風の国 ⑳優等生の劣等感
雷帝丸とシクロはほとんど一方的な戦いを繰り広げている頃、空へ逃げたアミーを追っているコハクは自分に魔術をかけながら自身の強化をしていた。高速で飛び回るため霧雨が顔に勢いよくぶつかって痛いと思うと霧雨対策の魔術を自分に仕掛ける。しかし、その中で雷帝丸へかけた魔術が強制的に切れていることにも気が付いたが、コハクは雷帝丸を信じてアミーを追うことしかできなかった。
「アミー!! 」
「しつこい」
コハクは移動能力に優れたほうき星に跨っている分空中では機動力と速度がある。ほうき星は空中での機動力があるためむしろ有利なはずであるが、コハクはアミーに追い付けない。空中ではアミーが雷撃や炎、氷など多くの種類の魔術を放ち、コハクは回避や迎撃をする。
「こっちだって邪魔するんだから! 『バインド』! 『トルネード』! 」
「『イクスキュージョン』」
アミーはコハクの拘束魔術を本来攻撃用に使う爆破の魔術『イクスキュージョン』で対処する。爆破の勢いに風と鎖は吹き飛ばされる。爆風の中を突っ切って脱出しようとしたアミーはそのまま全速力で進んだ。しかし目の前にはコハクがいた。
「なっ!? 」
「『ストロボ』! 」
「くっ…? 」
「あ、あれ? 」
しかし、コハクの『ストロボ』は不発に終わった。このチャンスを逃すまいとアミーは杖をコハクに近づけて魔術で攻撃を仕掛ける。
「『スパーク』」
「がっ!!! 」
コハクは雷撃を受けてダメージを受けてしまうが、そのコハクは電撃を少し受けただけで消滅してしまった。そのことに驚くアミーはコハクの魔術で回避したと予想して当たりを見まわすがコハクは見つからない。「不思議なことが起こった? 」
「!!? 」
アミーの背後にコハクがスルリと出現した。コハクはまだ少し余裕があるのか、歳相応に魔術を遊びの一つのように使う。
「でも無意味だよ。『コー…』」
「『スパーク』。……!? 」
またコハクは少しの電撃で消滅した。アミーは自分の攻撃が通らないことに怯んだ。自分の攻撃が通用しないが、この手は今見たばかりである。すぐに次の手に出ようとアミーは魔術を唱えようとする。
「『コール。オート、ホーミング、スパー…』」
「でやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 」
魔術の詠唱中にコハクが霧雨の中から突撃してきた。詠唱中のアミーはとっさに反応できなかった。真正面から勢いよく突っ込んできたコハクはきらきら星に魔力を流し込み猛進する。きらきら星には装飾されている宝石がいくつか煌めいて、そのうちの一つが強い光を放つ。
「『コンパクトソニック』! 」
「きゃぁぁぁ!! 」
見た目は派手でなくても力強い暴風がアミーの身体を覆い吹き荒れる。その暴風は空気の刃を生成し、強すぎる風によってアミーはかまいたちのように切り刻まれながら吹き飛ばされ、地上に落とされた。
「っ…『トルネード』」
アミーは地面との直撃を防ぐために風の魔術でクッションを作って最小限の負傷で済んだ。だがコハクの攻撃で服の一部が切られてそこからじわりと血が滲み出て、切り傷がいくつかできたことに気が付く。
(何なの…何なの!? いつもいつも簡単に私よりも上に行く! 本当なら今の攻撃で私を真っ二つにできたはずなのに、私なんて片手間でどうとでもなるとでも!? 魔力量、使える魔術の種類、威力、判断力、どれをとっても私はこのガキには勝てない。だからってこんな手抜きをしていいわけがない!! 聞いたことが無い魔術に見たことが無い立ち回りで私をほんろうする! 私は…このガキが憎い!!)
息を上げながらも思考は止めないが、かえって良くない考え方で自信が折れかける。その自信を怒りで立て直すが実際彼女には簡単に戦況をひっくり返せるだけの策はまだない。アミーはコハクよりも劣っていることを身体に刻まれた気がしたのだった。
「驚いたでしょ?今コハクが見つけた魔術のコンボだからね。『シャドウアルター』! 」
悔しい思いをしている暇などない。コハクは落ちたアミーの元へ近付き、アミーの様子を確認しながらさらに魔術で追い詰める。
「な! 増えた!? 」
魔術を唱えたコハクは傷を負っても立ち上がるアミーにさらに攻撃を仕掛けるために魔術を仕掛けた。『シャドウアルター』は分身する魔術である。先ほど霧雨の中でコハクが使用した魔術であり、攻撃されると消滅する分身を作る。分身が魔術を使用することは今はできないが、囮としての完成度はかなり高い。その囮にアミーは騙されて隙を晒したのである。
「『バインド』! 『フレイム』! 」
「『フライ』」
地面に落ちたアミーは急速に空中に上昇する『フライ』で炎と鎖を回避しつつ、位置的に迎撃しやすいように移動した。それを追ってコハクも『フライ』を唱えて再び霧雨の雲の中へ入っていった。
忘れていると思いますがアミーも魔術の天才の部類に入ります。しかしコハクちゃんの方がずっと格上のようです。コハクの無邪気な性格と相まってアミーはコハクとは仲が良かったとしても調子に乗っているように見えて、でも実力は確かなもので、でも本人が悪いわけではない。それが災いしてアミーはコハクのことが元からそれほど好いていなかったのかもしれないですね。




