風の国 ⑬新武器はいつの時代でもウキウキする物
「えっと、あった」
本来はすでに手元にあるはずだった杖は遠回りをしたせいで今になってようやく手に入った。帰ってきてからすぐに渡すはずだったのか、入り口の近くに専用の木製ケースの中に入っていた。大きさは今まで使っていた杖とほとんど同じでコハク本人よりも長さがある。
「この杖だ…『コール…アナライズ、テクスチャ、マテリアル、スペル、ブースト…マインド』! ……うん、ちゃんとコハクの考えた理論と設計図の通りに作られてる」
コハクは分析の魔術で自分の受け取る杖を調べた。特に変わったことはなく、コハクが旅立つ前に自分が事前に設計した杖を手にした。その杖は木で出来ているが、金属で装飾と補強が施されている。特徴的なのは持ち手より上側がいくつかの宝石のようなもので装飾されていて、それらはすべて小さいもので木のパーツに組み込まれている。より多くの魔術を使用するためなのか同じ色の宝石は組み込まれていない。
「誰も使えないだろうけど所有者認識魔術をかけておこうっと。『コール…オーナーシップ、オーナー、コハク・ウィザーグリフ、アフィリエイション、ユーズ…』…えーっとじゃあ……『プロト・イビルホーン=きらきら星』! 」
そのころ雷帝丸はアフロのまま近くを漁って爆発前に無くした剣、あるいは自分でも使えそうな武器を探していた。しかし手元にはいつもの大きな盾しかない。要は新しい武器が見つからなかったのだ。しかしなぜか手紙が見つかった。雷帝丸宛ての手紙を読んだ。
『拝啓 雷帝丸殿
仲間をさっそく一人集めたと伺いました。順調な旅をしていると思いますがいかがお過ごしでしょうか。
日が浅いですが水の国のツリーハウスをはじめ、戦闘で爆発した森は私が錬金術で整地した後で錬金術や植林をして森を元に戻しました。帰ってくる時はある程度修復されていますが、多少道が変わっているので注意してください。
それは解決したので良いのですが、私と国の負担が増えすぎるので破壊活動は金輪際控えて頂けると助かります。国の資金が足りない場合は私の給料から修理費が出るので地味にポケットマネーが減ってしまうのでホントに気を付けてください。いや、マジでお願いします。武器なら何とか作れるのでどうにでもなりますがお金そのものは錬金術で許可なく製作することは禁術とされているので出来ません。なのでホントに気を付けてください。
また、この手紙がなぜ届いているのか不思議に思っているでしょうが、魔術で一時的に使役しているコカゲネズミに運ばせていますのでご心配なく。城も現状問題ないので安心してください。姫様や護衛兵と共にお待ちしています。
ブルーミア城執事長 ベンゼン 敬具』
「多分さっきの爆発で使役してたコカゲネズミを殺してしまったな……」
よく見ると手紙が少し焦げていて、封筒には生き物の毛と油と血液などが付いている。
「……コカゲネズミ、ごめんなさい。そして爺さん、ほんと気を付けます。手遅れだけど。大学爆破しちゃったけど」
使役されていたコカゲネズミに謝罪しつつ、今後の戦い方に注意することにした。
「おじちゃーん、杖見つけたよー」
「あ、見つかった? 」
「あったよ!これ! 」
コハクは自分の新しい杖を雷帝丸に自慢げに掲げて見せた。
「おぉ! なんかキラキラしてんな! 杖2本あるってことは片方でいいのか? 」
「ううん、使える魔術が違うかもしれないからどっちも使う。こっちの今まで使ってたのは長旅にも向いてる杖だからこっちはこっちでいるの。人気モデルだから取っておいて損はないし、こっちの新しい杖はより多くの悪魔を呼びよせやすいように作った試作品だからしばらくは二刀流ならぬ二杖流かな?」
コハクは杖の説明をし、自慢げに杖を構えて杖2本を使って戦うつもりであることを明かした。そのやる気は二本の杖を剣に見立てて構える姿からわかる。だがコハクがそれをすると子どもの戦いごっこに見えてしまうが、雷帝丸はそれには触れなかった。
「何その杖の本数が増えそうな発言」
「もっと増えたら杖持てなくなっちゃうね」
「まぁとにかくだ、杖は手に入れたから目標達成だ」
「そうだね! 今度はママかな? 」
雷帝丸はコハクの母にも力を借りることで自分では解決できない魔術方面の問題に着手してもらおうと考えたのだ。特に病院に支払う金銭面についてこうなってしまった以上はコハクの母にも頼らざるを得ないと頭の片隅に置いている。
「あぁ。ところでコハクの母さんはどんな人だ? 魔術が使えるなら協力してもらおうぜ」
「ママも魔術が使えるよ。元々はすごい魔術師だったみたいで、昔はコハクと同じように飛び級でこの大学にもいたらしいから何とかしてくれると思うよ! 」
「味方だと急に頼りになるなぁ魔術師」
雷帝丸にとって魔術師は自分が絶対にできないことをする存在だと思っている。雷帝丸は魔力がほとんど無いため魔術が使えない。仮に魔力があったとしても今度は魔術を使えるようになるための訓練をしなければならないため雷帝丸には厳しすぎる道のりである。
「でもコハクね、旅をしてる間にも魔術をいっぱい使う勇者は何人か見かけたけどそういう勇者って多いのかな? 」
「少なくはないがやっぱり少数派だな。本格的に魔術が使えるならほかの職業やった方が安定した生活ができる。魔術が使えるのに勇者やってるのは少し魔術の才能があるヤツか魔術師になれなかったヤツ、戦闘スタイルに合わせて自力で取得したとか……あとは魔術師被れじゃないのか? 」
「ふーん」
コハクは魔術が使える勇者について興味はそれなりにあったようだが、勇者っぽいのは魔術が使えない方であると認識している。そういう意味ではコハクにとって雷帝丸は王道な勇者であると思っているのだが、魔術に長けたコハクは勇者であってもやはり魔術があった方が戦いやすいと考えている。だがそれと同時に、魔術を使うことが当たり前の環境にいたコハクにとっては魔術が全く使えない雷帝丸の方が人間的に面白く新鮮味があると思っている節もある。本人はそれを自覚していないが、コハクが雷帝丸についてくる理由の一つにそれが含まれているのかもしれない。
「さて、コハクのかぁちゃんのところに行くか。案内してくれ」
「うん!ママが無事ならいいんだけど……」
杖を回収したコハクは新たな杖への期待と母への心配を抱えつつ、雷帝丸と共に母のいる自宅へと向かうことにしたのだったが、一悶着ありそうな、嵐が来る前のような静けさのような、そんな何かが近づいてきてたことを二人は知らない。
ただでさえ強いコハクちゃんが手に入れた武器はコハクちゃんが自ら設計し、関係者に作ってもらった試作品の杖です。簡単に言うとコハクちゃんが見つけた理論を基に、今まで以上に多くの種類の魔術を打ち分けることができ、魔術の威力上昇や成功率、魔術そのものの完成度を高めてくれる代物です。獅子に鰭、虎に翼、チーターにチートツールです。




