風の国 ④サンドイッチの具材はなぁに?
今さらながら魔力について
現代での人間が生まれ持っている生命エネルギーのような物です。主に身体の外にオーラのように魔力を放出して使うため、魔力が体内に合っても放出できなければあまり意味がないです。
少数派ですがシクロさんのように魔力が少ない人は魔力を少しだけ使って技術を習得する人もいます。
また、魔力関係にはかなり個人差があるため極々稀に魔力がほとんどない人がいます。いい例が雷帝丸さんです。
「お気を付けて行ってらっしゃい」
「ありがとー、アミーのママ!行ってきまーす!」
雷帝丸一行は結局昼前に宿を出た。これからオキシへと向かう。ここはすでに風の国であるが、まだオキシまでには距離がある。
「しかしいろいろ世話になったな。あの後風呂にも入れたし、旅のお供にサンドイッチまでくれたし」
「アミーちゃんもアミーちゃんのママも美人さんだったわねぇ…」
「歩いていくとオキシには夕方に着くみたいだから今日はコハクのおうちに来てよ!ママに頼んで二人を泊まらせてあげるね」
「ありがたい。助かるよコハク」
「あぁ、あたしのために!あたしのために!おうちに泊まらせてくれるなんて…!なんて優しい子なの!」
「なんで2回言ったし」
3人は村を後にしながら妙な絆が生まれているのを実感していた。コハクは少し戸惑いながらシクロに抱き着かれて猛烈に頭を撫で回されている。幼女の感触を堪能してご満悦な笑みを浮かべるシクロ。抱え込まれて表情が見えないコハク。それを少し引き気味に、かつ助けがいるのかと心配しながら見ている雷帝丸。この3人はこの後、オキシで事件を起こすことなど全く知る由もなかった。
村を出てから2時間ほどだろうか。一度休憩を取ろうと川辺に座り込み、格安宿で貰ったサンドイッチを休憩中に食べていると、雷帝丸はヤツと目が合った。10メートルは優に超す大型の魔獣『ヘラクレスオオイノシシ』だ。ヘラクレスオオイノシシは四足歩行で顔には大きな鼻、額と顎から生える一対の大きな角、角が進化したため小さく退化した牙、そのまま防具として使用できるほどの防御力を誇る強固で剛毛な毛皮と樹液のような色艶が美しい甲殻を持つ。突進攻撃は数分で村を壊滅させるほどの破壊力である。雑食であるため何でも食べるため突進した後の残骸を食べているところも目撃されている。一説には食料を食べやすくするために突進、破壊するのではないかとの見解もある。とにかく凶暴で巨体であることから各国では村や町から勇者への討伐依頼が出るほどの危険性を秘めている。当然それほど危険な魔獣のためパーティ同士での臨時の連合を組んで行うため魔王討伐の練習になるとも一部では言われているが、実際はかなり無茶である。以前雷帝丸が食したツキノカニグマとは比較にならないほど危険な魔獣であるが、雷帝丸が目を合わせてしまったがために3人はその魔獣に追われることになってしまった。
「どーーーーーーーすんだコレぇぇぇぇえええええ!!」
「知らないわよ!!あんたと目が合ったのがいけないんでしょ!?」
「アハハ!あんなにおっきい生き物って久しぶりに見つけたよ!おいかけっこも楽しいね!」
「「楽しくなぁぁぁぁぁぁぁぁい!!」」
「ぶひぃぃぃぃぃぃぃ!!」
コハクは箒に跨り宙を浮きながら追いかけっこを楽しんでいる。魔術が使えない二人は全力疾走でヘラクレスオオイノシシから逃げていた。
「あの毛皮や体格じゃ剣や盾なんて意味ないぞ!?」
「あたしに拳でやれっていうの!?轢かれて死ねばいいのに!」
「何言ってんだ!このパーティーは俺が死んだら解散だぞ!?」
「仕方なく入ったパーティーだもの!なくなったって別にいいわよ!」
雷帝丸とシクロは涙目になって走るがそれぞれ理不尽さに泣き、怒りに泣いているため涙の意味が違う。だがこんな時でもしっかりと言い争いをしている分意外と二人とも余裕があるのかもしれない。そんな言い争いにコハクが割って入る。
「でもでも、おじちゃんがいなくなっちゃうからちょっと寂しいなぁ。でもでもでも、おじちゃん頑丈だし大丈夫だよっ!信じてる♡」
「この子さりげなくひどいこと言ってない!?」
「あ、いいこと思いついた。」
ここでシクロが閃いた。ピンチに陥った時はとんでもない力を発揮するシクロだが、いくつもの危機を掻い潜ってきた過去があるためピンチになると頭の回転も速くなるようだ。
「え?この状況を打開できるのか!?」
「えぇ!とっておきの方法よ!」
「本当か!?ナイスだシクロ!で、その方法は!?」
雷帝丸はシクロに藁をも掴む勢いで聞き出す。だがシクロは雷帝丸にとって不可能な作戦を打ち立ててきた。
「3、2、1、で合図するから空に逃げるのよ。アイツは多分空の相手には何もできない!」
「空だな!よぉし…あれ?空?」
空を飛ぶ。それは雷帝丸にとっては予想外の作戦であった。
「あ、コハクそれできるよ!」
「いいねぇコハクちゃん!よし、いくよ!」
「え?あっちょっ…」
「3!2!」
「ねぇ、まt」
「1!!」
「『フライ!』」
「とりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
コハクは魔術を唱えて、シクロは空気を踏台にするように駆けてそれぞれ空へと逃げて行った。雷帝丸を残して。
「なんでだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
取り残された雷帝丸の悲しき叫び。この男は空を飛ぶ術はないが一応勇者でパーティーのリーダーである。そんな男は残念ながら岩肌で行き止まりになった場所に追い詰められてしまった。
「おい!ウソだろ!?ぶつかる轢かれる潰されるぅぅぅ!」
「ぶひぃぃぃぃぃぃぃ!!」
「マジで助けてぇぇぇぇぇぇぇええ!!」
岩肌まであと数十メートル、彼は完全に追い詰められている。走ることをやめれば轢かれてしまい、走り続ければ岩肌と魔獣にサンドイッチの具材ように潰されてしまう。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
どごぉぉぉぉぉぉん…と岩肌とヘラクレスオオイノシシが正面衝突する轟音が道中を駆け抜ける。勇者雷帝丸、万事急須か。
現段階での魔力の量と魔術習得への伸びしろ
雷帝丸:魔力ほぼ0(2020年代人類と同程度)、魔術そのものを理解できないため習得不可
シクロ:魔力多少あり(作中では平均以下)、魔術は滅多に使わない上に魔力はリュウスイ拳に使用
コハク:魔力???、魔術で何でも解決するが、まだまだ伸び盛り




