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ベテラン勇者のおつかい  作者: Luoi-z-iouR(涙州 硫黄)
風の国
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風の国 ⑥資金稼ぎと過去の闇

「何でこうなった…」

 雷帝丸は今病室にいる。しかし、コハクとは別の部屋である。雷帝丸は今、痣とたんこぶまみれで全身の骨を砕かれてしまい、その治療中である。ちなみに本格的な魔術医療を受けているため、金額はかなり高くつくらしい。

「先ほどの変態はどこへ行ったかわかります?」

 雷帝丸は手術中、もとい魔術で治療を施している若い男の医者に尋ねる。

「『コハクちゃんにあーんするために果物買ってくる』って出ていきましたね」

「あの…ほんとすみません。ほんっとすみませんでした……」

 雷帝丸は謝るしかなかった。医者は苦笑いしながら雷帝丸の治療を続ける。

「人の嗜好はそれぞれ違いますから…」

 そんなことを聞けるくらいに回復した雷帝丸だが、治療にそれほど時間はかからなかった。暴走する格闘家にタコ殴りにされてから数分後、命がけのナースコールを鳴らすが魔力を流すことで起動するタイプだったせいでナースコールが鳴らず、シクロの様子を怪しく思った若い男の医者が病室に駆けつけると瀕死の雷帝丸を発見し、治療を始めて今に至る。

「おぉ、魔術ってすげぇ…!」

 身体の治療を小一時間で終えた雷帝丸は魔術による治療技術がどれだけ素晴らしいかを実感しつつ、コハクを病室で寝かせて外出することにした。出て行ったシクロを探しに行くついでに仕事探しをすることにしたのだ。

「俺の能力じゃ資金稼ぎには限界がある。手元には金が全然ない。ということは俺が金を稼がないと治療費を払えない。ヤバい。仕事探すぞ!できれば自給高くて日雇いのヤツ!手っ取り早く金を稼がねば!」

 現在の資金ではとても治療費を払えない。そのため仕方なく雷帝丸は町をうろうろふらついているが、やはり仕事はたくさんある。求人のチラシやフリーペーパーもいくつか入手してきた。面接の準備は今すぐにでも出来ている。しかし、雷帝丸にはその資格はなかった。

「……全部魔術が使えること前提の求人じゃねーか」

 数時間歩いて仕事を探してからコハクの病室に戻ってきたが、改めてチラシを見ると雷帝丸ができる仕事は何一つなかったためひどく落ち込んでいた。その一方でそんなことは露ほども知らないコハクはぐっすり眠っている。もうすぐ日が暮れるがよく眠っている。数時間前の(しか)めた顔が嘘のようだった。

「コハクは大丈夫そうなのが救いだが治療費がないし、コハクの家がわからないし、コハクの母ちゃんが分からないし、シクロはいなくなったままだし…」

 はぁ…とため息をつく雷帝丸。自分でもどうしたらいいか分からず病室のソファーに寝転んだ。その時に求人のチラシの一枚を落とした。

「あ、やべ、落とした……ん?」

 拾い上げるともらった覚えのないチラシだった。

「地下街の勇者系ホストクラブ…?」

 そのチラシにはホストクラブの従業員募集の案内が書いてあった。夜にする仕事だろうかと思うが四の五の言ってる余裕がない雷帝丸はそのチラシを頼りにそこへ向かってみた。



「ここが地下街の入り口か」

地下街の入り口にたどり着いた雷帝丸はそのまま地下街に歩いて行った。意外と明るい地下街はやはり魔術で地下が照らされているからだろうとは思いつつ、やはり地下街であるため昼間の外と比べたらかなり薄暗い。雷帝丸は目的地を目指しながら地下街を歩いていると、たまにボロボロになった人が寝転がっている様子が目に入る。

「こんなに発展した街なのに意外と生活に苦しんでそうな人が多いな…」

 そう口にするとボロボロになった人の中で一人の無精髭の少し若い男が近寄って訪ねてきた。

「あんた、勇者か?」

「あ?ああ。この地下街で何があったんだ?」

「悪いことは言わん、今すぐここを離れろ」

「はぁ?勇者なのにか?」

 雷帝丸は疑問に思った。勇者は基本的に危険な場所にも赴けるように予め準備をしている。現に雷帝丸の今の装備は万全状態である。その姿を見てなおそう言うということは何かあるのだろうか。

「勇者だからだ。俺は元勇者だが今は見ての通り職なしだ。昔は少しばかりブイブイ言わせてたんだが、魔王の因子を持っている可能性がある勇者はこの町にいない方がいいぜ」

「この町が魔術大国だったが故にか?」

「あぁ。この地下街は魔術の天才がうじゃうじゃいるがそいつらは対勇者用に特殊部隊がいるくらいだ。旅人の勇者であっても容赦はしない。勇者を誘拐しているんだよ」

「……まさかとは思うが魔王の手下になった魔術師たちというか魔術を悪用する、いわゆる『魔女』か?」

「そうだ。厳密には元魔王の手下だがな」

 この『魔女』とは魔王の手下に該当する存在で主に魔術で魔王の支援をする、あるいはしていた者たちである。魔術を悪用する者も性別関係なく魔女と称される。

「だがこの国は30年前には魔王は討伐されたんだろう?なんでそんな残党が今さら」

「詳しくはわからないが、この地下街を支配しているのは当時11歳で魔王に仕えていた女が今でも支配しているらしい。今の年齢だと40~50くらいだろうが、魔術師は年寄りの方が強いことも珍しくない。それに俺たち元勇者は魔女たちにこの地下街から出ていくと身体が灰になる魔術か何かをかけられていて未だに解けないんだ」

「だから元勇者はここに居続けるしかないのか…え?呪いって何?えげつないワードが聞こえた気がしたんだけど!?」

 話し込んでいると男と雷帝丸はすぐ近くの横道にいる何か小さな魔獣と目が合った。それは本来森の中にいる体長10㎝程度の魔獣『コカゲネズミ』だ。群れで木陰や樹木の根などに隠れながら生活している小型の魔獣で基本的に常に食料を持ち歩いている。また、外敵や食料を探知するために人間で言う五感に相当する神経が発達している。

「ん?こんなところにも『コカゲネズミ』がいるのか?何か変な模様付きだし」

 コカゲネズミの身体には本来模様はない。木の根のような茶色で保護色の役割を持つがこの個体にはむしろ目立つかのように不思議な模様が浮かんでいる。雷帝丸が男に聞くと、男は横道を振り向いてどこからともなく取り出した鎖でコカゲネズミを叩き潰した。

「うぇえ!?そこまでやるか!?」

 容赦ない男を見て雷帝丸は怯むと、男は小声で早口で言い聞かせた。

「使い魔に見つかった!とにかくここは勇者がいたらまずい。すぐに魔女がここに来る!それで魔女に見つかったらおしまいだ!一旦俺のところに来てやり過ごした後でここから脱出してくれ!」

「お、おう。ここはお前の言うことを聞こう」

 雷帝丸はその男に案内され、隠密に彼の家に招かれた。しかし厳密には彼ら(・・)の家と言った方がよかった。




制作秘話:某RPGゲームを買いました。剣と盾の両方を使う雷帝丸さんにちなんだわけでもなくダブルパックを購入し、盾の方をプレイしています。剣は諸事情で某氏に授けました。雷帝丸さんだったらどっちをプレイするんでしょうか。

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