風穴の光 ⑥相手が悪かった
雷帝丸とシクロの前に立ちふさがったのはアミーだった。引き連れているのは雷帝丸が捕まる前に戦った集団である。
「そこまでです! 」
「あ! お前! 」
「アミーちゃん! ぐふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ」
「ひぃっ!? や、やれ!! 」
集団の中にはアミーが隊長のような立ち位置にいるが、シクロが嫌な笑みと声をあげたためアミーは一瞬怯んだ。しかしアミーは容赦なく雷帝丸とシクロに自分の部隊を突撃させる。
「何度来たって同じだ魔術師共! 俺は今頗る機嫌が悪いっ! 股間の恨みは貴様らで晴らす! くらえ勇者パンチ! 」
「女を寄越せ! 女を食わせろキック! 」
特殊部隊は何も対策を取らなかったわけではなかったらしく距離を取りながら雷帝丸たちの間合いに入らないようにしている。だが一応ベテラン勇者である雷帝丸とプロの格闘家のシクロは格闘戦での間合いの詰めはお手の物である。いとも簡単に魔術師たちがなぎ倒されていく。身体を張って作った隙にアミーは魔術を唱えて攻撃の準備をしている。雷帝丸はそのことに気が付いてシクロに避けろと目線を配るが、すでにシクロは次の手を撃っていた。シクロは両手を自分の頭上に上げ、顔をその両手を見るように上を向き、はぁぁぁぁぁっと呼吸を整えて大きく叫んだ。
「ちきゅうのみんな! あたしにすこしだけ…げんきをわけてくれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!! 」
「ばかやろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!! 何が元気だばかやろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!! 」
シクロの頭上にある両手の内側には白い魔力の塊のような物がみるみるうちに大きくなってゆく。魔力ではなく『ちきゅうのみんなのげんき』らしいが、そんなものはどうでもよい。
「え? え!? 何その魔術!! こんな狭いところでそんなもの撃ったらみんなひとたまりもな……」
アミーが驚いて何かを言っている間にシクロは“ちきゅうじょうのおんなのこのげんき”とやらがたまったのかすぐに頭上の大きくなった玉をアミーに投げつけ、その玉は爆発し、部隊の隊員も雷帝丸も巻き込んですべてを爆破した。
爆発の勢いが収まって静かになると、雷帝丸は廊下の瓦礫を押しのけて立ち上がった。捕まる直前まであれだけ激しい戦いがあった相手のはずである。旧世界のとある人が900字詰めの原稿用紙数十ページに及ぶであろう長い戦いをしたにも関わらず、今同じ相手をしたら700字余りの長さで戦闘終了したのである。あの戦いはなんだったのだろうか? 自分とコハクがあれだけ苦労して結局負けてしまった相手が4桁もいかない文字数で片付けられてしまい、唖然とするしかなかったのだ。そしてその唖然とする雷帝丸の目線の先には無傷のシクロが仁王立ちしている。
「……ふぅ」
「何がふぅ。だ! 賢者タイムか! 」
「そうかもね。思ってたよりも早く私に犯された『恥丘のみんな(おんなのこ)の性欲』が溜まっちゃったみたいでまるで早r」
「うるせぇ! 黙れ!! 」
シクロのどこかで見たような技に寒気がするアレンジを加えて自分の技のごとく使うため、雷帝丸は頭を使うことをやめてしまった。何はともあれ、これで特殊部隊を跳ねのけたことになる。
雷帝丸とシクロは無事(?)に特殊部隊を突破して進み続ける。魔術師側が甚大な被害を出している中でほぼ無傷で脱走を試みる女格闘家と、股間をも粉砕されたが精神的に満身創痍の男勇者が進み続ける。雷帝丸はちゃっかり倒した魔術師からマントを奪って衣服の代わりにしている。しかし、その数分後の出来事だった。どこかで見たことのある元気な玉で爆破したことで研究施設の内部が破壊されてあちこちが脆くなり、天井が崩れてきている。それは研究室にいる誰もが認知していたのだ。あれだけ派手に攻撃したためどうやっても知られてしまう。そして、今来たばかりの女性もこの状況を理解するのに時間はそれほど必要なかった。
「な、なにこれ…想像よりはるかに暴れてない?」
「は、はい……特殊部隊がせいぜい3分も足止めになりませんでした…うぅ……」
今来たばかりの女性の名はフマル。この研究所の責任者である。報告している者は元気な玉の爆発でボロボロになり、フード付きマントでアフロになった髪を隠しているアミーである。
「いくら試作品とはいえここの研究員のクローンじゃやっぱり近接戦には限界があるわね。ここのナンバー2のあなたであっても魔術で対抗するのも難しいとはね…私があの勇者たちを侮りすぎた…あなたは良くやってくれたわ」
「お役に立てず申し訳ございません…。研究所も守れず、実験体を数多く死なせてしまった……」
「どのみちあと数年したらこの研究所は壊れていたに違いないわ、そういう未来だから。……もうすぐここにあの二人が来るわ。でもピンチはチャンス。あなたはこのまま研究所を出て逃げるか、私の魔術で自我を失いながらでも強化して私と一緒に戦うか…無理強いはしないけどあなたが選びなさい、アミー」
「……もちろん戦います。だから! 最後の…最期のチャンスを!! 」
もうシクロさんめちゃくちゃすぎて作者のおなかが痛いです…。
また、アミーちゃんは不穏な決心をしてしまいましたが心配です……。




