風の国 ㉑天才が見せる成長と隙
「『コール、スパーク、ブリザード、チェイン、ブラスター』」
「『スパーク』!『ブリザード』! 」
アミーは周りの霧雨の魔術に『チェイン』をかけて霧雨に魔力を貯め込みつつ攻撃を仕掛けるが、アミーの攻撃はコハクの簡単な魔術に打ち消されてしまう。それも同じ魔術を使っているが、コハクの放つ簡単な魔術が威力を上回っている。そのためアミーはじわじわと追い詰められている。
「『フレイム』! 『ブリザード』! 『スパーク』! 『トルネード』! ええい、これで! 『リフレイン』! 」
「くっ…! 」
コハクは次から次へと魔術を放つ。それもアミーが時間をかけて放つ一発を上回る一撃を連続で放つためアミーは迎撃と回避で精いっぱいだった。さらに『リフレイン』を唱えることで4種の魔術を唱えなくても発することに成功し、いちいち魔術を唱えなくとも魔力を『リフレイン』担当の悪魔に魔力を差し出し続けるだけで魔術を撃ち続けることが可能となった。魔力が無限であるコハクにとっては相性のいい魔術である。
「攻撃が単調だけど数で圧倒、当たれば重症。あんなの少しでも使えば一瞬で魔力切れを起こすだろうけれど、魔力無限だからこそできる荒業ってことか…『コール、フレイム、スパーク、チェイン、ブラスター』」
コハクは能力のおかげで魔術が使い放題で忘れられがちだが本来魔力とは各個人で使用できる量と貯められる量の限界がある。魔術師は集団で戦うことで使える魔術の種類を増やしたり、休憩したり体勢を立て直したりとインターバルを確保することで魔術を使える回数を増やすことが基本戦術である。だが二人とも今回の戦いではそれをしていない。
(こっちの魔術じゃ簡単に打ち破られる…このままじゃこっちの魔力が底を尽きる! )
魔力が無限にあるコハクにとっては問題ないのだが、魔力が有限であるアミーには死活問題だった。高速で空中を移動しながら攻撃しているせいで地上から見ると霧雨の中で駆け巡る流星群のような光景が見える。コハクが少しずつほうき星ときらきら星の連携が取れるようになってきたため手数でさえも増えてアミーはさらに劣勢に追い込まれる。
「こ、この…!? きゃぁぁぁ!! 」
(……? 自分で言うのもなんだけど、なんで魔術がこんな簡単に使えるの? )
コハクは気が付くと魔術を唱えていなかった。しかし、魔術は発動している。『リフレイン』が暴走というわけではないが、自分が唱えるよりも早く魔術が発生しているのだった。魔術の発生には口で魔術を唱える必要があるのだが今のコハクはどの魔術を使うかを考えただけで魔術が発動できる。つまりコハクの攻撃回数が自分の想像以上に多いのだった。自分の攻撃に違和感を覚えながらもコハクはそれを利用して魔術の回数を増やして攻撃する。
(なんでアイツは唱えてないのに魔術が使えるの!? 唱えてないから魔術の条件を満たしてないのに! こうなったら付け焼刃の古い魔術で対抗するしかない…! )
「アミー! もうやめて! ……? 」
アミーはローブから宝石をいくつか取り出してコハクに投げつけた。コハクはその投げつけた宝石を見て何をしたいのかわからなかった。その宝石はきらきら星にも装飾されている魔術の威力を上げる宝石に見えたのである。その宝石を躱すと後ろで宝石が大きな爆発を巻き起こした。
「うわわっ!? 」
この時に『リフレイン』の魔術が途切れてコハクの連続攻撃は終わり、その隙を逃すまいとアミーは攻撃を仕掛ける。
「『コール、ホーミング、ブリザード、スパーク、フレイム、チェイン、ブースト、ブラスター』」
「後ろも!?『ディストラクション』! 」
「『コール、バリア、メタル、スパイク、ブースト、エンハンス』」
アミーは宝石の爆発と自分の放った魔術でコハクに回避させるように仕向け、回避している間に自分の防御力を上げると同時に身体を金属化させ、全身を金属の棘で覆うことで物理的にも防御と攻撃を同時にできるように構えた。するとアミーの予想通り無数の魔術が放出される。それをアミーは躱すが『メタル』で重くなった身体では躱しきれずに炎の一撃を受けた。それでも防御の魔術で強化しているため本来よりもかなり軽傷で済んだ。
「ぐっ…! 」
コハクの攻撃は簡単な魔術であるはずなのにアミーの攻撃よりも威力を上回る。次の手を考えているとアミーの元にはコハクが突進してくる。一秒にも満たない時間の中でのやり取りで何度も策を練り、魔術の応酬をすることが魔術師の戦いである。
「でやぁ…って! わわわ!! 」
しかしアミーは突撃してくるコハクに向かって強化した金属の棘の身体を突き立てる。その勢いは止まらず、コハクはそのままアミーの棘だらけの身体に突き刺さってしまった。
「あ…あ……」
「今回は本物だった。こっちの勝ち」
金属の身体になったアミーの身体にコハクの血液が滴る。コハクの身体は全身から棘が突き出て内臓すら飛び出ていた。明らかに身体が貫通していたため、アミーはコハクが完全に死んだことを確信した。
「これで終わった…」
アミーが呟き、コハクは霧雨に濡れて動くことはなかった。
コハクちゃんにさらに成長の余地が見られましたがどう見ても無事ではありません。実戦経験が少ないが故のミスでしたね……




