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ベテラン勇者のおつかい  作者: Luoi-z-iouR(涙州 硫黄)
風の国
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風の国 ③雷帝丸のぼんやりとした将来

「コハクちゃん、一緒に行かなくていいの?ここからオキシまで時間かかるから今から行かないと大学に間に合わないよ?」

 アミーがコハクに尋ねる。少し早いがアミーはこれから学校に行く時間である。コハクはグルコからもらったであろうパンを片手にぼさぼさの髪のまま外にいる。先ほどまで風呂に入っていたのはアミーだったようだ。

「いいの。おじちゃんとおねえちゃんに家まで送ってもらうことになってるし、学校には急ぎじゃないからお休みする。それに魔術の基本は自分と悪魔との契約だから自分だけしか使えないもん。魔術を使えない2人がいるから仕方ないよ」

「特に飛行系や移動系の魔術はどうしても自分の力じゃないとできないもんね…でもねコハクちゃん。わたし、いつか絶対に複数人に魔術を使えるようにする魔術を完成させて魔術とかが使えない人でも空を飛べるようにしたいんだ!」

「今もその夢を持ってたんだね。なかなか難しいけどコハクはアミーの夢を応援してるよ!」

「ありがとうコハクちゃん…歴代魔術師の中でも天才と名高い魔術師に言われちゃったら、絶対に完成させなきゃね!それじゃ、学校に行ってくるね」

コハクのエールを受けたアミーは今日も学校に向かうという。

「いってらっしゃーい!!…えへへ、アミーだってエンチャント系魔術の天才じゃん」

 コハクもアミーを見送る。その様子を魔法が使えない2人は見ていた。男は地面から顔だけ出しつつ、少女は男の顔を踏みつけながら笑顔で魔法が使える2人を見ていた。

「若いっていいですなぁ……ところでそろそろ出してくれない?もうお風呂誰もいないじゃん」

「出さない。私はお風呂入る。幼女の残り香を堪能してくる」

「ちょっと!?なんでよ!さすがにひどすぎじゃな…今なんかとんでもないことが聞こえたんだけど!?」

「はいはいがんばってねー」

 シクロは雷帝丸の顔から足を退けて風呂へ向かった。雷帝丸は地面に刺さったままである。しばらくして風呂場から湯気が漏れてきたのが見えた。だが全く身動きができない雷帝丸は当然だが自力で地面から抜け出すことができなかった。するとコハクがグルコから朝食をもらったのかパンを咥えながら雷帝丸の元へ来た。

「おじちゃん、なにしてるの?」

「コハク…助けて……」



「おじちゃんってなんで勇者になったの?」

 コハクは魔術で土を掘り、雷帝丸を救助しながら聞いた。上半身が出てきた雷帝丸は助けられながら答える。

「勇者になるヤツには種類があって、俺は勇者にならざるを得なかったんだ。家族に縁を切られたから…生きる道を探すのに必要だった。武器や防具、その他もろもろを集めに戦場跡に行ったりして…気が付いたら勇者になってた」

「ふーん……」

「職業としての勇者は俺みたいなならず者が行き着く場所だが、勇者はじつは魔王と似ている存在でもあるんだ。戦い方はいろいろあるけど、勇者は偉業を達成する前の人たち、魔王は偉業を達成した人たちのことなんだけど、魔王になるとたいていの人は厄介な悪者って意味合いもある。まぁ、勇者は正直誰でも名乗れるせいで悪い勇者もいっぱいいる。それに魔王になった人も勇者時代に辛い事があったり得られた力を制御しきれなかったり……お、そろそろ抜け出せそう」

 脚も地面から出てきている。救助が終わろうとしたとき、コハクは雷帝丸に尋ねた。

「おじちゃんも魔王になるの?」

 勇者は呼び方こそ美しさやたくましさ、正義感を感じるが、実際はそれほど良い物ではない。そんな人物が力を持て余したときどうなるのかは想像できる。それをわかったうえで雷帝丸は答えた。

「俺は勇者サンダーボルト、さっちゃんだ。雷光の如き名前と輝きを持つ勇者が闇落ちなんてしないさ」

 雷帝丸はドヤ顔でうまいこと言ったつもりになり格好つける。いわゆる中二病が多少残ってしまっているこの勇者。だが、コハクは全くお構いなしに続ける。

「じゃあ勇者のまんまでいいの?」

「え、あ、いや…俺は勇者でも魔王でもない新たな存在になる!」

「おぉー!新たな存在!」

 コハクはキラキラと目を輝かせながら雷帝丸の話を聞き続ける。

「今回の魔王討伐だって一応花の国から直々に命令が来てるからやってるんだ。魔王討伐が終わったら報酬で国王の座に着けるから、それから新しい何かになる!今考えられるのは農家がいいな。もともと俺は農家だったし」

「農家な国王様?」

「うーん、それだとただの農業国家になるな。もっと何か違うものに…」

「見つかるといいね。新しい何かが!」

 コハクは手を差し出し、雷帝丸はその手を掴んで掘った穴から出してもらった。




魔術の契約に関しては後日何等かの形で設定を公開したいと思っています。とりあえず現段階では

「魔力がある人が魔力を放つ→魔術を唱える→魔術が発動する」程度の解釈で結構です。

それとは関係なく雷帝丸さんは意外と野心とかは無く、案外旧世界2020年代の若者のように自分の将来はぼんやりとしか考えておらず、国王になる可能性があるのに自覚がありません。果たしてこんな彼が国王になって政治は大丈夫なのでしょうか……。


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