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ベテラン勇者のおつかい  作者: Luoi-z-iouR(涙州 硫黄)
風穴の光
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風穴の光 ⑫乱入者

 アミーが防御の体勢を取る中、フマルは自分目掛けて何かが飛んでくることを察知して謎の魔術を使用し、雷帝丸への追撃を諦めて後方に移動した。アミーは衝撃を受けきれずにフマルと同じ方向に吹き飛ぶ。

(距離が開いた!? というか何かデカい塊が目の前に落ちてきた? これは…めちゃくちゃ長い鎖に繋がれた棘付き鉄球…モーニングスター? )

 雷帝丸も目の前の様子を確認して驚いている。天井が崩れ終わると、雷帝丸からは天井にできた大穴から二人の影が見えた。一人はとんがり帽子を被った2本の大きな杖を両手に持つ幼女、もう一人は成人男性ではあるが、瘦せ衰えていて防具を身につけていない。この男のどこにそんな力があるのか理解できないがこの男がモーニングスターを放ったのだ。

「ま、まさか…!? お前は!!? 」

 天井にできた大穴にいる男は大穴から飛び降りて、落下中に比較的短い剣を振るう。男は落下しながら左手からフマルに強烈な斬撃をお見舞いする。残念ながらその斬撃は回避されてしまったが、その一撃だけで研究室の床を切り裂いて石畳の床にヒビを入れた。

「……あなたと会うのは10年ぶりね。『武具(アタック)()勇者(メイル)』」

「相棒の敵討ちしに相棒を連れてきたぜ、魔女さん。それと……遅くなったな、後輩」

「ら、ら……ラクトぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!! 」

 雷帝丸を援護しに来たのはラクトだった。だが武器は鎖と人間の頭ほどの大きさの棘付き鉄球、左手の手の甲に錬金術の魔法陣が書かれたグローブしかない。防具は瘦せ衰えた身体に合うものが無かったのか何も身に付けていない。

「相棒の…アスコルの仇を取りに来た!! 」

「コハクもいるよ…ってほんとにママ!!? アミーもいる…」

「コハク!? 家にいたはずじゃなかったの!? 」

 天井を崩壊させて突入してきたのは元勇者のラクトとアミーだった。まさかの突入に一同が驚く。

「コハクちゃん、あの子がアミーか? 」

「うん。でもコハクの知ってるアミーじゃないからきっと操られてる。取り戻した記憶のアミーも、ほとんど操られてるのが分かったからもとに戻してあげないと! 」

「あの子が…俺の娘……アミー……! 」


 やっと会えた自分の娘を見て感傷に浸るが、そんな場合ではないとラクトは気を取りなおす。

「コハクちゃん、作戦通りにお母さんを抑えてくれ! 」

 予想外な乱入はその場にいた三人が驚くこととなった。突入してきたラクトとコハク自身も驚いていたのは言う間でもない。

「…なんかいろいろ交錯しているが、俺が助かったようだな…」

「危ないところだったな雷帝丸」

「あれ? 俺の名前はサンダーボルトって言わなかったっけ? 」

「コハクちゃんが教えてくれたからな。通り名も無いし本名はこっちだろ? 」

「その名前嫌なんだ」

「す、すまん…」

 ラクトと雷帝丸は戦闘に入る前に名前に関するどうでもよいやり取りをするが再会を喜ぶ暇はない。ラクトは魔術の詠唱無しで魔術で雷帝丸の氷を簡単に解いた。雷帝丸は詠唱無しで魔術を唱えたラクトに驚くが、軽く礼をするだけで済ませた。

「さぁ、これはお前の剣だろう? どこかで大きな爆発があったときに、この剣が地下街まで飛んできたんだ。奇跡的に地下街の入り口の中に入って来たから俺が預かっていた」

「おぉ! 俺の剣! 失くしたと思ってたんだ。ありがとなラクト! 」

 ラクトは先ほど使用した剣を雷帝丸に渡す。その剣は確かに雷帝丸が旅立ってからすぐに装備を失った後で花の国執事長のベンゼンが錬金術で作成した雷帝丸の剣である。要は元々持っていた剣のレプリカだ。

「その剣……!?そんなものがあるとはね……それは厄介ね…」

 その剣を見たフマルは驚き呟く。しかしその場にいた誰もがなぜ驚いたのか理解できなかった。

「俺が武器をしっかり揃えて本気で戦うのなんて10年ぶり、ましてや剣なんて本気で使ったのはいつ以来だったか。だが俺がまともに動けるのは持って数分だ、今の2発だけでだいぶ疲れてしまったよ」

 嫌な汗を垂らしながら不敵な笑みを浮かべているラクトは雷帝丸に話しかける。ラクトは感覚的に、かつての相棒とのやり取りのように緊張をほぐす雑談をしているつもりであるが、雷帝丸はラクトの様子を見て少し不安げな表情を浮かべる。

「大丈夫なのか?もう息が上がってるぞ?」

「10年もまともにやりあってないから戦いの感覚はあってもそれに追いつく身体なんてもう持ち合わせてない。コハクちゃんにはあの魔女を止める役割を与えてあるから手早くやろう」

「あぁ、あの魔女が相棒の仇なのはわかっているが生け捕りにするぞ! 」

「「覚悟しろ! 」」



第二ラウンドスタートです!

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