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ベテラン勇者のおつかい  作者: Luoi-z-iouR(涙州 硫黄)
風の国
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風の国 ⑤風の国へようこそ

「空に逃げたけど、アレを受けたらひとたまりもないわね」

「おじちゃん平気かなぁ」

 二人は雷帝丸を確認するため、牙がめり込んだヘラクレスオオイノシシと岩肌の事故現場に降り立った。

「腐れ勇者さま~、死んだ~?」

「勝手に殺すな…」

「さすがおじちゃん!」

 雷帝丸は生きていた。わずかにできた隙間にうまく逃れることができたため、奇跡的に無傷である。ただ、激突したヘラクレスオオイノシシの口元にいた。興奮したままでこれっぽっちも機嫌が良くならず、角が抜けないことに苛立ち地団駄を踏み、口から垂れてきたよだれでべとべとである。

「うわ、なんか臭っ!」

「え?マジで?こいつのよだれ?」

「大丈夫、おじちゃんたまに変な匂いしてたからそんなに気にならな…おぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼ」

 あまりの臭さでコハクがさっき食べていたサンドイッチを戻した。

「嫌ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!コハクちゃぁぁぁぁぁぁぁぁん!!?」

「うぇっぷ……お、おじちゃん、ちょっと近づかないdおぼおぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼぼ」

 この数秒で悲惨な現場が完成しているがこれは雷帝丸のせいではない、ヘラクレスオオイノシシのせいである。

「ほら!汚らわしい男が近くにいるからコハクちゃんがつわりを起こしたじゃない!!まさか妊娠?どうしようどうしようどうしよう!!!」

「絶対違うだろ!!」

 うぇ…ぉえぇぇぇ…とコハクは嘔吐しながら地面に倒れこんだ。そんなコハクを見たシクロは涙を浮かべながらコハクの意識を保たせようとコハクの体を揺さぶりながら叫ぶ。

「コハクちゃんしっかり!コハクちゃぁん!!こはくちゃぁぁぁぁぁぁぁああああああああん!!!!!」

「コハクもヤバいけど俺の心配もしてくれませんかねぇ、無傷だけどさぁ…」

コハクは顔が真っ青になっている。シクロはこの惨状にパニックを起こしている。

「あーもうめちゃくちゃだよ」

 雷帝丸はこの惨状にぽろっと一言だけ無意識に出てきた。



「いやー、助かったー」

 雷帝丸一行は救助された。あの岩肌の上は風の国の首都オキシであった。岩肌の上に作られた勉学の大国の住民が雷帝丸たちを魔術で救助し、今はオキシの病院にいる。幸い誰もけがをすることはなく、雷帝丸は匂いを取るために体を洗った。本日二度目の風呂である。土と汗の次は臭いとよだれを洗い流した雷帝丸は今、コハクが運ばれた病院の待合室で休んでいる。個室の部屋として用意された部屋に嘔吐で脱水症状を起こしていたコハクが点滴を受けていて、それをシクロが見守っている状態である。

「ケガがなくてよかったですね」

 若い男の医者が雷帝丸に言う。

「あぁ、なんで助かったのかよくわかんねぇよ」

「コハクさんは脱水症状ですから点滴を打ってあります。安静にしていれば大丈夫ですよ。何かあればナースコールを鳴らせばナースが来ると伝えてあります。あ、あと妊娠はしていないと思われます。お連れの女性が妊娠しているかもしれないから調べてくれと強く言われましたので、産婦人科の先生を呼んで透視系の能力で診てもらいました」

「あはは…ほんとすみません。うちのパーティーが、特にシクロが迷惑をかけました……」

「さて、治療費なんですが…」

「……。」

 雷帝丸は思い出した。全身から冷や汗が出て顔が青ざめていくのがわかった。風呂から上がったばかりなのに嫌な汗が額から流れる。そして戦場跡と森を駆け回っていた少し前の生活を思い出した。具合が悪い時でも薬草などを煎じたり調合したりして病院には行かないようにしていた。能力で拾ったコインは勇者稼業を続けていく足しにしかならなかった。当時は数週間に一度しか金銭を使う機会がなく、ギリギリながらもなんとか10年間も勇者をやってこれた。しかし、今は手元に金がない。

「……無いんですか?治療費」

「……何とかします」

 救助された雷帝丸一向を襲ったのは資金不足だった。雷帝丸はそれを伝えにコハクが寝ている部屋にいるシクロの元へと向かった。コハクのいる病室に着くと、何やらぴちゃ…ぴちゃ…と何か液体が滴る音が聞こえる。

「ん?点滴が漏れてるのか?」

個室の中には見守るシクロと見守られているコハクの2人がいるはずだ。先ほどの若い男の医者の素振りからナースは個室にいないだろう。それを考えるとシクロが何か手当をしているのだろうか。

(なんだかんだ言って悪い奴ではないのがシクロだ。信頼してこそ仲間だ。うん。正式なパーティメンバーではないコハクを家に届けるだけだからな。意外なのはシクロは年下の面倒見がいいみたいだからな。きっと何かしてあげているんだろう。)

 そう思った雷帝丸は扉をノックして引き戸を開けた。するとシクロは予想通りコハクに何かをしていた。しかし、その様子が何かおかしい。コハクは少し顔を(ひそ)めて眠っていた。コハクの頭のすぐ目の前にシクロの頭があり、シクロの口からなにか糸のような透明な流動体がコハクの顔にめがけて垂れ下がっている。シクロはコハクに馬乗りになり、両手を掴み、宙で腰をカクカクと前後に動かしていた。

「はぁ…はぁ…コハクちょぁん…はぁ…はぁ…水分がっ、足り、ないんだってね、ハァ…はぁ…わ、私の唾液を…飲んで、水分を…摂ってね…少しずつ、少しずつ、落ち着いて飲んでね……」

 幼い女の子に対してえげつないことをしでかしている女性の変態を初めて見た雷帝丸。数十秒は脳がこの状況を理解することができずに固まってしまった。苦しそうにしている幼女のことはお構いなしに変態は頬を紅く染め、唾液を流し込み、ベッドの揺れなど気にせずに腰を激しくピストン運動させている。雷帝丸がようやっと雷帝丸の思考が働き始めた頃には具体的に何をどうすれば良いのか全く分からないので、とりあえず話しかけることにした。

「……なにしてんの?」




制作秘話:なんでシクロさんはこんなキャラになってしまったのか作者にも疑問です……。

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