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ベテラン勇者のおつかい  作者: Luoi-z-iouR(涙州 硫黄)
風穴の光
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風穴の光 ⑪魔女の過去

 少しだけフマルの話を挟む。フマルは元々魔術師ではなかった。現在から約300年前の出来事である。元々は遠く離れた国のとある寺院に預けられた赤子だった。だがその寺院は当時存在した魔王の拠点の一つであり、裏では地下室にて実験三昧の日々を送る施設だった。その実験とは非人道的な人体実験だった。


「『……主よ、ゆえに私は我が肉体に宿りし魂を捧げ、命すら惜しまず、祈り、祷り、願いを聞き入れたく存じます』」

「……だめだ! 剣に祈りの力が付与されていない! これで何度目だ愚か者! てめぇは貴重な祈祷術の技術と才能を肥溜めにぶち込む気か!? 剣に祈りの力が付与できない程度ならば建物に祈りの力が付与するなど不可能だろうが!! 祈祷術が出来るのは選ばれた者だけなのにお前ができないのは怠けているからだ! 祈りの力は願いを叶えるものだがお前が怠けているせいで誰も幸せになれないんだ! 」

 屈強な男が何度も鞭を振るい幼女の身体を容赦なく痛めつける。その幼女は既に祈るための指が折れたり失ったりしている他、逃げられないように足枷を付けられて目隠しをしている。体中に鞭の傷や火傷の跡があり、流血と生傷が絶えない。拷問や虐待と言っても差し支えないような実験させられているのはフマル、当時11歳。この寺院に封印されていた祈祷術の技術と使用方法を発見した当時の魔王が、この寺院を拠点にして秘密裏に祈祷術の研究を進めていたのだった。彼女はその被害者なのである。

「うっ…うぅ…」

 フマルは耐えるしかなかった。何人もの幼女や少女が監禁され、使えないと判断された者が目の前で惨殺されている光景を普段から目の当たりにしていてはたとえ大人であっても簡単に抗おうとは思わない。亡骸や臓物が無造作に檻に転がり、腐りかけていて環境も劣悪である。最年長ながら誰も救うことができずにフマルの心も廃れて正常な判断が出来る状態ではなかった。だが耐えるだけの少女の日々は突然に終わりを告げた。フマルは当時のことは覚えていないが、気を失っている時にある声が聞こえた。


『貴様は少し変わっている。少しの代償で永遠に誰かを守りながら生きながらえる力をやろう』

「…………おねがいします…」

『契約成立だ』


 その一言で頭の中に何かが流れ込んでくる。気が付くと寺院は勇者に潰されていて、フマルを含めた少女や幼女は救出された。だがフマルだけは違った。その声を聞いたことで何かが変わり、助けに来た勇者と共にその寺院を潰してしまったという。そして、帰ってきた頃には身体の傷は無くなった。指も折れたり失ったりしていたものが普通の手に戻っていた。だがそれと代償に左目は盲目に、右目もほとんど見えなくなっていて、唯一無事だった視力がほとんど失われていた。それを知ったうえでその勇者はフマルをパーティメンバーに誘った。だがひと月もしないうちにその勇者が魔王になってしまった。穏やかで優しかった姿は完全に消え失せ、横暴で狂暴な性格に変わった。自分は生き残るために新たに得た力を利用して逃げ出した。新たに得た力は周りの動きが止まり、副作用として使えば使うほど頭の中に何かが流れ込んできて、それは悪夢のようだった。それからしばらくして勇者だった魔王は討伐された。そして、それが魔術であることに気が付くまで、魔女としての人生を歩み始めるまで時間はかからなかった。彼女はそれ以降魔術と祈祷術の関係性と使い方を独学で研究し、200年ほど前に現在の風の国の首都オキシに拠点を構えたのだった。



「はぁあっ! 」

フマルは魔術で自身の周りに何かの影響を与える。雷帝丸も何かが変化していることがわかるが具体的に何が起こっているのがわからない。

(うぐ…重い!? ってわけでもないのになんか身体の動きが悪い? )

「ッ!! 『ブリザード』!」

 やはりフマルは自分の魔術を破られたことを確認し、すかさず攻撃する。雷帝丸は必死に動かしてフマルの追撃の魔術を避けようとするが、フマルの黒い『ブリザード』で凍結させられる。それと同時に雷帝丸フマルの謎の魔術が解除される。

「がぁぁぁぁ! やべぇ! あ、脚がッ!! 」

 雷帝丸はフマルの謎の魔術に対して何か抵抗力があるようだがそれは完全なものではない。身体の動きが重鈍になるようでそういうわけではない。とにかく動きにくくなる雷帝丸はそんな状態で身を捩って全身を氷漬けにされるのを防ぐが、もう移動はできない。

「一度全身を凍らせて眠らせようと思ったけど失敗したわね。一体何なのよこの勇者は。無駄に生き延びるとか害虫じゃない。今度こそ終わりだけど」


 じりじりと近づくフマル、杖を構えていつでも魔術を使う準備は出来ているアミー、身動きが取れない雷帝丸。完全に詰みである。しかし雷帝丸はまだ諦めていなかった。ここで自分が負ければ何が起こるか分からない。自分も、シクロも、コハクも、アミーも、ラクトたち元勇者たちも、どうなるのか全く分からなかった。だからこそ負けるわけにはいかないと力の入らない拳を構えて抵抗しようとする。そんな絶体絶命の中で運は雷帝丸に味方した。

「!!? 」

「きゃっ!? 」

「おわぁ!!? 」

 突如天井が崩れ落ちてきたのである。否、崩れ落ちたというよりは上の階から何者かが床を破壊して、それが瓦礫として落ちてきた。



少しだけフマルさんの過去が明らかになりましたがざっくりとこんな感じです。次回、まさかの乱入…?

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