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ベテラン勇者のおつかい  作者: Luoi-z-iouR(涙州 硫黄)
風の国
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風の国 ⑯危険な力

「おねぇちゃん…どうして……? 」

「シクロ! お前まで! 」

 雷帝丸とコハクの前に現れたのはシクロだった。拳にはガントレットを装備しているため戦闘準備は万全である。それだけではない。シクロから並々ならぬ殺意が発せられて猛獣さながら今にも飛び掛かってきそうである。

「腐れ勇者、殺ス」

「おいおいおい冗談じゃねーよ!! 」

「おじちゃん! 」

「コハク、アミーを頼む! シクロ、俺が相手だ! 」

 コハクにアミーを任せ、雷帝丸はシクロを挑発して抑える作戦に出た。

「腐れ勇者、殺ス」

「無表情で言われるのも怖いんですけど…て!? お構いなしか!? 」

 雷帝丸はシクロの拳を躱したり盾で防いだりして隙を伺う。しかし先ほどの魔術師たちとは違い手練れの格闘家であるシクロの拳はけた違いに強く、攻撃を受けないようにしても雷帝丸の身体に数発は攻撃を受けてしまう。

「そらそらそらそらそらそらそらそらそらそらそらそらそらそらそらそらそらそらそら!! 」

「ばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばかばか!! 」

 シクロは両腕で雷帝丸に連撃を繰り出す。雷帝丸は攻撃を受ける回数が増えているが、コハクから受けた防御の魔術もあってツリーハウスでのタコ殴り事件の時よりは軽傷である。

「ヤバそうなラッシュはやめろ! こんな始まったばっかのところでそんなことしたらあぶねぇだろうが!? 」

「腐れ勇者、殺ス」

「さっきからそれしか言わねぇな! 殺意ありすぎるだろうが!! 」

 語彙力も減少しているシクロに心配しつつも畏怖する雷帝丸であるが、少しずつダメージが蓄積されている。雷帝丸はベテランの勇者であるが今回は相手が手練れの格闘家。つい数分前までなぎ倒していた魔術師たちとはわけが違う。盾一つではジリ貧になってしまう。


「いい加減目ぇ覚ませ! 」

「あぁぁぁたたたたたたたたたたああたたたかいあたたたあたかさたなたたったたたったたったたたぁぁぁぁ!! 」

「ひでぶぅぅぅううう!!!そんな一子相伝の暗殺拳みたいなもん使うんじゃねえ!! というかさっきから何なんだコイツ! どっかから丸パクリしてきたかのような技しか使わねぇ!! 」

 ボクサーがトレーナーに連撃を叩き込むようにシクロは雷帝丸を容赦なく殴りつける。ただ、攻撃はその辺のボクサーの比ではない。雷帝丸の必殺技(と決めている)の突進と突きの一撃よりも一発一発が雷帝丸のそれよりもはるかに重みがある。雷帝丸からすれば今すぐにでも逃げたくなるような相手だが、今の相手はシクロであり、逃げるわけにはいかない。

「『コール、クラウド、ミスト、レイン、ブースト、ブラスター』」

「霧!? 雨!? 」

 アミーは雲を発生させ、雲から霧雨を地上に生み出した。その雨と霧は地上に届き、全員の視界を遮った。

「視界を取られた! コハク、大丈夫か!? 」

「大丈夫! おじちゃんも気を付けて! 」

「よし、コハク! こっちに来い! 」

「腐れ勇者、殺ス」

 戦場の状況が変わったことで全員の行動が変わろうとしていた。雷帝丸はコハクを呼びよせ、霧に身を潜めつつ戦闘を避けるために逃げようとしていた。しかし、それが仇となる。

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ……!! 」

 シクロは雷帝丸が自分の元から離れたことを確認し、右の腰の近くに両手を構えて使えなはずの魔力の塊を両手の中に生成する。

「まさか見つかってる!? 」

「っ!? 『コール! ブリザード、トルネード、スパーク、ブースト…』」

「ドーラーゴーンー……」

「『ブラスター』! 」

「ブレえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇス!! 」

 コハクは魔術を発射し、シクロは右の腰に構えた両手を前に突き出して魔力の塊を放った。二つの攻撃が衝突して4人はその攻撃の衝撃に巻き込まれる。

「グルルルル…」

 シクロが霧雨の中でアミーとコンタクトを取る。

「仕留めきれてない…。この人のドラゴン流リュウスイ拳は空気中や水中の触れている水を固めて攻撃、防御、移動すべての行動を強化される。だから相手の視界を塞ぐためにも霧雨を降らせて力を発揮しようとしたけど、逆に利用されて逃げようとしてる。しかも”跳躍の書”に飲まれて霧を一切有効活用しない…」

「腐れ勇者、殺ス」

「……。あの幼女は魔術では勝てる可能性は低いからできるだけ早く片付けてね」

 アミーとシクロはコハクと雷帝丸を仕留める算段を立ててトドメを刺すつもりでいる。しかも雷帝丸を早めに倒してからコハクを二人で仕留めるつもりである。その二人が見据える先には今から狩る勇者と幼女がいる。


「『トルネード』! 」

 風の魔術で霧雨を晴らして視界を確保する。周りの霧雨までは晴らさないで4人の視界と間合い程度を確保して仕切り直しをしつつ、風で先制攻撃を仕掛ける。

「小細工を! 」

「げほッげほッ! お前なぁ! そのヤバそうな()まで出しやがったな!? がっつり両手で()みたいなの出すんじゃねぇよ!! 今ので盾が壊れかけたんだけど!? 」

 雷帝丸はコハクの先制攻撃に乗じて口撃するが特に効果はない。雷帝丸の最後の武器である盾がシクロの放った()せいで盾の縁が取れて打撃武器としては使用できなくなってしまったが、防御用にはまだ使用できる。

「おじちゃん大丈夫!? 」

「あぁ、俺は口より手が先に出るからな」

「うまいこと言ったと思ってる? 」

「あ、あはは…」

 コハクは雷帝丸をジト目で見て、雷帝丸は乾いた笑いで返す。雷帝丸はコハクが衝撃に巻き込まれないように衝撃が来ると判断した時点でコハクをかばい、盾でコハクと自分の安全を確保した。一方でシクロは攻撃に集中していたためアミーには何もしていないどころか、アミーが防御の魔術をシクロにかけて耐久力を上げさせることで自分の身を守らせた。そのうえでアミーはシクロの後ろに回って防御の魔術『プロテクション』をかけて二人を守った。

「『フライ』」

「腐れ勇者、殺ス! 」

「やべ! 来るぞ! 」

「『コール』! 」

 仕切り直しとなったこの場は雷帝丸とシクロが走り出し、アミーは空へ飛んで魔術の準備を、コハクは走った雷帝丸へ魔術でさらに身体能力を強化した。



シクロさんの様子が明らかにおかしいです。まだシクロさんは作中で一度しか戦っていませんが、戦うのなら元から習得している攻撃方法を使うはずです。決して作者がやけくそになってどこかで見たような技を連発しているわけではありません。何か理由があるはずです。

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