」
「あぶねぇ!! 当たるぅぅぅぅぅ!! 」
雷帝丸は二人の魔術を避けながら自分ができることが無いか隙を伺う。コハクは2本の杖からそれぞれ雷撃を、フマルは自身の手元から黒い雷撃を放って応戦する。同じ魔術を放って純粋な魔力比べをしているかのような戦いを繰り広げているが、コハクの方がやや劣勢で多少のダメージを負っている。その証拠に少し顔に焦りと疲れが見え隠れする。コハクの能力は『魔力が無限』のため魔力切れの心配が全くないのだが、純粋に肉体の体力が少なく、魔力の質が良くないため高い火力を連続で出し続けることは難しい。逆に強力な一撃を時間をかけて放つことや持久戦には滅法強いのだが、今はその長所は活かせない場面である。




